普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
209 第二の課題
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
ハーマイオニーとの蟠りを解いてから数日が経過した。
あの日の翌日、アニーにハーマイオニーの変調を目敏く気付かれ、「〝どうやらお二人で〝性なる夜〟を楽しんできたようですねぇ〟」と、によによ、とした顔で──それも、俺にだけ通じるように日本語で散々っぱら弄られたのは蛇足だろう。
「……はぁ~…」
瓶の中で茄子をむしゃついているコガネムシを見ながらため息一つ。
結局、リータ・スキータの処分は保留となって、今のところはこのまま飼い殺す予定となっている。
リータ・スキータがこのまま世間の表舞台からフェードアウトしても、世間からしたら〝見てはならないもの見てしまったのだろう〟──と勝手に埋没していくと俺は予想している。……その辺は以前から好き勝手やっていた彼女自身の筆腕を恨んでほしい。
……それに〝来年度〟に〝いろいろ〟と役立ちそうだという思惑もあって──鬼に笑われるだろうが、来年度はこのまま俺の思う通りに事が推移すれば〝あれ〟がホグワーツにやってくる公算が高い。
〝行政〟が〝一学校〟に直截的に干渉するなど越権行為も甚だしいが、やってくるものはやってくる。
しかも、〝騎士団〟編を観た所感だが、その授業内容ときたらムーディ先生に扮した≪死喰い人≫──バーテミウス・クラウチ・ジュニアの方が〝何倍も〟マシだと云う事実も笑えないところだ。
(……やっぱり実践あっての実戦で、実践あっての座学だよなぁ…)
知識は頭に詰めるだけでは意味がない。……教本を読ませただけでたった独りで公道に出す様なものとも云える。生兵法は大怪我の元。
(……シリウスが教師として来てくれたら助かるんだが…)
現実逃避気味にそんなことを考えてみるものの、シリウスは釈放されたとは云え、〝13人殺しの凶悪犯〟と云う悪印象は拭えていない。……教師として起用するには、釈放されて1年や2年と云う月日では短すぎる。
保護者からのクレームを考えるならせめて、今のホグワーツのおおよその生徒が入れ替わる期間──5年くらいの歳月が必要だろう。
……ちなみに、シリウスは今、魔法省の〝マグル製品不正使用取締局〟で父さんの直属として働いていて、それなりに楽しくやっている様で、なろうと思えば〝闇祓い(オーラー)〟にもなれたろうが、その辺、父さんとウマが合った模様。
(どうしたものか…)
ファッジとアンブリッジを洗の──もとい〝OHANASHI〟すると云う手段もあるにはあるが、どうにも気が進まない。
「……まぁ、なるようになるか…」
やはりそんな地点で落ち着く。もしくは〝なるようにしかならない〟のだが、あまり思考が纏まらないので、いつもように思考放棄した。
今日も今日とて、悩みは尽きないのだった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE アニー・リリー・ポッター
(あぁ。……ネビルを経由したほうが早かったかな、これは…)
そう気付いたの後の祭りで。
第二の課題まで後1ヶ月を切ろうかと云う頃合いとなった今日、ボクは〝薬草学〟の授業の後にスプラウト先生に、〝とある頼み事〟をしに来ていた。
「……スプラウト先生、単刀直入に申します。お金の方は来年度に必ず返済いたしますので、〝鰓昆布〟の発注をお願いします」
「……〝鰓昆布〟ですか…。……どうしてか、と訊いて良いですか?」
「〝学術的興味〟からです」
勿論の事ながら嘘である。
―バグマンさんは、この〝卵〟自体が〝ヒント〟だと言った。……だが、ただ〝卵〟を開けても煩いだけだよな──なら、どうやって聞けば良いんだろうな?―
第二の課題──それは云ってしまえば〝一時間耐久宝探しダイビング〟だ。……しかしどうにも〝卵〟の謎解きが難しく、ロンから改めて上記のヒントを貰い、〝一時間耐久宝探しダイビング〟に漸く気付けたのだ。
―探しにおいでよ声を頼りに♪ 地上じゃ歌は歌えない♪
探しながらも考えよう♪
我らが捕らえし大切なもの♪
探す時間は一時間♪
取り戻すべし大切なもの♪
一時間のその後はもはや望みはありえない♪
遅すぎたならそのものはもはや二度と戻らない♪―
以上がヒントを文に起こしたもので、パッと思い付く中で音を吸収し、かつ最も普遍的に存在するものは水で──その予想がドンピシャだった。
……ちょっとゴリ押し気味な謎解きだったが解けたことは解けたのだから仕方無い──と自己弁護しておく。
ちなみ手順としては──バスタブが使えないボクは、まず〝凝縮の呪文〟でバケツ一杯ほどの水を作り、その水塊を〝浮遊呪文〟で浮かせ、その中で〝卵〟を開き、片耳だけをつけると云うものだった。……こちらも些か強引なのはご愛敬。
