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真田十勇士

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巻ノ百十五 異端の者達その六

「我等にはわかる、そして何故そこまで神妙に化けて潜んでおる」
「そのことからもわかりますな」
「この地はおかしいです」
「明らかに何かあります」
「大久保殿にとって危ういことが」
「明らかに」
「大久保殿のお屋敷に入る」
 服部は強い声で言った。
「最初は八王子のご領地と思ったが」
「どうも何もなく」
「怪しいものはあるにも少なく」
「若しやと思いここまで来ましたが」
「どうやら」
「お屋敷に忍び込むとしよう」
 屋敷といっても城と言っていい、そうした堅固な場である。
「これよりな」
「はい、そしてですな」
「お屋敷にあると思われる証拠を掴みましょう」
「あるならばですが」
「徹底的に調べましょう」
「なければよいが」
 しかしとだ、服部はこうも言った。
「わかるな」
「はい、何もなければです」
「この様な怪しい場所になってはおりませぬ」
「南蛮の者達が多く潜んでいるなぞ」
「他の国にはありませぬ」
「南蛮人達がおるのはまだいい」 
 それはというのだ。
「しかしな」
「はい、あまりにも多く」
「しかも化けて潜んでいるなぞ」
「おかしいと思うしかありませぬ」
「何かがあると」
「そうじゃ、間違いなくじゃ」
 この地にはというのだ。
「何かあるわ」
「では」
「すぐにですか」
「お屋敷に忍び込みますか」
「これより」
「そうする、しかし」 
 ここでだ、服部は。
 自分達が今いる林の中で自分の後ろの方にだ、右手に出した手裏剣を投げた。その手裏剣は。
 後ろに潜んでいた者の額を貫き倒した、一見すると只の猟師だったが。
 調べると青い目と赤い縮れた髪に髭の鼻の高い男がいた。十二神将達はその姿を見てすぐに言った。
「盗み聞きしていましたか」
「南蛮の者達ですな」
「明らかに」
「そうですな」
「林の中の気配は他にはないが」
 しかしとだ、服部は自身が倒したその者を見つつ言った。
「こうした者達がおる」
「と、なりますと」
「やはり怪しいですな」
「ここには何かがあります」
「大久保殿にとって危うい何かが」
「屋敷に入る」 
 絶対にとだ、服部は断言した。
「よいな」
「はい、それでは」
「夜になればですか」
「屋敷に入り」
「そうして」
「手に入れるぞ、しかしな」 
 服部は十二神将達にさらに言った。
「あのお屋敷はな」
「まさに城」
「お屋敷どころではありませぬ」
「ですから」
「油断は出来ませぬな」
「ここにいる者達全てで行く」
 その屋敷にというのだ。 
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