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ドリトル先生と春の花達

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第十一幕その四

「日笠さんならだよ」
「日笠さんならね」
「そうだよ」
「王子って日笠さんとはお知り合いだね」
「うん、お友達になってるよ」
「そうだね、ただね」
 お友達なのはわかってもというのです。
「王子随分と日笠さんのことをわかってるんだね」
「いや、あまり知らないよ」
「そうなのかな」
「人は他の人のことを知ってるか」
 幾らお友達でもというのです。
「中々知りにくいよね」
「うん、誰よりも一番その人を知ってると言う人はね」
 先生はこれまでの生活で得た知識からもお話しました。
「実はね」
「全然知らなかったりするよね」
「そういうものだから」
「というかそんなこと言う人はね」
 ある人のことを一番よく知っている人こそとです、王子も言います。
「人のことをわかってない人だね」
「そうした人がいるね」
「僕が見てきた限りだとそうした人ばかりだよ」 
 王子の場合はそうだというのです。
「人のことが何もわかっていないからね」
「そう言うっていうんだね」
「逆にね」
「そうなんだね、王子から見れば」
「うん、だから僕そうした人はね」
「あてにしないんだ」
「そうすることにしているよ、人間程わかりにくいことはないし」
 それにというのです。
「謎が多いものはないから」
「よく知ることも難しい」
「そういうものだからね」
「若くてもよくわかってるね」
「そうかな」
「わかりにくい、知りにくいものを自覚することもね」
 まさにそれこそがというのです。
「知るということだからね」
「だからわかってるって言ったんだ」
「僕もね」
 そうだったというのです。
「そうだったんだ」
「成程ね、まあとにかく僕も日笠さんのことはね」
「よく知らないんだね」
「そうだよ、けれど知っていることもあって」
「その知っていることは」
「日笠さんがお花見に参加してお弁当を作って持って来ることはね」
 まさにこのことがというのです。
「僕もわかってたよ」
「そうなんだ」
「うん、よくわかってたよ」
 また言った王子でした。
「読んでいたともいうべきかな」
「そうだったんだ、けれどね」
「けれど?」
「先生は人を知ることも出来る人だけれど」
 ここでは苦笑いになる王子でした。
「あることについては全然だからね」
「そうそう、本当にね」
「先生はそうしたことは駄目で」
「私達も困ってるし」
「やきもきばかりして」
「和歌にも詠わないわね」
「そうした気持ちは」
「何かわからないけれど」
 それでもと返した先生でした。
「とにかく和歌会には出るからね」
「うん、じゃあね」
「桜と想いを詠ってね」
「そっちをね」
「是非ね」
「そうするよ」
 そして実際にでした、先生は動物の皆を連れてそのうえで和歌会に参加しました。そうしてでした。
 ある桜の下に敷きものを敷いてです、札に筆で和歌を書いていきました。一首一首とです。 
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