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ヘタリア大帝国

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56部分:TURN6 北京星域会戦その二


TURN6 北京星域会戦その二

「だからこそ」
「はい、私は勝ちます」
「そうしてくれ。そしてだ」
「やがてはですね」
「全人類を共有主義者にするのだよ」
「そうなれば人類は」
 恍惚としたままだ。リンファも言っていく。
「幸せになれますね」
「あらゆる差別がなくなり」
「そして財産といった貧富の源もなくなり」
「誰もが幸福になるのだよ」
「だからこそ」
「君には期待している」
 ゾルゲはリンファに対して微笑みを見せた。
「ではだ。宜しく頼む」
「お任せ下さい」
 リンファは一礼してゾルゲに応えた。ソビエトの敬礼だった。そのうえで己が率いる艦隊と共に出撃した。ゾルゲはその彼女を見送ってからだ。
 ある場所に通信を入れた。自分の部屋でノートパソコンを入れた。
 そしてそのうえでだ。ノートパソコンのモニターに出て来た者にこう話すのだった。
「経緯は順調だ」
「そうか。そちらはか」
「安心していい。そしてだが」
「西方だな」
「そちらはどうなっているか」
「私が直接工作を行っている」
 女だった。眼鏡の女がゾルゲに話している。
「ドクツが問題だがな」
「あの国か」
「そのドクツから話が来た」
 女はゾルゲにその話をはじめた。
「中立条約を結ぼうかとな」
「中立条約?」
「期間限定だがな。ほんの少しの間だが」
「そうか。その条約はだ」
「こちらも読んでいる。条約の期間が切れればだ」
 どうなるかというのだ。そこでだ。
「何かを仕掛けてくるな」
「そうだな。ドクツは我が国の西方を己の勢力圏に加えたがっている」
「ドクツ生存圏」
 女は言った。
「レーティア=アドルフは己の著作で既に言明している」
「我が戦いだな」
「あの本はドクツの聖書になっている」
「我等のカテーリン書記長の本と同じく」
「あの女とカテーリン様は何処か似ているか」
 女はゾルゲにこうも話した。
「いや、ファンシズムと共有主義自体がだ」
「似ている部分があるのは否定できないものがあるな」
「そうだ。しかしだ」
「共有主義こそは人類の辿り着く究極のものだ」
 ゾルゲは静かに断言した。
「ファンシズムはその過程にあるものでしかない」
「その通りだな。では同志ゾルゲよ」
 女はゾルゲの話を聞いたうえで彼に返す。
「太平洋方面での工作を続けてくれ」
「了解した。ガメリカにもキューバから工作を進めるか」
「そうしてくれるか」
「エイリスはまずは日米中の三国を取り込んでからにする」
「その頃には我々もエイリス本土に工作を進めているだろう」
「では順調にだな」
「こちらも動いている」
 女は鋭い目でゾルゲに述べた。
「だから安心してくれ」
「うむ。そしてその日本帝国だが」
「そちらはどうなっているか」
「低所得労働者や所謂社会の不穏分子」
 そうしたどの国にもいる者達の存在に言及してだった。
「マスコミ関係者や知識人に浸透していっている」
「知識人か」
「あの者達が一番工作を仕掛けやすい」
 ゾルゲは仮面の様に無表情で淡々とだ。女に述べる。
「自分達が何でも知っていると思ってな」
「何もわかっていないからこそ」
「共有主義を吹き込むのは容易い」
「そして操ることも」
「実に容易い」
 こう言うのだった。
 
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