FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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妖精の尻尾
妖精の尻尾復活編
蛇姫の鱗感謝祭
「みんな、待たせたな」
「誰に話してるの?レオン」
何かを指差しているレオンにそう言う私は蛇姫の鱗に所属する魔導士シェリア。彼は決め顔からいつもの顔に戻ると、こちらをゆっくりと振り向いた。
「シェリア、俺は思うんだよ。読者への挨拶は大切だって」
「バカなこと言ってないでこっち手伝ってよ」
今日のあたしはいつもの服とは違う衣装に身を包んでいる。その理由は、今日行われるイベントなんだけど・・・
「イヤだ!!絶対ヤダ!!」
「大丈夫だよシリル!!すごい似合ってるよ!!」
「だから余計イヤなんだよ!!」
扉の向こう側からこちらにやって来る白いミニスカの衣装に身を包んでいるウェンディと、向こうの部屋から何かに掴まっているらしく手だけを出しているシリルが引っ張り合いをしている。
「なんだ?まだ揉めてるのか?」
「あ、リオン」
そんなところに今日のイベントのトップバッターを務めるリオンがやってくる。そんな彼は2人の少女・・・じゃなかった、2人のチビッ子のやり取りを見て彼はため息をついた。
「シリル、いい加減に観念したらどうだ?」
「イヤです!!これは絶対にイヤなんです!!」
なおも駄々を捏ねているシリル。だけどもう時間がない。レオンがウェンディに変わり少年の手を引っ張ると、意図も簡単にこちら側に転がってきた。
「うわっ!!」
水色のミニスカ衣装に身を包んだ、サイドアップの髪型になっている水竜の姿だった。
「大丈夫大丈夫、可愛い可愛い」
「違う!!ほしいのはそんなコメントじゃない!!」
女の子女の子している友人の姿を見て冷静に頭を撫でている幼馴染。その姿に嫉妬しそうだけど、子供扱いって感じがしてすぐにそんな感情も消えてなくなる。
「シリル、お前の出番は最後だからそれまでに気持ちを作っておけよ。行くぞレオン」
「了解」
最初の出番であるリオンとレオンが準備に向かう。すでに司会のユウカの姿はなく、外からのたくさんの人たちの声が聞こえてくる。
「ねぇ、シェリア」
「何?ウェンディ」
「これって一体何なの?」
まだ決心が付かずその場にうずくまっているシリルを引っ張りながら問いかけるウェンディ。
「あれ?言ってなかったっけ?毎年やってるんだよ、蛇姫の鱗感謝祭」
うちに仕事を出してくれる依頼主に対しての感謝を伝えるために毎年行われている感謝祭。去年はウェンディたちが来る前に終わっちゃったから、2人はこの存在を知らなかったんだよね。
「妖精の尻尾にそんなのなかったよ?」
「ウェンディたちが入る前まではあったんだよ。ただ、そこから主要メンバーが抜けちゃったからね」
主要メンバーが消息不明になった妖精の尻尾はそれどころじゃなくなってずっと感謝祭は行われていなかった。だからウェンディたちはまだ各ギルドにあるそういうイベントのことを知らずにいたんだろうな。
「オオーン!!シェリア!!もうすぐ始まるからこっち来ておけよ!!」
「うん!!わかった!!」
なかなかやって来ないあたしたちに怒ったトビーが呼びに来た。それを聞いていまだに駄々っ子になっているシリルを引っ張りながらステージ脇へと向かう。
「あ!!やっと来ました!!」
ステージ脇であたしたちを出迎えたのはギルド最年少のサクラ。敬礼する彼女は相当心配していたらしく、こちらを見るやすぐさま駆け付けてきた。
「もう!!遅いですよ!!」
「ゴメンゴメン」
「シリルが出たくないって突然言い出してね」
「俺はずっと言ってたよ!!」
隙あればこの場から逃げ出しそうな彼の腕を2人で掴み絶対に離さない。そんな中、少年はある人物たちに助けを求めようとした辺りをキョロキョロしていた。
「あれ?シャルルとセシリーは?」
ウェンディとシリルの相棒であるエクシードのシャルルとセシリー。たぶん2人じゃ助けてくれないと思うけど、わずかにでも可能性があるならとそれに賭けてみたみたい。
「そう言えばずっと見てないよね?」
「あれ?どこ行ったんだろ」
シリルに言われて気が付いたが、朝準備を終えてからその姿を一切見ていない。同じエクシードのラウルも見てないけど、どこに行ったのかな?
