普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
213 釈明
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
俺の腕の中で死んだ様に眠ってしまった──眠らせたアニーを救護班といつの間にやら駆けつけていたスネイプ先生に渡してからと云うものの、当たり前の様にダンブルドア校長に校長室へと連行されていた。……ここまでならクラウチ氏の時と似ているが、顔ぶれが違う。
ダンブルドア校長は当たり前として、俺の今世に於ける保護者である母さん父さん。グリフィンドールの寮監としてなのか、マクゴナガル先生がここに顔を揃えていた。
そんなメンバーに、俺は宛ら重犯罪を犯した容疑者の様に囲まれているが、あくまで軽い事情聴取のようなものだし、こう云ってしまえば語弊があるかもしれないが──身内なので某・義母の様な刺す様なプレッシャーを放つものは居ない。
……ダンブルドア校長なら出せない事も無いだろうが、ダンブルドア校長はどちらかと云うと〝茶番側〟なので俺を見て微笑んでいるだけ。〝御辞儀〟が甦ったのを既に知っているだろうにそこまで慌てていないのは余裕の表れか。
(……ぶっちゃけ助け船が欲しいんですケド…)
或いは俺からのSOSが届いたのか、ダンブルドア校長は漸く言葉を発してくれた。
「さてロンや、ここに連れてきたのは云うまでもない。……君に聞きたい事があったからじゃ」
「……俺も話さなければならない事があります──とは云っても今はまだ頭の整理がついてないので、取り敢えずはそちらからの質問に答えるカタチでお願いします」
(……ん?)
そんな風にダンブルドア校長からの助け船に乗りながら今校長室にいるメンバーを観察していると、〝居てもおかしくない人物〟が居ない事に気付く。マッド‐アイとファッジが居ない事に気が付いた。
(〝移動〟させられる前は居たはずなんだが…)
そこまで考えるが、俺とアニーが〝移動〟させられた後にマッド‐アイ──もとい、クラウチ・ジュニアを捕縛したのだと勝手に納得。ここ一年、〝ずっとマッド‐アイの部屋に在った気配〟が今は医務室に存在しているので、俺の予想は外れていないだろう。
(お、この気配は…)
……ついでにクラウチ・ジュニアの気配もマッド‐アイの部屋で捕捉した。更についでに、〝とある人物〟──リーマス・ルーピンの気配も同室で捕捉。恐らくはダンブルドア校長が前以て手配しておいた見張りなのだろう。
タイミングについては、大方〝移動キー〟が作動したらダンブルドア校長に連絡がいくようにしてあったのだと推測。……こちらも強ち間違っていないような気がする。
「そうか…。では質問させてもらおう。……まず、優勝杯は〝移動キー〟だったはずじゃ」
「ええ、確かにそうでした」
「それでじゃ──ロンとアニーはその〝移動キー〟でどこに〝移動〟させられたかは判るかな?」
「詳しいことは定かではありませんが、どこかの村の──墓場の様な場所でした」
ダンブルドア校長からの問いにそう返す。一応〝知識〟はあるが、リドルの父親の墓がある村の名前なんて覚えていなかった。
「本来、あの優勝杯に触れた者はすぐに迷路の入口に〝移動〟させられるはずじゃった。……と云う事は某かがアニーとロンを罠に貶めるための謀りがあったはずじゃ」
そこまでは俺も理解している内容だったのだが、ダンブルドア校長はそこに「……まぁその辺りは改めてロンに語るべき内容でもない話じゃがな」と茶目っ気に付け加える。
それに父さんと母さんが食い付いた。
「ダンブルドア、一体どういう事かしら?」
「……ロン、お前は何を知っているんだ?」
「モリー、アーサー、この子は儂らの思うとる以上に賢い子じゃよ。……さて話を戻そう。ロン、墓場の様な場所に〝移動〟させられたのじゃったな。そこには誰が居たのかの?」
「暗くてよく見えませんでしたが、黒いローブの男でした」
「ローブの男は何を?」
「辛うじてアニーに杖を向けているのが見えたので、咄嗟に間に身体を差し込みました。そこから意識があやふやになったので、今に思えば〝服従の呪い〟だったかもしれません」
「ロンっ!」
「モリー、落ち着いて」
ダンブルドア校長の質問に、できるだけ母さんの方を見ない様にして答えていたのだが、〝服従の呪い〟と口にした時、母さんがついに爆発した。何とか父さんが宥めているが父さんも──否、マクゴナガル先生も心配そうに俺を見ている。
(……あー、胃が痛い)
もちろん、ピーター・ペティグリューから〝服従の呪い〟を受けたのは態とであり、その〝保険〟として去年度、ピーター・ペティグリューに〝服従の呪い〟を掛けてあったのだが、それを開陳するわけにはいかない。……これはきっと〝知識持ち転生者〟ゆえの罪業なのだ。
……だから、母さんからのこの愛の鯖折りは甘んじて受け入れるしかなかった。
久しぶりの良心の呵責と胃痛に苛まれながら話を続け──ようとしたその時。がちゃり、と扉が開かれる。
「……何この裁判」
「………」
「………」
開かれた扉の向こうに居たのは、今、次の瞬間にも互いが互いに噛み付かんばかりに睨みあっているスネイプ先生とシリウスを従えた、当事者の一人であるアニー・ポッターであった。
