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ヘタリア大帝国

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85部分:TURN8 レーティア=アドルフその九


TURN8 レーティア=アドルフその九

「その我々に今頼りになる同盟国が生まれたのだ」
「そうだ」
 ここでだ。宇垣が笑みになった。
「それこそがだ」
「我々と同じファンシズムの国であり古くからの盟友であり栄光のローマ帝国の後継者であるイタリン共和王国だ」
 まずはこの国だった。そして。
「東洋の不敗の国、長い歴史を誇る神秘の国日本帝国、この二国が我々と手を結んでくれた」
「なっ、何!?」
「まさか」
「イタリンと日本がか」
「ドクツと手を結んだというのか!?」
 これにはだ。日本とイタリンの者達以外の全ての国の者達が驚いた。そしてだ。
 彼等は口々にだ。こう言うのだった。
「寝耳に水だ」
「何時の間にそんな話を進めていたのだ」
「まさか。ドクツに同盟国ができるとは」
「信じられん」
「こんなことがあるとは」
 しかしだ。これは確かだった。レーティアは言うのだった。
「今我々ははじめる!彼等と共に!」
 そのだ。イタリン、日本と共にだというのだ。
「世界の新秩序を築くことを!そしてゲルマン民族の生存圏の確立を!」
 そしてだった。
「世界の盟主となることを!今はじめる!」
「ジークハイル!ジークハイル!」
「レーティア=アドルフ総統万歳!」
「ドクツ第三帝国に栄光あれ!」
 ドクツの国民達は割れんばかりの拍手と歓声で小さな身体に大きい身振り手振りを入れて演説をするレーティアに応えた。レーティアは演説の天才でもあったのだ。
 その演説を聞いてだ。宇垣は唸る様に言った。
「見事だ。帝の次に」
「まずは帝ですか」
「外相にとっては」
「当然だ。わしは帝国臣民だ」
 だからだとだ。宇垣は周りに答える。
「だからこそだ」
「帝ですか」
「帝は代々素晴らしい方々だ」
 確信を以てだ。宇垣は断言した。
「確かにあのレーティア総統も素晴らしい方だがな」
「だが、ですよね」
「帝の次には」
「そうだ。あの総統は素晴らしい方だ」
 うっとりとさえしてだ。宇垣は言う。
「必ずや雄飛されるだろう」
「このドクツと共に」
「そうなられますか」
「日本帝国はドクツと共に生きるのだ」
 宇垣はこうも言った。
「では。今回の同盟締結は成功に終わったとだ」
「はい、帝にですね」
「お伝えしましょう」
「そうしてくれ。ではわしはだ」
「はい、ドクツからイタリンに」
「そしてガメリカにですね」
 外交官達は宇垣に問うた。彼の仕事はドクツでだけではなかったのだ。
 それでだ宇垣は真剣な顔に戻ってだ。静かに言った。
「ドクツとの同盟でアメリカも我が国をより意識するようになる筈だ」
「孤立している今よりは」
「そうなることは間違いありませんね」
「これで戦争が避けられるなら御の字だ」
 宇垣は己の希望も口にした。
「あの国務長官も考えをあらためればな」
「そうですね。いいのですが」
「強硬路線ではなく」
「共和党はいいのだが」
 宇垣はガメリカの政党のことも口にした。ガメリカは議会制民主主義なので政党というものが存在する。彼が今言うのはガメリカの二大政党のうちの一つについてである。
「今の民主党はな」
「そうですね。中帝国寄りで日本を敵視する傾向にあります」
「特に今は」
「前の大統領は日本を刺激しなかったのですが」
「今の大統領は違いますね」
「元々家自体が中帝国と縁が深いからな」
 今のガメリカ大統領の家、それ自体がだというのだ。
「そしてそのうえだ」
「民主党には中帝国からの移民の支持者も多いです」
「それもありますから」
「だからだ。どうしてもな」
「しかも四大財閥が全て日本を敵視する様になっています」
「悪いことに」
「全くだ。何とかしたいものだ」
 宇垣はその眼鏡の奥の目を深刻なものにさせて述べた。
「まことにな」
「そうですね。本当に」
「今の苦境を」
 彼等は日本のことを心から考えていた。その為に今ドクツと手を結んだのである。
 そしてその日本帝国の面々を見ながらだ。レーティアが演説するその横に席を用意されているドイツはだ。こうプロイセンに囁いたのだった。
「俺達は知っていたがな」
「ああ、同盟のことだな」
「随分と思い切ったことをされる」
「けれどこれで孤立はなくなったぜ」
 プロイセンはこのことを素直に喜んでいた。
「俺も日本との同盟は驚いたがな」
「そうか。相棒もか」
「ああ。けれどそれでもな」
「ドクツは雄飛する」
 ドイツもだ。このことを今は確信できた。そのうえでの言葉だった。
「あの方と共にな」
「まさにあの方は俺達の救世主だな」
 プロイセンはシニカルなもののない笑みでだ。レーティアを見ていた。
「やれるぜ。世界の新秩序の建築はな」
「うむ、間違いない」
 こう言い合いだ。二人もレーティアを見ていた。まさにだ。レーティアはドクツそのものになっていた。ドクツはその彼女と共に大きく動いていることは間違いなかった。


TURN8   完


                      2012・3・7
 
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