カオスになる心
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第十章
「喜んでお受けさせて下さい」
「そうしてくれるんだね」
「そして私からの言葉は」
「有り難う」
ジュゼッペも微笑んで返す。
「僕の全部を受け入れてくれて」
「そうさせてもらっています」
「じゃあこれからもずっとね」
「はい、お互いに全部を受け入れ合って」
「そうしていきましょう」
二人でこう言うのだった。この後暫くして二人は結婚しニュースにもなった。
ジュゼッペは結婚してからも芸人として活動し俳優としても活躍した。その彼に友人は笑顔でこう言うのだった。
二人で昼食を食べている。簡単にトマトと茄子のスパゲティにサラダ、それとパンといったメニューだがワインもありボリュームはかなりだ。
そのメニューを楽しみながらこうジュゼッペに言うのである。
「人間はやっぱりね」
「性格だけとかは言えないんだね」
「そう、そのお金や仕事もどうしてもね」
「見られるんだね」
「奇麗ごとばかりじゃいかないからね」
よくも悪くも現実を見ている言葉だった。
「だからだよ」
「そうなんだ」
「愛さえあればって訳にはいかないからね」
「だから僕は彼女の富も求めたんだね」
「それで彼女は彼女で君の仕事をね」
芸人というその仕事をだというのだ。
「見たんだよ」
「そうなるんだね」
「そうさ。そういうことでいいよね」
「うん、僕もそうだし」
チェリーチアも彼の仕事を見て決めた、彼の人柄だけでなく。
つまり本当に二人一緒だ。それならだったのだ。
「それじゃあね」
「じゃあこれからは」
「その二人で幸せになるよ」
ジュゼッペは微笑んで彼に答えた。
「そうするよ」
「お互いのことを全て知って」
それこそ財産や仕事もだ。
「体裁とか奇麗ごとも取っ払ってね」
「それでやっていくのが人間っていうんだね」
ジュゼッペはそれがわかった。人はその人柄だけでなくその他のことも見られてそれで決められるということを、よくも悪くもそれが人間でありそこから幸せになっていくということがわかったのだった。そして彼もまた幸せになろうと今決意したのである。チェチーリアと共に。
カオスになる心 完
2012・10・3
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