普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
214 四年目の終わり
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「結局、同時優勝扱いになっちゃったね」
「まぁな…」
〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟が終わった翌日、俺とアニーはそんな言葉を交わしながら校長室への道程を歩いていた。
―さて、今夜はこのところでいいじゃろう──あぁ、アニーとロンは残っておくれ―
……と、ダンブルドア校長は言ったものの、昨晩は流石に時間が時間だったので〝明日また来てくれ〟と日時を改められただけだった。当たり前と云えば当たり前のことだ。
そして〝賞金について〟の話に移ろう。
「……500ガリオンなんて一体何に使えと云うのさ…」
「俺はフレッドとジョージが開くらしい店に投資しようかと」
「悪戯グッズの専門店だっけ? 楽しそうだよね。……ボクもそうしようかなぁ…」
「きっとフレッドとジョージも喜ぶだろうさ」
さっき、アニーがこぼしたように、〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟は、〝俺とアニーの同時優勝〟と云う扱いになり、賞金の1000ガリオンも仲良く半分こという事になった。
……ちなみに、お金を渡してきたのはダンブルドア校長で、本来ならファッジが渡す物のはずだったのだがファッジは既にホグワーツから姿を消していた。
恐らくだがクラウチ・ジュニアを尋問したその場に居て、その流れでヴォルデモートの復活を知ったのだろうがそれを信じれなくてダンブルドア校長と袂を別ったのだろう。……俺とアニーに確かめる前に…。
アニーととりとめも無い話をしていると、いつの間にか校長室への扉を守護しているガーゴイルっぽい石像の前に着いていた。
「確か合言葉は…」
「〝ゴキブリゴソゴソ豆板〟」
俺が合言葉を述べると、石像はまるで生きているかのような動作で横に退き、校長室へ道を俺達に譲ってくれる。
そこからは一本道で、螺旋階段を上りきると最早お馴染みとなった校長室の扉があった。
ノックは──するまでもなかった。扉が勝手に開いたのだ。
「よう来たな、お入り」
今、校長室に居るのは杖をしまったところのダンブルドア校長のみで。……云うまでもなく、ドアを開けたのは茶目っ気たっぷりな笑みを見せているダンブルドア校長だった。
ダンブルドア校長の指示に従い入室し、示唆された椅子へアニーと一緒に腰を掛ける。
するとダンブルドア校長は紅茶を二杯、ソーサーに乗せて持ってきてくれた。
「長くなりそうな話じゃ、口が寂しくなると思っての」
「どうも…」
「ありがとうございます」
まずは一口、と紅茶に口を付ける。何故かダンブルドア校長の笑みが深くなったのが気になり、ふとアニーを見る。アニーもこちらを向いていたのでダンブルドア校長が笑っていた理由が判った。きっと紅茶を飲むタイミングから向き合うタイミングまでシンクロしていたのだろう。
……アニーの頬が朱に染まっていく情景を詳しく述べるのは野暮と云うものとして、アニーの顔色が元に戻ったころダンブルドア校長は言いにくそうに話しはじめた。
「君達に来てもらったのは他でもない。儂がモリーやアーサー──それに加えシリウスやセブルスの反対をおしてまで〝≪不死鳥の騎士団≫へと招請した本当の理由〟を教えるためなのじゃ」
「シリウスにセブルス──と云うとスネイプ先生も…?」
「お主らが第三の課題に励んでいる最中にの」
(……ああ、だからか…)
アニーは意外な名前が出てきて驚いているが、俺は逆に昨夜のシリウスとスネイプ先生が何とも云えないスタンスをとっていた事についてある種の納得が出来た。
多分だが、あの二人は話を通しやすい父さんが居た母さんよりも、ずっと骨を折った筈だ。がなるシリウスに淡々と反対意見述べるスネイプ先生──ダンブルドア校長の苦労が鮮明に浮かぶ。
ダンブルドア校長は話が横道に逸れていたのが判ったのか、咳払い一つで話を本筋に戻し、俺とアニーをここに呼んだ理由を語りはじめた。
「……エヘン、シリウスとスネイプ先生の事は取り敢えず置いておこう。……とは云っても、それなりに魔法の秘奥について造詣が有ると自負している儂でも荒唐無稽な話で、どう話を始めて良いか判らぬのじゃ」