「3人なら客席に行くって飛んでいきましたよ。屋台でも見てるんじゃないですか?」
最後の望みも断たれたシリルの顔といったら、まるでこの世の終わりみたいな顔になっている。そもそも彼は今までもこんな格好をやってきてたわけだし、今さら気にする必要もないと思うんだけど・・・
「あ!!始まりますよ!!」
サクラの声を聞いて客席から見えないようにステージを覗く。そのステージ上に立っているのは司会のユウカ。
「まずは我が蛇姫の鱗のエース、リオンとレオンによる氷の演舞をご覧ください」
紙吹雪が舞い降りてくる中姿を現す2人のバスティア。2人は氷の鳩を作り出すと、それを上空へと逃がす。
オオッ
洗礼された美しい造形魔法に観客たちは感嘆の声を出すと、彼らは手を合わせ上空の鳩を破壊する。
ダイヤモンドダストのように空から降ってきた氷。それだけでも大変綺麗だったのだが、小さな子供たちがいる場所に降ってきたそれがある生き物へと姿を変える。
「うわー!!うさぎさんだー!!」
「かわいいー」
現れたのは可愛らしいたくさんのうさぎ。本物そっくりに動き回るそれを見て、子供たちも大人たちも大興奮だ。
盛大な拍手の中、一礼してステージを後にする2人。その姿がかっこよくて、思わず見惚れてしまっていた。
「続いてはトビーのモノマネショー」
「おおーん」
トップバッターのおかげで会場は沸き立っていた。次のトビーはその歓声の中走ってやってくる。次はどんなことをしてくれるのか期待に胸を膨らませる観客たち。しかし、トビーの言葉を聞いて一瞬で空気が変わる。
「泣いてる時の自分のマネ」
そう言って涙を流しながらジタバタし始めるトビー。しかし、これに盛り上がっていたみんなざわつき始める。
「自分のマネって・・・」
「えぇ!?」
「マネ・・・なのか?」
果たしてこれはモノマネに入るのか、そもそもなぜそんなネタをやろうとしたのかわからずただトビーの泣き声だけが響き渡る。
「失礼した」
「まだ終わってねぇよ!!」
「キレるなよ」
いつまで泣いているのかと思ったところでリオンが慌てて止めに入るり舞台裏に引き摺られていくトビーが怒声を上げるが、あたしたちはみんな恥ずかしくて顔が真っ赤だ。
「ねぇ、さっきから言いたかったんだけどさ・・・」
「ん?」
ふてくされてかだんまりだったシリルが口を開いた。ようやく心を開いてくれたのかと思っていると、彼の鋭いツッコミが飛んだ。
「もっと事前に打ち合わせをしておくべきだったよね?」
「た・・・確かに・・・」
シリルがこのヒラヒラ衣装を着ることを知ったのもついさっきだし、トビーがあんなネタをするとは誰も思ってなかったし。確かに色々あってばたついてはいたけど、それでもこれは酷すぎる。
「つ・・・続いてはマスターによる東洋演舞です」
気を取り直して再開するステージ。今度は東洋の着物に身を包んだオババサマによる舞踊。両手にセンスを握り踊っていく彼女だが、イマイチ観客たちの受けがよくない。
「う・・・うまいと思うけどさ・・・」
「うん・・・」
「元がどんなのかわからないんだよね・・・」
異国の文化に馴染みのないあたしたちに取って彼女の舞踊がうまいのかわからない。おまけに盛り上がる要素も少ないし、受けが悪いのは当然なのかもしれない。
得意の回転を見せたところでポーズを決める。しかし、ポカーンとしている観客たちにようやく気がついたオババサマは、固まっていた。そして・・・
「脱ぐよ!!」
「「「「「えぇー!?」」」」」
ファンサービスのつもりなのか、着物を脱ぎ始めた。
「やっべ!!」
誰も嬉しくないサービスショットに観客たちの心が離れていく前にとレオンがステージに飛んでくる。
