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ナニイロセカイ

作者:猫丸
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*一人の世界 

ここは絶海の孤島かな?

元から孤立していたわたしは、諸刃の剣とゆうなの武器であり楯であった、かつての親友である旧友を失いました。
裏切れるという形で。

賑やかな教室。でもわたしの世界はいつも静か。

いつも独り。
休み時間も移動時間も授業中も、どんな時間だってわたしは独り。
独りで黙々と与えられた作業をこなす。でもだいじょうぶ。
だって集中して外の世界の雑音を消せばもうなにも心配はいらない、もう寂しくなんてないから。

ぼっち確定申告されてしまってもわたしはタダで転ぶつもりなんてないから。

初めて本当に独りになってから発見したことがあります。
いつもはなんやかんやでいてくれた武器と楯を失って初めて気が付いたことがあります。

それは――ぼっちはぼっちを見つけるのが上手い。

同じ匂い? 同じ空気?
どう言えば、説明すればいいのか分かりません。でもそんな不思議な電波のような物がビビッとくるのです。
運命の出会いってやつなのかな?
電撃結婚? 教会の鐘がなった? 稲妻に打たれたような衝撃が身体を貫いた? よくわからないけど、多分そんな感じだと思います。

新しい中学生活が始まってから早一ヶ月が経ったある日のことでした。あの子と出会ったのは。

「お、おはよう」

ぎこちのないあいさつ。
三つ編みのおさげで眼鏡をかけてわたしよりも背が低くて大事そうに抱えた分厚い本が良く似合う女の子。
やっと見つけた魂で繋がる友人(ソウルメイト)白うさぎ。

小学校は違ったので初めましての子。
あの子もわたしと同じで大人し系の口数が少なくて自己主張が苦手で賑やかな教室の隅っこにいる陰の存在。

あ……この子ならイケル。そう直感的に判断しました。
別に白うさぎの事を下に見ているとかそうゆうわけではないです。背がわたしより低いから、彼女を見る時の視線が見下ろす形になってしまうけど。

そうではなくて、勇者が最初に出会うスライムに「あ……こいつにならいけそう」と思うそんな感じです。

白うさぎもまだクラスの人たちの中で友達を作れていないみないです。
これはチャンスです。絶好のチャンス到来なのです。

女の子という生き物はどうしてかいつも群れ(グループ)を作りたがります。
どこでもいい、とにかくどこかのグループに所属していないとはぶられます。
でも運よくどこかのグループに入れたとしても、今度はそのグループ内での虐めやはぶられたりします。

入らなくても地獄、入っても地獄、だなんて女の子とはなんて大変な生き物なんでしょうね。

「じゃあ……」

白うさぎとの会話はいつもぎこちのないものです。
だってお互いにお喋りな方でもないし、自己主張が強いわけでも、誰かを引っ張って導くリーダータイプの人間(ひと)でもないから。

言葉のキャッチボール? なんですそれ、美味しいんですか? ってな感じです。

でも何事もアタックあるのみです。移動教室の時、グループ分けの時、休み時間の時、隙さえあればとにかくアタックあるのみなのです。
最初はこんな会話なにが楽しいの……と逆に聞きたくなるようなつまらないものでした。
でしたが、今では三言も続くようになりました。すごくないですか。

やっと。やっと――蒔いた種から芽が出ようとしようとしてたんです。
芋虫がさなぎになろうとしていたんです。

なのにどうしていつもタイミングよく邪魔してくるの? ねぇ――じゅっちゃん。




ある日の授業。
今日の授業は四人一組のグループを作らないといけませんでした。
わたしは当然白うさぎを誘いに行きました。あと二人いる事とか考えず、とにかく彼女を他の人に取られてしまう前に確保しなければっ、という気持ちだけで。

こんなわたしにも優しくしてくれる白うさぎは当然、他のみんなからも少しだけ人気が高いです。
人当たりが良くていい人だから。
だからと言われても白うさぎがいなければもうわたしには手札、コンクリートジャングルの獣(モンスター)達と戦うカードは残さていません。
もうみんなどこかしらのグループに所属してしまっているから。

だから白うさぎだけは――

「白うさぎちゃん。こっちおいでよ」

じゅっちゃんは白うさぎに話かけました。

「え……でも」

すぐ傍にまでやって来ていたわたしを困った表情で見る白うさぎ。

「いいからねっ」

そんな彼女をことなんてお構いなしとじゅっちゃんは白うさぎを連れ去って行きました。
わたしの目の前で白うさぎを連れ去って行きました。
すごく申し訳なさそうな顔をして軽く頭を下げる白うさぎにわたしはまた、ぎこちのない作り笑顔で手を振ります。
いいよ気にしないで、と口パクで伝えて。


じゅっちゃんがリーダーのグループは、彼女を入れて三人。三人じゃだめ、一人足りない。
なにかいい子は……ああ、いるじゃないか、捨てた駒の近くにもっといい駒が。
悪魔のような猟人(ハンター)は小さな白いうさぎを見つけ生きたまま捕まえ食べてしまいました。
可哀想な白うさぎ。この日以来彼女とは話していません。話せていません。
猟人がそれを許さないから。人の獲物は奪う癖に自分の獲物が奪われるのは絶対に許せないの。

(わず)かに見えたような希望の光はまやかしでした。それは闇の中に(うごめ)く悪魔の笑みでした。
さようなら白うさぎ。短い期間だったけど楽しかったです――ありがとう。 
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