「〝荒唐無稽〟ですか…」
「そう、君達二人やミス・グレンジャーが相手でもない限り明かそうとは思えないくらいにはの」
(……だろうな…)
アニーは噛み締める様にダンブルドア校長の言葉を繰り返しているが、俺は出来るだけ納得した顔をしない様にしながら内心で納得していた。
ダンブルドア校長が今から語ろうとしているのはきっと〝予言〟に関することなのはハーマイオニーの名前が出てきた時点で半ば確信している。アニーも「ハーマイオニーも? ……あ…」とな呟きが隣から聞こえてきているので、アニーも気付いたのだろう。
漸くダンブルドア校長も語りはじめを決めたようだ。
「……事のはじまりは15年も前の、ある雨の夜のことじゃ。その日はある有名な予言者の曾々孫がホグワーツで〝占い学〟の教鞭を執りたいと面接に来ていたたのじゃが、儂はどうしてもその者に才気の片鱗をちっとも感じられんかった」
(まぁ、〝あれ〟だからな)
「ははっ…」
「あららー」
ダンブルドア校長のわりと珍しいディスりに俺とアニーは愛想笑いとも苦笑いともとれる笑みを溢してしまうも、ダンブルドア校長はと微笑むだけで特に俺とアニーの態度を咎めるでもなく話を続ける。
「そもそも儂は〝占い学〟と云う学問にほんの少しだけじゃが──懐疑的での? その志望者の才気の無さも相俟って、その者をその場で不採用と言い渡そうとした時、摩訶不思議な事が起こったのじゃ。……君達も見知った出来事じゃよ」
「トレローニー先生の〝あれ〟ですね」
「そしてトレローニー先生のその〝予言〟はボクに関するものだったと…」
「二人とも、その通りじゃ。トレローニー先生は君達二人が去年度に見たような雰囲気になり──こう話し始めたのじゃ」
ダンブルドア校長は俺とアニーの言葉に鷹揚に頷き、更に話を──〝予言〟の内容を明かす…
「〝闇の帝王を打ち破る力を持った者が近付いている…。七つ目の月が死ぬ時、帝王に三度抗った者たちの間に産まれる。……そして闇の帝王はその者を自分に比肩する者として印すであろう。彼の者は闇の帝王の知らぬ力を持ち、闇の帝王を叡知を持つ赤き龍と共に玩弄するであろう。……一方が他方の手に掛かって死なねばならぬ。なんとなれば一方が生きる限り、もう一方は生きられぬ…。……その者、赤き龍の寵を受けし者なり〟」
「〝玩弄〟って、うわぁ…」
滔々と、一気に語ったダンブルドア校長。〝知識〟とは多少の差異はあれど、俺の感想も憐憫の表情を浮かべながらそんな風に溢しているアニーと大体一緒だ。〝お辞儀さん〟については自業自得なところは多々あるが──敢えて云おう、これは酷い。
そしてその〝予言〟を聞いたアニーは〝ある事〟に思い至ったらしく、その推論を補強する為なのだろう──ダンブルドア校長にある事について訊ねる。……まるで〝当たっていて欲しくない〟とでも祈っているかのように…。
「ダンブルドア校長先生、質問良いでしょうか?」
「儂に答えられることならの」
「校長先生はトレローニー先生のその〝予言〟はどこで聞いたのでしょうか?」
「【ホッグズ・ヘッド】と云う店じゃ。……まぁ、トレローニー先生は安さ故にその店を選んだのじゃろうが…」
「【ホッグズ・ヘッド】──確かホグズミードにある店でしたね。割と繁盛していたはず…。……と云う事はその〝予言〟は誰かに盗み聞きされていた可能性も…?」
「大いにあり得ることじゃ。……しかし下手人は全ての〝予言〟を聞く事は能わなかったじゃろうがの」
アニーはダンブルドア校長のその言葉を聞くと、胸を撫で下ろす。そして〝これで最後〟とばかりに…
「……ではボクの両親は、殺されるべき運命にあったのでしょうか?」
「……儂がシビルと面接する場所をきちんと選んでおれば、また違った未来があったのは間違いないじゃろうて」
ダンブルドア校長はそう口惜しげに語る。しかしダンブルドア校長とて年長者。〝たられば〟を追い求めも虚しいだけと云う事を知っているのだろう、それ以上深くは語らなかった。
(……?)
しかし俺は、そこでふと、違和感を懐いた──懐いてしまった。確かダンブルドア校長はアニーの父親であるジェームズ・ポッターから“透明マント”を預かっていたはず…。
(……なら──どうしてダンブルドア校長はポッター夫妻に“透明マント”を返さなかったんだ…?)
