不良に串カツ
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第二章
「この人北串勝だぞ」
「大阪二十六戦士の一人にか?」
「何でこの学校に来たんだよ」
「この碌でもない学校に」
「決まってるだろ、御前等を救い出しに来たんだよ」
串勝は彼等に笑って応えた、そして校内を歩いていって前にいた不良達全員に串カツを投げて食わせた。
そうしてだ、その美味さに驚く彼等に言った。
「どうしたらこんな美味い串カツを揚げられるか知りたいか」
「はい、滅茶苦茶美味しいです」
「こんな美味い串カツどうしたら揚げられるんですか?」
「やっぱり大阪二十六戦士になるとですか」
「揚げられるんですか」
「それは俺を見てわかれ」
串勝はグラウンドに集まっていた彼等に笑って話した。
「いいな、それからだ」
「わかりました、それじゃあです」
「これからお願いします」
「見させて下さい」
「北さんを」
「ああ、よく見てくれよ」
自分をだ、北は彼等に笑って言った。そのうえで彼を見せるのだが。
それは彼の普段だった、朝から夜まで串カツを焼いている彼の姿だ。
時には二十六戦士として戦い大阪の街と人々を護る、弱きを助け悪を許さない。子供や老人には親切で侠気に満ちている。
その彼を見てだ、不良達は思った。
「いいよな、北さん」
「恰好いいな」
「ああいうのが本当の恰好よさか」
「ヒーローなんだな」
「俺もああしたヒーローになりたいな」
「私もよ」
彼等は串勝を見てこう思うのだった、そして。
次第にだ、その思いが行いに出ていった。
「もう落書きなんかするか」
「窓も壊さないぞ」
「授業には真面目に出るんだ」
「煙草は二度と吸わないぞ」
「酒だって飲むか」
「変な本も読まないぞ」
「喧嘩は何があってもするものか」
串勝がしている様にしよう、こう思ってだ。
彼等は行いをあらためた、こうしてだった。
学校は健全な学校になった、そして大阪でも屈指の真面目で健全な学校になったのだった。それを見てだった。
客は店で串勝にこう言った。
「あの学校今じゃな」
「ああ、聞いてるぜ」
串カツを揚げつつだ、串勝は客に応えた。
「真面目になったんだな」
「それも凄くな」
「いいことだな」
串勝もこのことを喜んだ。
「本当に」
「ああ、しかしな」
「しかし、どうしたんだよ」
「あの学校あんたを見ただけでだろ」
客はビールを飲みつつ串カツに尋ねた。
「それでだろ」
「行いがあらたまったっていうんだな」
「それだけなのにか」
「俺の揚げた串カツを食わせてな」
「それでだよな、何かな」
こうも言った客だった。
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