貰った特典、死亡フラグ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
自分の流儀を貫いて
12話:主人公(ヒロイン)は遅れてやってくる
前書き
遅くなり申し訳ありません。
最近、時間がなくて辛いです。
(やばい、本当にやばい。どのくらいやばいかと言うと…………考え付かない程やばい!)
今の俺はまさに、四面楚歌や袋のネズミ状態である。周りは敵だらけ。逃げられるような余裕も無い。しかし、余裕がなくても、どうにかしなければならない。
(くそっ、何かねぇのか!?)
余裕を作り出す方法なら、あるにはあるのだが、それも今の状況ではあまり意味を成さないだろう。不意をつくというのが大切なのだ。それに、特務六課の方も、俺が大人しく捕まると思っていないのか、油断も隙もなく構えている。
俺としては、周りに被害なんて出したくないし、死人も極力出したくない。いや、殺す気など毛頭無い。だが、あまりに切羽詰まった時は……。
「ダレン・フォスター。大人しく、投降しなさい!」
俺に投降を呼び掛ける、ティアナ・ランスター執務官。正直言って、今ここにいる六課メンバーが彼女だけで――もしかしたら、見えない所にいるのかもしれないが――良かった。高町なのは一等空尉とかフェイト・T・ハラオウン執務官とか、そこら辺のもはや最強クラスの人が来ていたら、俺なんて何も出来ずに捕まっていたに違いない。いや、この人でもそうなるかも……。
(とにかく、この状況を打破出来るもの……おっ!)
周囲を見回し、俺が見つけ出したもの、それはマンホール。マンホールと言えば、下水道。すなわち……、マンホールから下に落ちれば、下水道通って逃げれんじゃね? よくあるドラマみたいに。
(ふっふっふ。甘いな、特務六課とその他大勢の皆さん!)
俺はマンホールに向かって歩き出す。局員達の方は、俺が何をしているのか理解できないのだろう。だが、理解できないからこその警戒。俺の一挙動に気を配っていた。俺が一歩踏み出すごとに高まっていく緊張感。俺の鼓動も段々と高まっていく。そしてついに……俺はマンホールの上に立った!
「ところでさぁ……ティアナ・ランスター執務官さんはさ、主人公が脱獄する系の映画見たことないかな?」
「何……?」
俺の聞いている意味がわからないようだ。そりゃそうだ、俺だって自分が何を言っているのかよくわからない。たぶん、テンションがおかしい。
「スプーンで壁に穴開けて脱出したり、牢屋の戸の鍵を隠し持った、糸ノコで切ったり、色々さ」
「止まりなさい! 何をする気!?」
喋りながらも動く俺に、制止の声。ティアナ・ランスター執務官には訳がわからないだろうが、俺は話を続ける。それはまさに、試合後のヒーローインタビューの様に熱を持っていた。
「何ってそりゃぁ……これだよ! リアクト、モード“近接鎧装”ァ!」
「なっ!?」
俺がこの3か月間で編み出した技の一つ、“瞬間形成”。それは、ディバイダーを一瞬間で出現させ、これまたものすごい早さでリアクトするというもの。もしも、俺がこの様な状況になった時のために日々練習していた。俺にはサイファーの様に上手く剣を扱うことが出来なければ、アルの様に銃を上手く扱えない。それに、分断能力も他のやつらと比べてそんなに高くはない。俺が伸ばせるのはこういう点なのだ。
(俺が得た結論は一つッ! 努力すればそれなりの成果は出るっつーことだ!)
両手が塞がっているので、ディバイダーを顔の前に出現させ口で掴み、肩に刺す。周りは攻撃しようとしているが、遅い!
「うらァァ!」
出現したそれは、俺の肩から手まで、そして足の部分を覆う強化外装。肘の部分にはブレードが付いている。俺は、足を思い切りマンホールに打ち付けた。
「はははははァ! 逃げるン……あァ?」
だが、マンホールが壊れ、俺が下に落ちることはなかった。その代わり、マンホールを中心にして亀裂がはしる。周囲6m程の亀裂。
「あ、これはやばい……」
ビキキッという音とともに道路が崩れ始める。周りにいる管理局の人達と車が落ちる。俺の罪状に器物破損が追加された瞬間だった。
「やッべ、蒼! 死ンじゃうと色々不味いから、助けろ!」
『……Jud』
落ちた場合最悪死んでしまうので、俺にしたように“蒼十字の書”のページを下に敷いてクッションにする。まさか、こんなことになるとは思ってもいませんでした、はい。
「状況はともあれ、今のうちィっ!?」
逃げようとしていた俺に襲いかかってきたオレンジ色のすさまじい量の魔力弾。分断出来るとは思うが、この量では全部出来ないかもしれない。足止めのつもりかっ!