「失礼しました」
「まだ終わってないよ!!回すよっ!!」
暴れ狂うオババサマを押さえ付けてステージから引き摺り下ろすレオン。最初はよかったのにその後連続しての失態に舞台裏は重たい空気が流れていた。
「シリル。出番だよ?」
「イヤだ、絶対行かない」
「そんなこと言わないでくださいよぉ」
そろそろまともな催しをしないと示しがつかない。でも、シリルはこの様だし・・・
「ここで決めたらシリル、すごいカッコいいよ」
「よし!!全力で行ってみようか」
「「テンションの差!!」」
ウェンディに耳元でどう考えてもウソとしか思えないセリフを言われたのに本気にした彼はやる気満々になっていた。気付いてシリル!!そんな衣装で踊っても絶対かっこいいとは誰も思わないよ!!やる気を削ぎたくないから言わないけど!!
「つ・・・続いては皆さんお待ちかね」
震えているユウカの声。だが、このセリフだけで冷めていた会場の空気は一転した。
「我がギルド自慢の天使」
打ち合わせた通りのタイミングで手を振りながらステージに現れるあたしたち。それを見るとよりお客さんたちのボルテージが上がっていった。
「我がギルド天空シスターズ!!シェリア&ウェンディ&シリル!!」
オオオオオオオッ
全員が天空魔法を使えるということで急遽3人で歌って踊るアイドルをやることになったあたしたち。観客席はペンライトを掲げている人が大勢おり、やる側としても嬉しくなってくる。
「曲は《天使に滅LOVE♥》」
曲名が発表され前奏が始まると、舞台裏から盛大な笑い声がかすかに聞こえた。それが聞こえてしまったのか、先程までやる気満々笑顔満タンだったシリルの顔が次第に赤くなってくる。
♪♪♪♪♪
歌って踊って笑顔を振り撒くあたしたち。あたしも楽しくなってきて次第にテンションが上がっちゃう。
隣にいるウェンディも、すごく楽しそうに踊っていて、目が合う度に笑顔が溢れた。
「♪♪♪♪」
一方騙されていたことに気が付いたシリルはトマトのように真っ赤なままとにかく一生懸命に歌って踊る。元々運動神経がいいからか、ダンスのキレもいい。歌はちょっと下手だけど。
『ヤバイ!!シリルボクパンだぞ(笑)』
『レオン!!お前は黙ってろ!!』
たぶんあたしたちにしか聞こえないくらいの声だったけど、レオンが笑っている理由がようやくわかった。彼は親友のアイドル姿に笑っていたのではなく、チラチラと見えている下着が男物だったため、客からクレームが来るだろうと期待しての笑いだったらしい。
それから汗だくになるまで躍り続けたあたしたちは最後の決めポーズを取る。それに頭の上で手を叩き拍手を送ってくれるみんなに手を振りながら舞台裏へと降りていくあたしたち。
「穴があったら入りたい/////」
顔を隠しながら足早に出迎えてくれたみんなの脇をすり抜けていくシリル。この日の感謝祭は無事に終わったが、彼の心には深い傷を残したようだった。
後書き
皆さんあけましておめでとうございます。そしてお久しぶり。
テレビアニメが放映されるまで連載を止めると言いましたが、やめました。
理由は色んな方に再開を待っているとのご意見を頂いたのと、アニメだとシリルが絡んでこない週の時に連載が滞ることに気が付いてしまったからです。
ですのでここからは漫画の、原作の方をモデルに進めていきたいと思います。皆さんどうぞ、よろしくお願いします。
P.S.ドラゴンcryはやりません。どこで入れればいいか検討したけど纏まりませんでしたので。
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