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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第三十七話 盗賊と義侠の差  


第三十六話に増補しました。

帝国マルクと同盟のディナールのルートが判らないので、値段についてはあやふやになります。一応1マルク=100円 1ディナール=100円で考えていますが間違っていたら済みません。
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第三十七話 盗賊と義侠の差  

帝国暦478年12月1日

■イゼルローン要塞   オスカー・フォン・ロイエンタール

 そろそろ半年イゼルローンでの研修も終わってしまう。
オーディンへは帰りたくない、いや帰らない!
とは言えイゼルローンの繁華街に隠れるわけにもいかずに、
悶々とする今日この頃だ。

レテーナが優しくしてくれるのも帰りたくない理由の一つだが、
最大の原因は帰ればまた鬱陶しい噂が有るのではとの心配だ。
あの伯父がまたぞろ何か企まないか不安で成らん。

あの一族は俺を生んだあの女と同じで俺に災いだけを運んでくるのだから。
縁を切りたいが血のつながりはどうしようもないわけだ。
ああまた敵が来れば帰還が有耶無耶になるのに残念だ。


12月3日

 嬉しい知らせがあった。
人事異動の一環として我々新任士官の内で希望する者をイゼルローン配置にするとのことだ、
俺は一二もなく希望届けを出した、同じように出したのは鶏冠頭《ビッテンフェルト》と数人だけで、

後はオーディンへ帰還するらしいワーレンは新妻との生活のために帰るそうだ、
しかし普段勇ましいことを言い、家柄自慢をしている貴族のボンボン達は全員帰還だ、
やはり門閥貴族の連中は根性なしばかりだ。

ミュッケンベンガー司令官も皆と帰還の途に就くそうで、
同時に新任士官も帰還の途に就くそうだ、
帰還予定日は12月12日と発表された。

12月10日
皇帝が叛徒の俘虜になっている連中の為の救恤品輸送艦隊が入港してきている、
1000隻の艦隊とは些か大げさだが、其れだけ大事な品なのであろう。
指揮官が皇帝の筆頭侍従武官と言うだけで重要度が判るというものだ。


帝国暦478年12月10日

■イゼルローン要塞  駐留艦隊軍港       レオポルド・フォン・ケッセリング

 無事イゼルローンへと到着した、実に15年ぶりだあの頃と全く変わっていない、
航海中はメックリンガー大尉に大変世話になった、
冷静沈着で安心して航海を任せられた、
しかしここからが本番だ叛徒の領域へ進入するのだから。

今日明日はイゼルローンで英気を養わせ12日に出港する予定だ、
今晩はミュッケンベルガー大将がオーディンへ帰る前に皆で飲もうと誘って下さったので飲みまくるつもりだ。

12月12日
いよいよ未知の領域へ進行だ、イゼルローンでこの方面に何度も進入している、
駐留艦隊の航海参謀のビュルクナー大尉が水先案内に乗艦し午前9時、
オーデインに帰還するミュッケンベルガー艦隊の見送りを受け未知の宙へと進発した。

アルレスハイム、パランティアと危なげなく進む。
12月15日アスターテ星系に於いて叛徒側の水先案内の為の1000隻ほどの艦隊と合流した、
妙な気分だ普段ならそのまま戦闘に入る艦隊同士が同行しているのだから。

向こうの艦隊司令官はロックウェル少将と言うらしいが、
何か落ち着かない様子で此方を値踏みするようだ、
まあ向こうも妙な気分なのだろう。

12月16日
何事もなくエル・ファシルに到着した。
同行した艦隊と駐留艦隊の合計2000隻に並ばれると余りいい気がしないが、
これも皇帝陛下の御為であるから苦には成らない。

旗艦ミュルハイムから輸送艦エーアトベーレへ移動する、
10時に大気圏に突入しエル・ファシル宇宙港へ入船した。
向こうの代表者は国防委員会副委員長カンナバッチュオロと名乗った。

簡単な式典中にも輸送艦からコンテナを搬出し14時には全てのコンテナを渡し終えた。
目録を渡し160万セットの救恤品の受け渡しは無事終了した、
早く同胞に届く事を願う物だ。

15時挨拶の後宇宙港を出発し上空待機中のミュルハイムに乗り換え、
向こうの艦隊にエスコートされ帰路に就いた。
皆緊張している、其れはそうだつい数ヶ月前に戦っていた相手であるからだ。