「くそったれが! 秘技、全力分断☆封魔落としィ!」
迫り来る弾丸に、拳による打撃を直接叩き込み、分断する。その打撃は“翔翼”によって、加速させる。それが、秘技、全力分断☆封魔落とし。分断効果を持った、高速の連打。両手に持っていた袋は宙に上げておく。
「うらァ! 分断分断分断分断分断分断分断分断分断分断分断分断分断分断……ッ!!」
なんとか被弾せずに、全て分断仕切った。落ちてくる袋もちゃんと掴んだ。それに噛んでない。……それでは今度こそ逃げよう。
「蒼、短距離多重転移で!」
『……Jud、転移を開始します』
周りの景色がものすごい速さで変わる。多重転移なら追跡される恐れもそんなに無いし、安心だ。それに、短距離だから転移の時間もそんなにかからない。
そして、着いたのはどこかの公園。撒いたと思うし、少し休憩しよう。
「すげェ、疲れた……。何で見つかったンだろォ……?」
俺には全く、見に覚えがない。どこかでボロを出した筈はないし、最初から管理局が知っていたとは思えない。
(色々謎だなァ……)
公園のベンチに座りながら、空を見上げる。星がキレイだ。追っ手が来ていないか、辺りを見回すと、なんか2人の少女が格闘の練習みたいなのをしている。努力するのは素晴らしい。
『通信が入っています。発信者名、フォルティス』
「ほェ? 何だろ」
何か俺に用事か……もしかして、買い出し?
『あぁ、良かった、繋がりま……ダレン、何故リアクトしているんですか?』
「あれ、ほんとだ」
自分の体を見てみると、リアクトしたままだった。これでは、不審者に間違われてしまう。解除、解除。
『何があったんです?』
「いや、それがね。ゲーム買って帰る途中で、何でか知らないけど、特務六課に見つかっちゃって、少しばかり応戦してた」
『何をしているんですか、あなたは……。誰も殺していないでしょうね?』
「あー、そこら辺は大丈夫。ちゃんと考えてたから」
実際はかなりギリギリだった。まさか、道路が崩れるとは思っていなかったし、蒼の助けもなかったら死人が出ていたかもしれない。今度、お礼に蒼を磨こう。
『全く……ああ、用件を忘れるところでした。カレンが、早く帰ってこいとのことです。なんでも、“本と銃剣の二人組”について正体を、掴んだらしいので』
「そうか……すぐ帰る」
『わかりました。お気をつけて』
そして、通信は切れた。
カレンが“本と銃剣の二人組”についての情報を掴んだ。それは、この世界の真実を知る手がかり。こんな所で休んではいられない。
「蒼、“フッケバイン”に転移」
『Jud。座標算出開始。転移を開始します』
転移の時は浮遊感を感じる。転移する場所が離れているときは長く感じる。実はこの感覚は好きだ。
「帰ってきましたね」
「何だ、待ってたのか?」
“フッケバイン”内に転移するとそこにはフォルティスがいた。転移した後にぶつかりそうで怖い。
「えぇ。捕まってないか、心配だったので」
「俺はそんなにやわじゃない」
かなり危なかったけど、結果として捕まっていないのだから、大丈夫だろう。
「皆、食事をしています。ダレンはどうしますか?」
「あー、俺少し寝る。さすがに今日は疲れた」
今日は色々ありすぎた。襲撃されたり、“ディバイドゼロ・エクリプス”喰らったり、逮捕されそうになったり。若くても、辛い……。
「わかりました。それでは三時間程したら、起こしますね」
「あれ、何かあんの?」
「お仕事です。第16管理世界にですね」
襲撃か。てことは殺すことになるか……。一応生きるために必要だし。それに、“本と銃剣の二人組”に何か関係あるのだろう。カレンは無駄なことはしない。いや、時々あるか。
「りょーかい」
「では」
去っていくフォルティスを見ながら考える。俺はいつまでにこいつらの仲間でいられるのだろうか、と……。
感じたい、行きたい、戦いたい、ふれ合いたい、聞きたい、話したい……一緒にいたい……。
『身体構築完了…………』
今すぐそこに……ダレン……。
「ダレン、起きてください!」
「あぁ?」
寝ている俺を揺さぶり、声をかけるのはフォルティス。あれ、隣にステラもいる。もう、時間かよ、寝たりねぇ。
「もう……か。もう少し寝たい……」
「そんなことはいいですから、説明してください。これは一体どういうことですか!?」
「そうだよ、誰なの!? ダレンお兄ちゃんの隣で寝てる女の人!」
あれ、ステラがしゃべってる。これ、夢か? ステラはリアクトしてる時以外にしゃべることが出来ない波豆だし……。あれ、でも隣に誰かいる気配がする?
「夢じゃないの………………まさか、でも、え……」
起き上がり、隣を見て俺は絶句した。そこにいたのは、ドジで、おっちょこちょいで、妹みたいな少女。俺が守ると誓って、俺が殺してしまった少女。銀髪が綺麗なその少女の名は…………
「…………マ……リ……」
後書き
努力は報われるものと信じています。
リアクトと技の詳しい説明は次回にやります。
アドバイス、感想などよろしくお願いいたします。
ページ上へ戻る