真剣で納豆な松永兄妹
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第一章 燕ちゃんじゃなくて俺かよ
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まさか、燕ちゃんが以前倒した相手が先生だとは、世の中は狭いな。
どうも対戦の後に彼等が自ら教員になるのを望んだようだった。
強い武士娘やら川神百代を色々と研究してデータを取るつもりらしい。
ゲイツ先生は頭は良いがどこか抜けている様だ。
「さて、今日はいきなり転入生を紹介するよ」
教室の中から声が聞こえる。
川神学園3-F組。朝のHPの時間だ。
川神百代がこの組にいるのが分かる。抑えていても気の大きさが分かる。
「――クローンじゃないね。普通の人だよ」
武士道プランの転入生が先日あったからなあ。
「どーせ転入生はムサイ男とかそういうオチだ。ソースは私の勘」
誰だ。転入生は可愛い燕ちゃんだぞ。ついでに俺もいるけどな。
「それじゃ転入生君達、軽やかにどうぞ!」
「達? 複数人なので候?」
何か、昔の言葉が聞こえたで候。
候って、漢字が変わるとイヤラシい意味になるなー。
「まさかの超美少女、きっ、キタァー」
「双子で候? 制服でしか見分けがつかないで候」
馬鹿な叫びの正体は川神百代だった。
俺も燕ちゃんも気を隠しているが、たぶん相当接近するか握手でもしたらバレるだろうな。
「はじめましてー」
ユニゾン、ハーモニー、重音。
俺と燕ちゃんの挨拶の声が重なる。
「うわー、双子らしいで候」
「可憐だ……。やったぞ皆の衆、ついに我等3-Fは美少女を手に入れた。あと、美少年も。あえて言おう! 双子って素晴らしい!」
「同じ顔が2つ。だが、性別は別! 顔を見るだけなら何の問題もない! 美少女顔が2つだー!」
「おいおい。美少女は私やユミがいるだろ」
「ひっ。川神さんは美少女よりも恐怖が勝る……!」
クラスメイトは変態が多いみたいだ。
「失礼な。まぁ、そんな事より、目の前にいる美少女だ」
川神百代がわざわざ席を立ち上がり燕ちゃんの目の前に立ちはだかる。
「私は川神百代。よろしくな。友達からはじめよう。友達から先も大歓迎だ」
「武神、川神百代。西でもその名前は良く聞いている」
「ん?」
川神百代は俺の顔を見た。
何か俺に向けて発言しようとしたのだが、
「私は燕。松永燕。よろしくね。百代ちゃん」
「俺は燕ちゃんの双子の兄で松永久秀だ」
燕ちゃんが手を差し出す。
出来れば燕ちゃんと川神百代を戦わせたいのだ。
2人はガッチリ握手する。
その瞬間、川神百代の顔から笑顔が消えた。
まあ、感じ取るだろう。
そして、手を放し、今度は俺に手を向けた。
「妹共々よろしく」
「――松永、と言ったか……あの松永か」
「おう。燕ちゃんは武士娘として決闘とかしてるな。俺はたまーに決闘するよ」
「たまに、ねぇ」
握手していた手を素直に放してくれた。
「聞いたことがあるで候。西に武具を器用に使いこなす兵《ツワモノ》がいると。それが確か、松永」
「ゲイル兄さんは彼女に倒されたんだ。そして、太陽の子メッシは彼に倒された」
「それがどうして川神へ?」
川神百代が問うてきた。
「おとんの仕事の都合。川神学園を選んだのは賑やかで面白だから。源義経とかいるしな」
「なるほど、分かりやすいな。では、川神の流儀でお前を歓迎してやろう。決闘だ」
「俺? 燕ちゃんじゃなくて?」
「ああ、そうだ。貴様だ。私には分かるぞ。松永久秀」
俺には分からん事が彼女には分かるようだ。
「あー、記録に残るような試合は勝手に承知できないんだ。家がうるさくてね」
「家がうるさい系なのか……」
「西は家名を大事にすると聞くで候」
「ホッ」
クラスメイトの多くは安堵していた。しかし、打ち合わせ通り稽古として受ける。
打ち合わせでは燕ちゃんに川神百代が挑むと予想したのだが、外れた。よって今回の相手は俺だ。
「まあ、あくまで稽古って事なら受けても良い。やろうか」
「えええっ! 可愛い顔して大胆!」
「――ははは! そうだな。これは歓迎稽古だ!」
「生半可な覚悟で戦える相手じゃないで候」
「私の兄ちゃんを心配してくれてありがとー。でも大丈夫だよー。あくまで稽古だもんね。百代ちゃん」
「うんうん、さぁグラウンドへ行こう!」
川神百代のうれしそうな顔。
なんだろう。笑っている顔は可愛いと思った。
●
3-Fの皆がゾロゾロと校庭についてきた。
校庭にいた教員にゲイツ先生がレクリエーションだと説明する。
「レクリエーションね。ではワタシが立ち会おう」
この人、結構強いな。久秀はルーの強さを感じ取っていた。
ルーも燕と久秀を一目見て、相当強いと見切っていた。
どちらが戦ってもあくまで稽古なら大丈夫だとルーは思った。
そして、稽古の域を超えそうになった場合自分が立ち会えば何とかなると彼はそう判断した。
「武器のレプリカをありったけ集めてきたで候」
メガネの候が語尾につく子、矢場弓子だと軽く紹介された娘だ。
矢場さんには悪いが、俺は武器を使えるが、燕ちゃん程上手く使えるわけじゃない。
「久秀、好きな武器を選んでくれ。私は拳だ」
「矢場さんには悪いが俺は武器も使えるけど、せっかくだから俺もこれで行こうと思う」
「川神さん相手に素手で候!?」
矢場さんに、己の拳を見せた。
「おっ! そっちも素手か! よーし早速はじめよう!」
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松永久秀。
松永燕。
武神の好みはどちらか
配点:(強い方)
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