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真田十勇士

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巻ノ百十六 明かされる陰謀その九

「一番よくわかっておる」
「それでは」
「うむ、おそらくじゃが」
「戦がはじまるまでに」
「この世を去る、もう暫くしたらな」
 そこまでだ、昌幸の身体は悪くなっているというのだ。
「そうなる、だからな」
「それで、ですか」
「もう少ししたらじゃ」
 それこそというのだ。
「世を去る、やはりな」
「戦にはか」
「間に合わぬ様じゃ」 
 無念そうにだ、昌幸は話した。
「これはな」
「では」
「お主と家臣の者達だけで何とか出来るか」
「してみせまする」
 確かな顔でだ、幸村は父に答えた。
「必ず」
「そう言ってくれるか」
「はい、ですから」
「わしが世を去ってもか」
「真田の力、天下に知らしめます。そして」
「豊臣家を勝たせますか」
「そうしてみせましょうぞ」
 幸村はこのことも約束した、だが。
 昌幸はその言葉を聞いてだ、一旦目を伏せてだった。それからまた顔を上げてそのうえで彼に言った。
「いや、お主だけだとな」
「茶々様がですか」
「聞かれぬな」
 そうだというのだ。
「お主の話は」
「やはりそうですか」
「わしの名は天下に鳴り響いておるが」
「それがしは」
「知られていてもじゃ」 
 智勇兼備の者としてだ、それでもというのだ。
「茶々様までご存知か」
「そこまではですな」
「至っておらぬ」
 だからだというのだ。
「聞かれぬわ」
「そうなりますか」
「だから勝てぬ」
 茶々を止められぬからだというのだ。
「お主だけではな」
「では」
「右大臣様をお救いせよ」
 勝てぬのならというのだ。
「お主が約束したことじゃな」
「関白様と」
「ならばじゃ」
「そちらをですか」
「考えよ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「勝てませぬか」
「あの方が大坂の主じゃとな」
「戦になり」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ、
「大坂は敗れる」
「そうなりますな」
「ならばじゃ」
「拙者のすることは」
「敗れた時のことはもう用意しておる」
 肥後、そして薩摩に行ってというのだ。
「ならばな」
「敗れるまで死力を尽くし」
「大坂の城が危うくなった時にじゃ」
 まさにというのだ。
「右大臣様をお救いしてじゃ」
「そのうえで」
「逃げよ」
「肥後、そして薩摩まで」
「そうして右大臣様の御身を安泰にせよ」
「わかり申した」
「お主と十勇士達ならばな」
 彼等ならというのだ。
「必ず出来る」
「右大臣様をお助けすることが」
「そして大助もな」
 昌幸は彼から見て孫になり幸村の子である彼のことも話した。 
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