歌集「冬寂月」
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一
冬枯れの
野辺の草々
あわれなる
春そ来れば
芽吹くと思ゑど
寒さに枯れ果てた多くの草…蓬も芒も宵待草も露草も何もかも頽れ、野に朽ちている…。
なんと哀れなことか…しかし、春になればまた芽吹き、溢れんばかりの緑に噎せることだろう…。
ただ…私にはそんな時代はもうないのだが…。
寂しさに
軒下に出でて
眺むれど
いづこも冬の
夕に陰りし
寂しくて戸を開き、軒下へ出てみれば…結局はどこもかしこも寂しさに埋もれるようだった…。
冬の夕暮れは早く…尚の事、寂しさは募りゆく…。
全ては陰り…身も陰り…逃げ場のない寂寥は、一体どうしたらよいのだろうか…。
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