………。
……。
…。
「そしてまた〝移動キー〟でホグワーツに戻ってきて──後は校長先生も知っての通りかと」
「……以上がボク達が見てきた経緯です」
「………」
「……くそっ、ピーターめ…っ!」
ちょうど良いタイミングにやって来たアニー以下3名に俺が説明した話の概要をダンブルドア校長から説明してもらい、俺が〝服従の呪い〟に掛かっている──演技をしていた時の話をアニーにしてもらい、それからの内容は俺とアニーで交互に語る。
そんなこんなでホグワーツに〝移動〟してくるまで内容を語り終えると、やはりと云うべきか、もはやアニーに目を掛けているのを誤魔化せていないスネイプ先生と、アニーの保護者であるシリウスが判りやすく怒り猛っている様子を見せた。
……母さんもアニーを心配していたが、先にマダム・ポンフリーの所に連れていって治療をしてもらったのが功を奏したのか、俺が〝服従の呪い〟を受けてしまった話をした時にくらべたら幾分かその度合いはマシだった。
そしてダンブルドア校長は神妙な顔で口を開く。
「アニー、ロン長々と話してくれてありがとう──しかしじゃ、肝心な事をまだ訊いておらぬ。……ヴォルデモート卿は今夜、舞い戻って来た、と取ってもいいのじゃろうか?」
「視認はしていません──そもそもヴォルデモート卿の顔を知りませんが、〝移動〟してくる際にボクの名前を憎悪をありありと込めて叫んでいる存在が居たので、甦ったと考えても良いかと」
「ありがとう、アニー。……では儂もその方向で準備を進めたいと思う。……皆のものにも協力してもらおうと思うとるが構わぬか?」
ダンブルドア校長の問い掛けに父さんと母さんを含めた皆が頷く。……そしてダンブルドア校長は一つの爆弾を落とす。
「……そして、アニー・ポッターとロナルド・ウィーズリーを≪不死鳥の騎士団≫に迎えようと思う」
(え、マジで…?)
「認めません」
「む…」
俺の驚きも束の間、真っ先にダンブルドア校長の爆弾発言に反対したのはやはり母さんで、見れば父さんも難しそうな顔をしている。シリウスとスネイプ先生は意外な事に賛成こそしていないが、これといった発言は無い。一応、納得しているのであろう。
……しかし、アニーからしたら〝≪不死鳥の騎士団≫〟なんて言葉は聞き覚えが無かったようで、当然の様にこんな質問が出てくる。
「≪不死鳥の騎士団≫…? ……察するにヴォルデモートと戦うための組織ですか?」
「ヴォルデモートはもちろんそうじゃが、≪死喰い人(デス・イーター)≫や闇の魔法使いも含まれる。……儂が信用を置いている者達で結成した自警団みたいなものじゃよ」
「なるほど…」
納得した様にアニーは頷く。しかし母さんはまだ納得出来ていない様で…
「ダンブルドア、考え直してちょうだい。……二人ともまだ17歳にもなってない子供だわ…」
「この子達は既に〝閉心術〟すら使えるし、先の〝対抗試合〟で示した通り〝騎士団〟に招請出来るだけの能力も十二分に備えておる。……もはや誘わない理由が無いのじゃよ──モリー、判っておくれ…」
「……っ…」
ダンブルドア校長からの懇願に、母さんは唇を噛みながら押し黙る。母さんはダンブルドア校長を翻意させるための突破口を探しているようだが、どうにも芳しくないらしい。
(……やっぱりか…)
そんな中、俺はある種の納得に内心で頭を頷かせていた。ダンブルドア校長からちらり、とだが、ファッジ──ひいては魔法省と袂を別ったと聞いている。それはつまり人手不足を意味している。
……そこで今度は父さんが口を開く。
「私としては二人を〝騎士団〟に迎え入れる事に関しては異義は無い」
「アーサー!」
「しかしダンブルドア、これは約束してくれ。二人がそれを承知してからだ」
「それはもちろんだとも」
母さんは〝騎士団〟へ招請されることに理解を示した父さんに怒鳴るが、父さんはそんな母さんを宥めながらダンブルドア校長から確約を取ってみせた。
そして父さんは俺とアニーに向き直り…
「……二人もよく考えてほしい。君達が踏み入れようとしている場所は、授業なんかじゃない──不意討ち、騙し討ち、〝禁じられた呪文〟等が横行している、甘えが一切通じない世界だ」
「……判ってるよ、父さん」
「……同じく、ボクも」
俺とアニーは、父さんからの忠告に一拍おいてから頷く。
胸を張って言える事ではないが、俺のこれまでの人生は決して平坦と云えるようなモノではなかったし、不意討ちや騙し討ち手をに染めたりしたし──果てには他人の命すら刈り取ったりしたので、人は死ぬ時には簡単に死んでいくのを知っている。……アニーもきっとそうだろう。
父さんはそんな俺とアニーの決意を受け取ったのか、「なら私からは何も言うことはないよ」と、≪不死鳥の騎士団≫への参加を認めてくれた。
そこらで一旦、話が落ち着いたあたりでダンブルドア校長から撤収の案が出る。
「さて、今夜はこのところでいいじゃろう──あぁ、アニーとロンは残っておくれ」
……どうやら、俺とアニーの夜はまだ終わらないようだ。
SIDE END
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