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サイボ-グとなり

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第三章

 だがその秀吉と一緒に串カツを食べて飲んでいるおっさん達がふと彼に聞いた。
「太閤さん今奥さんいるんだって?」
「大阪城の近くに住んでいるって聞いたけど」
「奥さん誰なんだい?」
「ひょっとしてねねさんかい?」
「決まっておろう、ねねじゃ」
 その通りだとだ、秀吉は焼酎を美味そうに飲みつつおっさん達に答えた。
「そして捨丸と拾も一緒じゃ」
「そうか、やっぱりな」
「太閤さんの奥さんはねねさんだよな」
「ねねさん以外にいないよな」
「やっぱりそうだよな」
「大阪の神様達が三人も一緒に蘇らせてくれたのじゃ」
 秀吉一人では寂しいと思ってだ、神の配慮である。
「そうしてくれたのでな」
「今はだね」
「ねねさんと一緒に住んでるんだね」
「それもお子さん達と一緒に」
「家族四人で」
「そうじゃ、家でのわしはじゃ」
 今度は串カツを食べる、二度漬けはしない。
「これでもマイホームパパじゃぞ」
「おっ、天下人でヒーローでもかい」
「家じゃマイホームパパかい」
「それはいいな」
「そのギャップがいいな」
「家じゃいいお父さんか」
「うむ、ねねとは今もアツアツじゃ」
 こうも言う秀吉だった。
「そして捨丸と拾が可愛くて仕方ないわ、ただな」
「ただ?」
「ただって何だい?」
「どうしたんだい?」
「どっちもねねの子ではないのじゃ」
 このことも言う秀吉だった。
「これはお主等も知っておろう」
「確か淀殿だったよな」
「あの人が母親だったな」
「秀吉さん愛人いて」
「それでだったね」
「今で言うそれじゃ」
 側室をおっさん達にわかりやすく話した秀吉だった。
「わしには多くの愛人もおってのう」
「それどうなの?」
「俺他の女ちょっと見ただけでかみさんに言われるぜ」
「俺もだよ」
「俺浮気ばれて離婚されかけたことあるぞ」
「昔はよかったであろう」
 立場のある者が側室を持ってもと言う秀吉だった。
「だからわしもよかったであろう」
「まあ昔はな」
「そうだったな」
「昔は本当にそうだったな」
「実際にな」
「それでわしも茶々との間にじゃ」
 淀殿を本名で呼んで話す秀吉だった、焼酎が実に美味いと感じつつ。
「捨丸と拾をもうけたのじゃ」
「それで今も一緒に住んでるんだな」
「大阪城の近くに」
「ねねさんと一緒に」
「淀殿は蘇っていなくても」
「そうじゃ、わしは大阪とお主達の為に戦うが」
 大阪を護る二十六戦士の一人としてだ。
「戦いが終わって家に帰るとな」
「もうマイホームパパか」
「それが今の太閤さんなんだな」
「そういうことじゃ、サイボーグでじゃ」
 それと共にというのだ。
「マイホームパパであるのじゃ」
「忙しいね、太閤さんも」
「折角生き返ってきたのにな」
 おっさん達は秀吉の話を聞いて共に飲み食いする彼に笑って話した。
「大阪と俺達の為に戦ってくれてな」
「サイボーグになって」
「しかも家じゃお父さんでな」
「ははは、仕事と家庭は両立せんとのう」
 その両方をとだ、秀吉はそのおっさん達に笑って話した。
「だからじゃ」
「こうしたこともかい」
「いいんだな」
「いいというかそれが楽しそうだな」
「そういえばそうだな」
「実際楽しいぞ、今日もこれからマイホームに帰って家族サービスじゃ」
 あえて今の言葉を剽軽に使って言う秀吉だった。
「ねねと子供達と仲良くじゃ」
「じゃあ俺達もそうするか」
「家に帰ったらな」
「家族サービスするか」
「そうせよ、暖かい家があってこそわしも戦えるのだからのう」
 天下人であった時の様にとだ、秀吉はおっさん達に焼酎と串カツを楽しみつつ話した。そうして家に帰ると酔っていることをねねにちょっと言われてから家族サービスに励んだ。天下人ではなく大阪と大阪市民を護る戦士からお父さんの顔になって。


サイボーグとなり   完


                    2017・12・22 
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