「……どのように興味を抱いたのですか?」
そして今は一時間水中で活動する術として〝鰓昆布〟を入手するためにスプラウト先生と交渉している最中ではあるが、スプラウト先生の顔色はよろしくない。
……〝教師は力添えしてはならない〟と云うルールに抵触しているかどうか微妙なのだろう。
しかしスプラウト先生からのその疑問は想定済みだったので…
「淡水か海水かの効果時間の差異を調査しようと思っています」
「……ふむ、〝学術的興味〟と云うのなら、ミス・ポッターの代わりに発注するのも吝かではありません。……ところで量の方はどれくらい必要になりますか?」
「そうですね…。とりあえず、〝淡水下で使用するとして〟3時間分の量をお願いします」
こうしてボクは第二の課題への準備を終えた。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「……さてさて、どうしたものか…」
基本的に大抵の事が〝ある程度の水準〟でこなせる俺だが、苦手な事もあった。
この場合の〝苦手〟は〝出来ないことは無いが〟──と云う意識的な〝苦手〟と、〝全くもって不可能〟と云う不可逆を〝苦手〟と云う言葉で包んだ言い方の両方を内包している。
例を挙げるとするなら、前者は蜘蛛に頬擦り──後者が水泳だ。
……色々と述べてみたもの早い話、俺はカナヅチなのだ。言い訳させてもらえるのなら俺がカナヅチなのにも理由もあり、その理由は単純明快で俺が“ゴロゴロの実”──〝悪魔の実〟を食べた事に起因している。
その弱点を解消しようと四苦八苦した事もあるが、よくよく考えてみれば割りと簡単に対処方が見付かった。……要は水中に入る前に“エアロ”系列の魔法で身に風を纏わせれば良いだけの話だった。
……尤も、その際は水には触れなくなると同時に水による浮力も無くなるので何らかの飛行手段も併用しなければならなくなるが…。
(……よし、決めた)
以上の点からして〝鰓昆布〟は無意味だと半ば確定したが、それでも一応幾つかのパターンを用意してあり、〝その中では一番どの方法が楽か〟とシミュレートしてみて方策が決まった。
「さあ、細工を始めようか…」
後は野となれ山となれ精神で行動──独自呪文の開発を始める事に。……いつだって僥倖が降るのは人事を尽くした者のみなのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時間と云うものは無情な奴な様らしく、いとも容易く2月24日と云う月日を運んでくる。
2月24日の今日は、〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟に於ける第二の課題の開催日で、ハーマイオニーとネビルはマクゴナガル先生に、既に連れていかれている。
つまり、ネビルがアニーの、ハーマイオニーが俺に対する宝になったのだと考えて良いだろう。
そして、開始のホイッスルがバグマン氏によって鳴らされ、フラーとクラムがほぼ同時に──少し遅れてアニーが湖へ飛び込む。
……そんな中、俺はと云うと…
「“来い(アクシオ)”──っと、“強風よ護れ(プロテゴ・ヴェントゥース・マキシマ)”」
俺はと云うと、マイ箒を〝呼び寄せ〟、その箒に跨がり独自呪文である〝風纏呪文〟で身に強風を纏わせ──湖へと〝翔び〟込んだ。
………。
……。
…。
―その発想はなかった…。……てか、なにそれずっこい―
湖から上がった、開口一番のアニーの感想がそれだった。
湖に〝翔び〟込んだ俺は仙術でハーマイオニーの気配を湖底に降りながら探したので、おおよそ最短ルートで人質の4人が捕まっている場所に向かう事が出来た。
その結果、42分と云う劇的なタイムでハーマイオニーの救出に成功する。時間の配分としては発見までに約30分、解放に約5分、湖外までのハーマイオニーの護衛で残りといった感じか。
愚痴をこぼすアニーだが、俺が〝気配察知〟が出来る事を知っていたからだと思うが──俺を追うようにしてのでクラムより10分ほど早く到着していたが、脱落してしまったフラーの人質を解放するため3分ほどオーバーしてはしまったものの審査員からその道徳心を買われたのか、第一の課題に続き最高得点を獲得していた。
点数の方は、陸に上がった順に俺が47点、アニーが48点、クラムが40点、フラーが25点。これで順位は一位からアニー、俺、クラム、フラーとなり──合計点は92点、90点、80点、60点となる。
……しかしそれは、俺とアニーの優勝争いの様相を呈していることの証左なのだが──カルカロフの怒り猛る顏を見た誰もがそれを口にしなかった。
長かった〝三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)〟もあと一種目を残すのみ。
SIDE END
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