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真田十勇士

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巻ノ百十三 加藤の誓いその十

「危急の時はな」
「その術で、ですな」
「難を退け」
「そうしてですな」
「そのうえで」
「全てを適える」
 自らが適えたいものをというのだ。
「そうするぞ」
「わかり申した」
「では、ですな」
「その時が来れば」
「必ずや」
「殿がその術を使われ」
「ことを果たされますか」
 十勇士達は主に強い声で述べた。
「まさに鬼に金棒」
「我等も死力を尽くします」
「これで例え天地が割れる事態になろうとも」
「それでもですな」
「必ず果たす、幾十万の敵が迫ろうとも」
 それでもとだ、幸村はこうも言った。
「お主達もいるしな」
「大坂で敗れ様とも」
「それでもですな」
「ここまで逃れられる」
「右大臣様も連れて」
「そうなるわ、必ずな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 幸村は十勇士達を連れて薩摩へと進んでいった。その動きを知っているのは加藤だけであったが。
 加藤は信頼できる家臣達にだ、こう言った。
「よいな、わしは間もなく世を去るが」
「それでもですな」
「全てを託す」
「真田殿に」
「そうされますか」
「よい目をしておった」
 幸村達のその目を思い出しての言葉だ。
「ことを成し遂げられる者の目じゃ」
「だからですな」
「あの御仁達に託す」
「後のことは」
「そうされますか」
「うむ、迂闊であった」
 加藤は死相に苦いものを入れこうも言った。
「これからもという時に病に倒れるとは」
「それは」
「何と申しますか」
「右大臣様が危うくなるのはこれからじゃ」
 まさにというのだ。
「そうした時に世を去らねばならぬとは」
「しかしです」
「それはです」
「後は真田殿が果たしてくれます」
「殿が今言われた様に」
「そうであったな、わしが今言った」
 加藤も言われてだ、笑みになって述べた。
「あの御仁達ならな」
「ことを果たして下さると」
「右大臣様を救って頂ける」
「何があろうとも」
「うむ、ここまで誰にも気付かれるに来てな」
 そしてというのだ。
「出た」
「では、ですな」
「このままですな」
「後は真田殿に託されて」
「殿は」
「憂いてはならぬな」
 達観した顔と目だった、加藤はその顔と目を家臣達にむけつつ述べた。
「そうであるな」
「安心されてです」
「後はお任せ下さい」
「真田殿と十勇士に」
「そして我等に」
「そうしよう、お主達ならば漏らさぬ」
 秀頼達のことをというのだ。 
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