とは云っても、例によって記憶が曖昧なので、ダンブルドア校長を糾弾することは出来なさそうし、そもそもジェームズ・ポッターがダンブルドア校長に“透明”を貸した直後にヴォルデモートの手に掛かったのかもしれない。
……だが、それでもダンブルドア校長──〝アルバス・ダンブルドア〟と云う人物との距離感を今一度考えさせるには充分な疑念だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして瞬く間に夏休みの前日──日本風に云えば終業式の日となった。ならびにボーバトンとダームストラング──〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟で競い合った(?)二校とも別れる時が来た。
……それはクラムからの鬱陶しい追及も終了する事も意味しているので、全校集会(?)でダンブルドア校長から〝お辞儀さん〟復活に際して注意を喚起されている最中、俺は一人内心で安堵していたのは内緒だ。
閑話休題。
「ホントに帰ってきたの? 〝あの人〟?」
「その可能性が限りなく高いと云うのが見立てだよ」
帰りの列車のコンパートメントの中、ジニーと一緒に入ってきたジニーの友人である少女──ルーナ・ラブグッドの問いに短く答える。
〝ホグワーツ特急〟がやって来て、いつも4人に──去年のクリスマスのダンス・パーティーからよくネビルと話す様になったジニーとルーナを加えた6人で列車が動きだすを待っていたのだが、ハーマイオニーがとある提案をしてきた。
「……ねぇ、ロンとアニー」
「どうしたの?」
「思ったんだけど、これからの魔法界は物騒になっていくと思うの」
「……その公算は高いだろうな」
ハーマイオニーの懸念は尤もである。ハーマイオニーの話はまだ終わっていなかった。
「それでね、自衛できる力を持っていても決して無駄にならないと思うのよ」
「だろうな」
「だから私考えたの──補習クラブを作ろうって。……それで、ロンとアニーに先生役を手伝ってもらいたいの…」
(むむ…)
一足早く作られそうな≪ダンブルドア軍団≫にメリットとデメリットを計算して〝どう答えたものか〟、と頭を巡らせているとハーマイオニーの提案にルーナ、ジニー、ネビルの3人は飛び付いた。
「あ、それ良いかも。特に将来的に〝闇祓い(オーラー)〟とかになりたい人とかにとっても良いことだもン」
「私も賛成かな。ロンとアニーは〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟で優勝したから人もきっといっぱい集まるわ」
「僕も手伝うよ」
アニーを見ると、アニーは俺に向かってただ一度頷くだけ。判断は俺に任せると云うことか。
「……あい、判った。引き受けよう──とは云っても、≪死喰い人(デス・イーター)≫と魔法省の縁者はお断りだがな。……だから主な対象者はマグル生まれになりそうだな」
「≪死喰い人(デス・イーター)≫はともかくとして魔法省も…?」
首を傾げるジニー。ダンブルドア校長から魔法省と訣別している事を知っているアニーが代弁してくれた。
「うん、魔法省とダンブルドア校長は、今は仲違いしているらしいからね」
「機密の保護と、云うわけね。……判ったわ。私が夏休みを使って詳しい話を詰めておくから」
「まぁ頼むよ、ハーマイオニー」
そう締めくくるハーマイオニーに、念押ししているとコンパートメントのドアがいきなり開いた。ドアを開けたのは、いつもと同じようにクラッブとゴイルを従えたドラコ・マルフォイだった。
マルフォイは開口一番、勝ち誇ったかの様に述べる。
「何度も忠告してやったのに、君達は僕の厚意を無碍に断ったんだ。あの方は遂に舞い戻って来た──お前達はもうおしまいだ」
「そうか、ならば首でも洗って待っておこう」
「じゃあボクは遺書でも認めておこうかな」
「……っ…。……ふん、そのいけ好かない態度がいつまで維持出来るか見物だね──行くぞ、クラッブ、ゴイル」
俺はマルフォイが言いそうな事なら大体判っていたので、コンビニにアイスでも買いに行くかの様な体で返し、アニーもそんな俺の語り口に追従する。
しかしマルフォイはそんな俺達の態度が気に入らなかったらしく、苦虫を噛み潰した様な顔を浮かべると、またもや負け犬の遠吠えよろしく悪態を吐きながらクラッブとゴイルを引き連れて帰っていった。
……その後コンパートメント内に爆笑の渦が巻き起こったのは云うまでもない。
SIDE END
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