レーヴァティン
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第三十話 返還と賠償の後でその十二
「生きるか死ぬかなので」
「動きが鈍くなるとな」
「駄目です」
「腹が減っても動きが鈍くなってな」
「満腹でもです」
だからだというのだ。
「そこはです」
「適量か」
「その適量が満腹です」
「そうしたことか」
「左様です、満腹が一番です」
「それが冒険者か」
「そして戦う者です」
こう言いつつだ、順一もワインを飲んだ。パスタに合わせてどの者も赤ワインを口にしている。
そのワインを飲みつつだ、進太が言うことは。
「ワインはいいものです」
「好きか」
「酒は何でも好きですが」
飲みつつ久志に答えた。
「やはりです」
「ワインが一番好きか」
「こうしたパスタや肉料理は赤で」
「魚介類の時は白か」
「はい」
そちらだというのだ。
「そちらがいいです」
「俺もだよ、パスタとか肉には赤でな」
「魚介類には白」
「そんな感じだな」
「ケーキ等には赤ですね」
「そのままだと白だな」
あてがないならというのだ。
「そんな感じだな」
「拙者もです、とかく酒は好きでござるが」
「ワインが一番好きでか」
「こうして飲んでいますと」
今の様にだ。
「非常に幸せな気持ちになれます」
「成程な」
「それでござるが」
さらに話す進太だった。
「おのおの方ワインの飲み方はご存知か」
「作法か?」
「いえ、作法も大事ですが」
「まだ何かあるのかよ」
「ワインを飲む時は感謝を忘れなき様」
「神様にか」
「そうでござる、ディオニュソス神に」
ギリシア神話の酒の神だ、その手には葡萄やその蔦があったりする。言うまでもなくワインを象徴している。
「感謝して」
「そうしつつか」
「飲むべきでござる」
それがワインだというのだ。
「是非共」
「感謝か」
「神に」
そのディオニュソスにというのだ。
「そうしつつでござる」
「飲むべきか」
「左様でござる」
「そうか、ワインはそうしたものか」
「拙者はそう思っているでござる」
「成程な、じゃあな」
久志は進太に笑って返した。
「そうして飲むか」
「久志殿もでござるな」
「ああ、確かにワインはな」
久志もディオニュソスのことは知っている、酒特にワインが彼の守護の下にあることも。それで言うのだった。
「あの神様の恵みものだな」
「拙者はティールの信者でござるが」
北欧神話の戦いの神だ、片手の神としても知られている。
「ディオニュソスもでござる」
「信仰していてか」
「こうした時は感謝しているでござる」
そのディオニュソスにというのだ。
「飲みながら」
「そうか、じゃあな」
「食べて飲むでござるか」
「そうしていこうな」
パスタとそちらをだ、そう話してだ。
一行はこの店で腹ごしらえをした、昼はここで腹ごしらえをしてそうしてだった。そのうえで譲二のアジトに向かうのだった。
第三十話 完
2017・8・18
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