アスターテでそれぞれの艦隊が発光信号で航海の安全を答礼し二たてに別れ我々はイゼルローンヘ向かう進路に就いた。
そのまま何もない状態で12月21日午後7時にイゼルローンヘ到着し緊張の旅は終わりを告げた。
後は整備と休養を行い3日後にオーディーンへ帰投する。


宇宙暦787年12月    
 
■エル・ファシル星系           ジェームズ・ロックウェル 

 捕虜交換に関する救恤品の受け渡しのエスコートを命令されたのは、
俺が国防委員長に近いからだ箔を付けてくれると言う事らしい、
主役は副委員長のカンナバッチュオロ氏で選挙の為に志願したようだ。

アスターテで帝国軍に遭遇したときは生きた心地がしなかった、
一発間違えれば戦闘だからだ、杞憂だったがね。
エル・ファシルへ到着しホッとしたものだ。
荷物の受け渡し後アスターテまで送りそこで分かれてエル・ファシルへと帰投した。


12月17日

■エル・ファシル本星 宇宙港倉庫ブロック

 160万セットに及ぶコンテナの群れをみてエル・ファシル駐留軍の兵達は早速作業に入った。
何しろ帝国からの荷物である、万が一危険物が混じっていては大問題になる、
その為陸戦部隊5千人がコンテナの中身を確認する作業に入った。

彼方此方から歓声が上がる。
「おっ此はワインだぜ」
「よせよ確認しろよ」
「良いって事よ、1本ぐらい無くったって判りゃしないさ」

「つまみも有るし後で飲もうぜ」
「帝国は贅沢してやがるな」
「噂じゃ仲間は矯正区とか言う地獄の様なところへ送られてるって言うのに」

「自分らの仲間には贅沢な品物を送りやがって」
「貴様ら!何をしておる、仕事をせんか!」
「軍曹殿」

「なんだ」
「敵はこのように贅沢な物を食っているのに、我々の仲間は塗炭の苦しみです」
「でなんだ?」

「敵の物資です、少しぐらい損耗しても仕方がない事です」
「なるほど確かにそうだな輸送における損耗は多々有る物だ、
どれだけ損耗していたのだ?」
「5千ほどです」

「いやコンテナを開けるとき壊れたからな1万個ほど損耗だな」
「いいか、お前等損耗は1万だ判ったな」
「イエッサー」


12月20日
コンテナはエル・ファシル星系より後方のジャムシード物資集積所へと送付された。
輸送艦バロットⅢの艦内では、船員達がコンテナの1個を開け中身の物色を行っていた。
「おーワインだぜ、こりゃあ上物だぜ」
「箱ごと無くなるとやばいからな、少しずつ抜いておこうぜ」
「役得役得」
「正規艦隊は贅沢してるんだ、彼奴等フルコース喰ってるんだぜ」
「俺たちゃフィッシュ&チップスだぜ」
「そうだそうだ」
「着いたら飲もうぜ」
「おー!!」

宇宙暦788年1月3日

■自由惑星同盟  ジャムシード星系  同盟軍補給敞 パーヴェル・コヴァリスキー

 帝国軍捕虜への救恤品が届き倉庫へと保管が終わった。
此から各収容所へ分割する訳だが155万1143名に分ける訳だ。
新年明けから数日は徹夜だな。

1月6日いよいよ開始だ、余り気が乗らんがね敵に対しての補給というのが気に入らんが仕事だから仕方がない。

1月7日国防委員会の委員達数名がお忍びで訪問してきた、
何でも今回送られて来たワインは463年物で帝国でも相当なビンテージワインらしい、
同盟では2000ディナールの値段らしい、
つまりは捕虜に飲ませるのは勿体ない少し回せという事らしい。

しかし数が足りなくなれば配れなくなるのではと言うが、
委員達は上の者達も黙認しているし足りないのならば、
安いワインで代用すれば良いと囁く、
上の者達、評議会も一枚噛んでいるのか。

売れば2000ディナール俺の給料の二分の一にもなる、
委員共も悪いようにはしないと囁いてくる、
息子や娘の学費や老後の蓄え・・・・・
悪魔が囁く・・・・・・・・・・

俺は俺は・・・・・・・・

負けた・・・・・・

密かに20万個を腹心の部下100人と共に軍用ワインと交換した。

委員共は大喜びだ、10万個を送るようにと言い帰って行った。

俺たちも密かに裏マーケットの者に連絡し売り渡した。
金額は2分の1に成ったが彼奴等は口が堅いから大丈夫だ。
我々の儲けは1億ディナールになった。
1人頭100万ディナールだ、大佐の退職金が30万ディナール、
誰がこの機会を逃すだろうか、俺は悪くない所詮飲むのは敵じゃないか!

