舞台で注意すること
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第二章
「そうしてるの?」
「ああ、七瀬ちゃん夏もよね」
「夏も制服の下半ズボンよね」
「いつも半ズボン穿いてるわね」
「冬だけじゃなくて」
「ああ、それはね」
ここでも演技をする七瀬だった、すぐに女優のスイッチを入れていた。
「私冷え症だから」
「夏でも?」
「夏でも制服の下は半ズボンなの」
「そうなの」
「そうしてるの」
こう答えるのだった、クラスメイト達に。
「夏もね」
「そうなの」
「冷え性だからなの」
「そういえば半ズボンの上からストッキング二枚だしね」
「七瀬ちゃん冷え症なのね」
「それで夏も半ズボンなのね」
「そうなのよ」
こう言うのだった、冷え症なのは事実だが隠すものは隠していた。そうして上も体操服を着て授業に出た。
だがこの授業の時だ、クラスメイトにふと注意された。
「めくれてるわよ、裾」
「えっ、何処の?」
「ズボンの、そのままだとめくれるから」
だからだというのだ。
「ここはね」
「そうね、すぐになおす」
足の付け根のズボンの裾を手でチェックしてなおした。そのうえで注意してくれたクラスメイトに囁いた。
「言ってくれて有り難う」
「うちの中学のズボンって完全な半ズボンだからね」
「うん、丈短いのよね」
「だからちょっとめくれたらね」
裾の部分がだ。
「見えかねないのよね」
「下着がね」
「それが困るのよね」
「そうよね、けれど昔はブルマだったんでしょう?」
七瀬はクラスメイトにこの体操服の話をした。
「そうだったのよね」
「あのパンツみたいなのね」
「あれだとデザインもかなり恥ずかしいけれど」
七瀬達から見て下着そのものだからだ、実際こんなものを穿いて体育なんて出来る筈がないと思っている。
「ちょっとめくれたら」
「もうすぐによね」
「ずれたりしてもね」
そのブルマがだ。
「下着見えるわよね」
「よく昔の人あんなの穿いて授業出来たわね」
「お母さん達ね、私あれは絶対に無理」
「私もよ」
「あんなの穿いて人前に出られないわ」
「絶対にね」
「そうよね、けれどうちの半ズボンもね」
あらためて言う七瀬だった。
「ちょっとめくれるとだから」
「注意しないとね」
「本当にね」
ズボンの裾をなおしてからこうした話をした、七瀬にとっては危うい時だった。
その危うい時を友人の忠告で難を逃れた後日だった、家であるドラマの再放送がされていた。そのドラマを見てだった。
七瀬はすぐに不機嫌な顔になってドラマを見ている母に言った。
「お母さん、チャンネル替えよう」
「あんたが出てるドラマじゃない」
「ちょっとした役でね」
「だから見たらいいのに」
「そのドラマは見たくないわよ」
憮然として言う七瀬だった。
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