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ヘタリア大帝国

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53部分:TURN5 中帝国その十


TURN5 中帝国その十

「あの国は世界の脅威になりつつあります」
「それでもカテーリンは悪人じゃないってのかよ」
「善意が悪をもたらすこともありますから」
「?善意が悪を?」
「そうです。自分がよかれ、正しいと思っていることでも他人はそうではないことがありますね」
「そうなのか?」
 田中は久重の今の言葉に目をしばたかせてだ。きょとんとした顔になった。その彼にだ。今度は史羅がだ。こんなことを話してきたのだった。
「だから。田中君がお魚好きでもね」
「おうよ、大好物だぜ」
「それを嫌いな人に勧めたら」
「駄目だってんだな」
「アレルギーで食べられない人とかいるわよね」
「鯖とかそうだよな」
「それと同じなのよ」
 史羅は田中の好物である魚に例えて話していく。
「例え自分が好きでもいいものだと思っていてもね」
「それが他の奴全員がそうだとは限らないってことか」
「けれどカテーリンはそれがわかっていなくて」
 そしてだというのだ。
「共有主義はそうしたことを認めていないのよ」
「だからソビエトはやばいのか」
「ええ。そういうことなのよ」
「そうです。史羅さんの仰る通りです」
 ここで久重も語る。
「共有主義はそれを完全に否定していますので」
「だからあんな国家になってるんだな」
「他人も他の主義主張も認めないのです」
 それが共有主義の問題点だというのだ。
「まさに巨大な蟻の群れと同じで」
「蟻!?じゃあカテーリンは」
「ええ。女王蟻でしょうか」
「だよな。そんな存在だよな」
「そもそもあんな子供が急に出て来てです」
 久重はここで首を捻って述べだした。
「瞬く間に革命を成し遂げ国家元首になったことが不思議です」
「ドクツもイタリンも選挙を経ているわよ」
 史羅は今度はこの二国を比較に出してきた。
「ムッツリーニ=ベニスもレーティア=アドルフも選挙で圧倒的なカリスマを発揮して国家元首になっているわ」
「そこがカテーリンと違うのかよ」
「選挙に勝つより革命を成功させる方が困難なのです」
 久重はこう田中に話す。
「人を完全に従わせるカリスマが必要な場合がありますので」
「選挙は投票するだけ、革命は命がかかるわ」
 史羅は双方の違いを指摘した。
「人を死地に送るだけのカリスマを即座に見せないとならないから」
「だからこそ革命は成功させることが難しいのです」
「けれどカテーリンはそれをやったよな」
「そうです。彼女の前に出た者、周りを囲んだ者はです」
「全員従ったわ。誰もがね」
 久重と史羅は田中に説明していく。今度はあの革命のことを。
「それこそカテーリンが死ねと言えば死にました」
「ロシア帝国はあえなく崩壊したわ」
「あそこまでの恐ろしいカリスマはです」
「まさに女王蟻ね」
「蟻か蜂か?」 
 田中は蟻の近種のこの昆虫の名前を出した。
「そんな感じだよな」
「はい、共有主義はああした急進的な思想もあると考えていいですが」
「以前からああした思想はあったから」
「ですがカテーリンのあの絶対のカリスマ性と統率力はです」
「常識では考えられないわ」
「カテーリンの暗殺計画も数多くあったそうです」
 久重は今度はこの話をした。カテーリン暗殺計画だ。
「ですがその全てが失敗しています」
「おい、全部かよ」
「数百はあったそうですが」
 暗殺計画はだ。そこまで多かったというのだ。
 
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