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コスモス

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第二章

「だから今は元気がないんだよ」
「何ならパンやろうか?」
 クラスメイトの一人がこう彼に言ってきた。
「昨日学校に持って来てそれで忘れてたのだけれどな」
「それ大丈夫かよ」
「賞味期限は今日までだけれどな」
 ぎりぎりなので、という意味があるのは明らかだった。
「どうだよ。百円のクリームパン半額でな」
「五十円か」
「それ位はあるだろ」
「まあな」
 聡は言いながら実際に制服、青いブレザーの懐から財布を出してきた。そしてそこから五十円玉を出してこう言った。
「牛乳とかあるか?」
「それはないから自動販売機にでも行って自分で買うんだな」
「わかったさ。じゃあパンだけな」
 それでいいと言ってそれでだった。
 彼はその五十円でパンを買ってそれで早速腹の中に入れた。それで落ち着いてからこう自分の周りのクラスメイト達に言った。
 見れば茶色の縮れた感じの髪をセンターに分けている。顔は細く頬がすっきりとしている。穏やかな目に赤い縁の眼鏡をかけている。
 その彼がこう彼等に言ったのである。
「それで転校生だよな」
「やっと話い乗ってきたな」
「そのことだけれどな」
「まあ。女の子だったらいいな」
 彼もこうした考えだった。
「実際のところな」
「問題はどんな娘だけれどな」
「女の子の場合でもな」
「性格がよかったらいいな」
 彼はこう言う。
「本当にな」
「性格か」
「そっちか」
「幾ら可愛くてもあれだろ」
 聡は意外といった顔になった周りにさらにこうも言った。
「性格が悪いとどうしようもないだろ」
「性格ブスか」
「それは駄目か」
「ああ、性格だよ性格」
 聡はさらに言う。
「それがよくないとな。僕はな」
「顔よりも性格か」
「そっちかよ」
「ルックスの守備範囲広いからな」 
 その広さには自信があった。女の子の顔への許容範囲はかなりのものだ。
 それで問題は性格だった。それが聡の考えなのだ。
「だからな」
「性格なあ」
「まあ性格ブスって確かに最悪だしな」
「御前の言うことも確かだな」
「本当に性格か」
「ああ、そうだよ」
 彼は言う。そうしてだった。
 彼はその転校生が来るのを待っていた。ホームルームの時間になりそれで来たのは楚々とした黒い髪を肩のところで揃えた女の子だった。
 顔立ちは目が大きく黒目がちである。唇はピンクで少し横に大きい。鼻はやや高く頬は細めだ。
 その少女が教壇にいる先生の横でこう名乗った。
「石神正代です」
「へえ、奇麗だな」
「結構いいよな」
「美人さんだよな」
「楚々とした感じね」
 クラスはその転校生正代を見て男組が中心になって言う。
「あの娘がうちのクラスに来てくれるんだな」
「そうなるのね」
「ああ、席はな」
 ここで先生がクラスの中を見回して言う。丁度いい具合に。
「おい後藤」
「僕ですか」
「運がいいな。御前の席の左空いてるな」
 本当にいいタイミングでそこに席があった。 
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