ヘタリア大帝国
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54部分:TURN5 中帝国その十一
TURN5 中帝国その十一
「ですがその全てがです」
「失敗かよ」
「カテーリンの目の前に来てもです」
「おいおい、刺客がそこまで来たら終わりだろ」
「ですがその刺客は誰もが急に大人しくなり」
そしてだというのだ。
「カテーリンに従い唯諾々と連行されていったそうです」
「また妙な話だな」
「普通とは思えません」
また言う久重だった。
「このことを考えましても」
「だよな。話を聞いててもな」
「あの国とカテーリンには謎と疑問があまりにも多いです」
「そんな国と対峙してるんだな。俺達は」
「田中さんも御気をつけ下さい」
久重はかなり親身に田中に告げた。
「間違ってもカテーリンに洗脳されないで下さいね」
「俺がそう見えるのかよ」
「はい、見えます」
きっぱりとだ。久重は田中本人に対して言い切った。
「田中さんは単純ですから」
「おい、そりゃどういう意味だよ」
「どういう意味とは。言ったそのままですが」
「俺はそんなに単純か?」
「呆れる位に」
流石に馬鹿という言葉はつけないがそれでもだった。
「田中さんが一番心配です」
「ったくよ。竹を割ったみてえだとか言わねえのかよ」
「竹を割ったみたいに単純ですね」
また言う久重だった。
「困ったことです」
「俺妙に色んな奴に心配されてるな」
「おや、私だけじゃないんですか」
「この前参謀にも言われたよ」
秋山にもだというのだ。
「軽挙妄動は慎んで慎重にいってくれとな」
「ああ、秋山さんよくわかっておられますね」
「参謀が正しいってのかよ」
「どう考えても」
「全面的にかよ」
「田中さんは確かに一本気であっさりしていて気分のいい方です」
田中の長所は久重もはっきりわかっていた。
「ですがそれと共にです」
「俺の駄目なところはそれか」
「はい、周りが見えていなくて突っ走り過ぎます」
「それよく言われるんだよな」
「東郷さんを超えたいんですよね」
「おうよ、あいつを蹴落としてな」
尚田中は権謀術数も知らない。彼の蹴落とすとは相手以上の功績を挙げることだ。
「それで海軍長官になってやるぜ」
「田中さんが海軍長官って」
「何か周りが大変そうだなあ」
「久重の言う通りの人だからね」
「まだまだ若いんだよね」
パンダやコーギーといった動物達もだ。田中の性格はよくわかっていた。
「全くねえ」
「いい人なんだけれどね」
「士官学校でも成績のバランスかなり悪かったらしいし」
「参謀向きじゃないのは間違いないね」
「おい、本当に言ってくれるな」
田中は動物達の言葉にも反応を見せる。
「確かに参謀には興味ないけれどな」
「はい、間違ってもそんな大それた野心は抱かないで下さい」
久重もそこは言う。
「絶対に無理ですから」
「ああ、それは俺も自覚してるさ」
「誰も参謀には推薦しませんし」
田中の性格も資質も誰もがわかっているのだ。
「ですからです」
「ああ、じゃあ艦隊司令としてだな」
「今のまま。そこに慎重さを加えればです」
「よりいいんだな」
「ですから頑張って下さい」
久重は右の前足をその彼に向けながら話す。
「私これでも田中さん嫌いじゃないですから」
「ああ、そうなのか」
「田中さんは裏表ないですから」
「そういうの大嫌いなんだよ」
「だからです。頑張って下さいね」
「慎重さか。難しいな」
田中はこのことには首を捻る。とにかく今の彼にはそうしたことは難しかった。だがそれでもだ。久重の言葉はその頭の中に入れはした。そのうえで北京に向かうのだった。
TURN5 完
2012・2・17
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