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浪速っ娘気質

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第二章

「上本町の隣です」
「じゃあすぐですね」
「はい、鶴橋は」
「あそこの駅の市場が凄いって聞いてまして」
「あそこは確かに凄いですね」
「大阪への旅行がてらに行って見たいと思いまして」
 それでというのだ。
「こちらに来ました」
「そうだったんですね」
「それじゃあ近鉄の上本町に駅に行けば」
「はい、そこから近鉄の電車に乗れば」
 それでというのだ。
「すぐですよ」
「有り難うございます、それじゃあ」
「あっ、上本町の駅の場所わからないですよね」 
 すぐにだ、妙子はその人が大阪とは縁のない観光客であり大阪の地理に暗いと思ってこのことを聞いた。
「そうですよね」
「地図持ってますけれど」
「いえ、それじゃあわかりにくいと思います」
 ここまで気を使っての言葉だ。
「ですから上本町の駅まで案内させてもらいます」
「いいんですか?」
「はい、私ここは地元ですから」 
 大阪の中でもだ。
「ですから案内させてもらいます」
「すいません、それじゃあ」
「こっちです」
 妙子はその人を自分から動いてその上で近鉄の上本町駅まで案内した、友人達もその彼女に無言で一緒にいてその人を妙子と一緒に案内した。
 妙子と彼女の友人達はその人を程なくして近鉄の上本町駅まで案内した、妙子はそのうえでその人に話をした。
「もうここから電車に乗ればです」
「鶴橋までですね」
「はい、すぐで」
 妙子はさらに話した。
「鶴橋の駅のすぐ下がです」
「市場ですか」
「はい、物凄く広い市場ですよ」
 その鶴橋の市場のことも話した。
「お店が多くて道も入り組んでいるから迷わない様にして下さいね」
「わかりました、本当に案内までしてくれてすいません」
「いえいえ、気にしないで下さい」
 にこりと笑って返す妙子だった、そうしてその人を駅の中、改札口の方まで案内して笑顔で別れた。
 そのうえで上本町で遊ぶことを再開したがずっと一緒にいる友人達はその彼女に暖かい笑顔で言った。
「見てたわよ」
「いいことしたわね」
「ちゃんと案内してね」
「いいことしたわね」
「いいことって当然のことじゃないの?」
 妙子はその友人達にこう返した。
「困っている人を助けることは」
「いやいや、それがよ」
「そうしない人も結構いるじゃない」
「そうした人と比べたらね」
「妙子ちゃんいいことしたわ」
「そしてそれを当然って言うことも」
「だって困った時はお互い様じゃない」
 自分も困る時があるというのだ。
「そうしたことを思うとね」
「ちゃんとなのね」
「こうした時は助け合う」
「そうすべきなのね」
「そう思うから、というかそれがね」 
 困った時には助け合う、これこそがというのだ。
「大阪でしょ」
「人情の街っていうしね」
「浪花節とかね」
「つまり妙子ちゃんには浪花節がある」
「そうだっていうのね」
「そうなる?」
 近鉄の上本町駅から少し離れたところを歩きつつ友人達に返した、日差しに照らされているそこは中学生である妙子達にはまだ早いホテルも見えるし他の建物も見える。 
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