1月12日から順次救恤品が送り出され始めた、
ばれるのではないかとビクビクしたが2カ所に纏まるように送った為、
ばれる事はないだろう、いざとなれば国防委員会が守ってくれるはずだ。

ネプテス12万3545個、カッファー7万8200個で20万1745個入れ替えた
エコニア5万5400個、ケリム52万8700個、マーロヴィア60万3800個、
ハダト16万1500個
に分けたのだ、あとはなんとかなるだろう。


1月20日ネプテイス捕虜収容所

「おいお前等皇帝からのプレゼントだとよ」
「陛下からだってまさか」
「そんはず無いじゃないか、俺たちゃ帰れば反逆罪だぜ」

「そう言わず見てみようぜ」
「ああそうだな」
ザワザワ集まる捕虜。

「順番に並べ」
「並ばんと渡さんぞ」

「救恤品て何だ?」
「さあな」
「いいから明けてみようぜ」

「お−ーワインだぜ」
「缶詰も有るぞ、しかもソーセージだ!」
「こっちはプラムだぜ」
「雑誌もあるぞ」
「タオルに下着もだ」
「ザワークラウトがあったぜ」
「おーー」

「皇帝陛下は俺たちをお怒りじゃないのか?」
「毒でも入ってるんじゃ無いか!」
「えっ」

「もう喰っちまったぜ」
「何ともないのか」
「ああスゲー旨い、ふるさとの味だ」
「俺も俺も」
「ワインは酸っぱいだけな、馬のしょん便みたいだ此は不味いな」

「まあ良いじゃないか、皇帝陛下万歳」
「皇帝陛下万歳」


1月28日

■マーロヴィア星系 駐留艦隊本部      アレクサンドル・ビュコック

 昨日捕虜に対する救恤品が運ばれてきた、
調べると463年物のワインが入っているという、
同盟内では2000ディナールするらしく、
馬鹿共が捕虜に飲ませるのはもったいと話してきたが、
儂は一喝してやった。

仮にも自由惑星同盟軍に所属する将兵ならば誇りを持て、
捕虜に送られて来た救恤品を掠め取る盗賊まがいの行為をするなら、
儂が1人残らずマーロヴィアの太陽に投げ込んでやる、
と怒鳴ってやったわ。

流石に恒星に焼かれるのは嫌らしく確り捕虜に配りおった。
全く近頃の若い者は我欲が多くていかん。


1月30日

■タナトス星系惑星エコニア捕虜収容所    バーナビー・コステア

 昨日捕虜にと港に届いた救恤品だが、調べると中に463年物のビンテージワインが入っていた、
調べると1本2000ディナールだ。
此はチャンスだ今まで散々公金をチョロまかして貯めた金が360万だ、
しかしこのワインは裏取引でも5540万ディナールになる、
俺の貯めた10倍以上だ、こんなチャンスはない旨く出来ないか。

そうだ未だジェニングス達は知らん、知っているのは横流しの仲間だけだ半分を抜いて2人で1本にすれば2290万ディナールだ、行けるいけるぞ。
こんなチンケな収容所からもおさらばできる、さっさと退職してフェザーンにでも逃げればいい。
よしやるぞ。

2月4日

■タナトス星系惑星エコニア捕虜収容所    クリストフ・フォン・ケーフェンヒラー

 なにやら、皇帝陛下から儂等に救恤品が送られて来た。
懐かしい物ばかりだが、良い思い出もない物も多い、
ワインは463年物かこの年はティアマト会戦から27年の物か、

皇帝陛下は何をしたいのやら、いきなりの事だがプレスブルグは感動して居るがな。
『皇帝陛下は我々をお見捨てにならない』と言っておったわ。
なにかするつもりか。面白い事がおきそうだ。

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やっぱりやった同盟、ご都合主義じゃなく原作でもやりそうですからね。

ワインの値段はフランスワインの15年物値段が二万円ぐらいでしたので、流通のない同盟では10倍ぐらいに跳ね上がるのではと、値段きめました。

よくでる秘蔵の410年物だいたい80年前物だけど
フランスワインだと1本70万以上するみたいですね。
 
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