作った予言
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第二章
「ノストラダムスが適当に書いたのかも知れないね」
「その詩を見て?」
「黒髭とかヒトラーとか言って」
「言い出すのね」
「そうよ、そんなことを言えば」
それこそとだ、早百合は娘に言った。
「ユリちゃんだってね」
「私でもなのね」
「予言出来るわよ」
「そうなの」
「何でも言えるから」
またこうしたことをだ、早百合は娘に言った。
「地震でも何でもね」
「地震なんて日本にいたら幾らでも起こるわよ」
「その幾らでも起こることをよ」
まさにというのだ。
「言えるのよ」
「それで今書けばなのね」
「外れてるのよ」
母の今の言葉は実にクールだった。
「もう一から千までね」
「全部?」
「そう、全部よ」
「人類滅亡とかも」
「だから今も私達がここにいるのよ」
一九九九年はとうの昔に過ぎているがだ。
「予言が外れたからよ」
「そういうことね」
「とにかくね、予言はこじつけよ」
「後でわかるものね」
「少なくともノストラダムスとかエドガー=ケイシーとかジーン=ディクソンとか出したりやたら陰謀論出す人はね」
まさにというのだ。
「おかしな人で」
「絶対に後で言うのね」
「先に言ったことは百パーセント外れているから」
まさに確実にというのだ。
「特に箸が落ちても人類滅亡とか言う漫画は」
「真に受けたらいけないの」
「だって一九九九年にね」
もっと言えばその七月にだ。
「戦争が起こって大地震があって怪しげな組織が動いて宇宙人が攻めて来るとか言ってたのよ」
「色々起こってるじゃない」
「その漫画の言ってたことを全部足したらね」
実際にそうなっていたというのだ。
「一つ一つの話を組み合わせたら」
「そんな壮絶なことになってたの」
「そう、そんなのないでしょ」
「絶対にね」
由利香も言い切った、それも呆れた顔で。
「有り得ないわね」
「そんな漫画だから」
「信じたら駄目ね」
「そうよ、とはいっても予言は色々で」
「そんな人類滅亡とか言う予言は」
「試しに何年か後で読んでみることよ」
出版から時間を置いてというのだ。
「そうしたらわかるから」
「今の私みたいに」
「そう、そして由利香ちゃんでもね」
「作ろうと思えばなのね」
「作られるから」
「予言ってそんな代物なのね」
「そういうことよ」
こう娘に教えたのだった、家でくつろいで予言の本を読んでいた彼女に。この時はこれで終わったが。
由利香はこの時から予言に興味を持った、それで通っている高校でも笑ってこんなことを言い出した。
「去年のカープの優勝は予言されていたみたいよ」
「えっ、そうなの?」
「あの優勝予言されてたの」
「そうだったの?」
「そう、ノストラダムスが言ってたのよ」
笑って彼の名前を出してみせた。
「恐怖の大王が降りたつってね」
「それがなの」
「カープの優勝なの」
「何しろマルスがどうとか言ってるじゃない」
この一節を出した。
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