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浪速っ娘気質

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第三章

「私って」
「ええ、困った時はお互い様っていうから」
「それが浪花節でしょ」
「妙子ちゃんにはそれがあるわね」
「大阪人の気質が」
「いい方向のがね」
「だといいけれどね、まあ私はずっと大阪にいるつもりだし」 
 この時もこう言う妙子だった。
「これからもね」
「じゃあその性格は大事にしていくのね」
「浪花節は」
「そうしてくのね」
「そうしていくわ」
 実際にと答えた妙子だった。
「これからもね」
「それ大事にしてね」
「江戸っ子みたいって言われてもね」
「それが浪花節なら」
「大事にしていってね」
「そうするわ、江戸っ子じゃなくて浪花節、大阪の女の気質よ」
 それだと言い切った妙子だった。
「私のはね」
「つまり浪速っ娘?」
「その気質?」
「江戸っ子気質じゃなくて」
「そっちよね」
「そっちよ、神田明神じゃなくて住吉明神」
 神様はそちらだった。
「朝倉寺じゃなくて四天王寺」
「大阪はそっちよね」
「誰がどう考えてもね」
「そっちになるわよね」
「そうよ、そっちでやってくわ」
 大阪に生まれ育って大阪にいるならというのだ。
「これからもね、じゃあ今度何処行く?」
「ハイハイタウン行く?」
「あそこの一階行く?」
「あそこのゲームセンターで遊ぶ?」
「そうする?」
「そうね、じゃああそこに行って」
 友人達の言葉に乗る妙子だった。
「皆で遊ぼうね」
「このまま道行くとお寺ばかりだけれどね」
「今そっち行ってもやることないし」
「お坊さんのお話聞きに行くんじゃないし」
「かくれんぼや鬼ごっこするんじゃないしね」
 全員でこうしたことも話した。
「それならね」
「ハイハイタウンよね」
「それかあの辺りで遊ぶか」
「近鉄百貨店行くとか」
「ひょっとしたらさっきの人いるかも」
 近鉄百貨店にとだ、友人の一人が言った。
「あそこにね」
「いや、あの人もう電車に乗ってるわよ」
 妙子は先程の観光客の名前を出した友人に返した。
「流石にね」
「それで今頃鶴橋かしら」
「あそこでチヂミ食べてるかもね」
「ああ、チヂミね」
「あそこよく売ってるからね」
「じゃあ私達もチヂミ食べる?」
 チヂミと聞いてだ、この友人はこうも言った。
「そうする?」
「いや、食べるならたこ焼きにしましょう」
「たこ焼きなの」
「チヂミもいいけれどね、食べるならそっちにしましょう」
 食べるのならとだ。
「どうせなら」
「そこも大阪ね」
「妙子ちゃんは」
「たこ焼き大好きだしね」
「外で食べるっていったらそれだしね」
「だからよ、食べるならたこ焼きよ」
 こう言ってだった、妙子は友人達と共にハイハイタウンに向かった。そしてそこで遊びたこ焼きも食べた。そのたこ焼きを満面の笑顔で食べる妙子は誰がどう見ても大阪の娘だった。


浪速っ娘気質   完


                  2017・11・25 
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