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ドリトル先生と春の花達

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第十二幕その九

「どうしてもね」
「王子のお国ではだね」
「どうしてもなんだね」
「暑いせいで」
「どうしても」
「そうだよ、ないんだ」
 桜はというのです。
「本当にね」
「じゃあ結婚しても来日して?」
「それで桜を観るの」
「奥さんと一緒に」
「そのつもりだよ」
 まさにという返事でした。
「絶対にね」
「僕達は多分ずっといるけれどね」
「日本に住むわ」
「先生もお仕事こっちだし」
「完全に根付いた感じだし」
「だからね」
「私達は春は絶対に桜を観られるけれど」
 それでもというのです。
「王子はね」
「今は留学してるけれど」
「何時かはお国に帰って」
「それで、よね」
「そう、結婚するだけじゃなくてね」 
 そのことに加えてというのです。
「王様にならないといけないから」
「お国に戻って」
「それでよね」
「そうしないといけないから」
「だから」
「日本を去ることになるよ」
 まさにというのです、王子はお酒が入ったコップを手にしてそのうえで少し寂しいお顔で言うのでした。
「何時かはね」
「桜ともね」
「その時が来たら」
「お別れね」
「そして僕達とも」
「先生ともだけれど」
 日本に住んでいる先生とも、です。
「桜ともね」
「そこが寂しいんだね」
「どうしても」
「そうなるんだね」
「絶対にね、何かね」 
 少し寂しいお顔のまま言う先生でした。
「桜の散る時を思い出したよ」
「帰る時を思うと」
「どうしても」
「そう思ったんだね」
「何かね、けれどね」
 こうも言った王子でした。
「桜が散る時はもの悲しいけれど」
「それでもだね」
「そのお別れの時は」
「王子は」
「うん、笑顔でね」
 ここで実際に笑顔になった王子でした。
「お別れしたいよ、それにね」
「それに?」
「それにっていうと」
「永遠のお別れじゃないね」
 お別れであってもというのです。
「そうだね」
「あっ、確かにね」
「お別れであってもね」
「永遠じゃないね」
「それはその通りね」
「また会えるよ」
 このことは確かだというのです。
「だからね」
「笑顔でお別れして」
「そしてだね」
「別れて」
「そうして」
「そう、またね」
 お別れをしてもというのです。 
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