【凍結】剣製の魔法少女戦記 外伝・ツルギのVividな物語
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009話『クラウスの子孫の郷愁』
前書き
更新します。
……あれは、思い出すのは四年前にミッドチルダで起きた最悪の事件……。
あの……私が最後まで果たせなかったゆりかごが長年の眠りから覚めて再び動き出しミッドチルダを襲い始めたジェイル・スカリエッティ事件。
私は空に浮かぶ聖王のゆりかごを見て、その当時からすでに過去のクラウス・G・S・イングヴァルドの記憶を引き継いでいた身からして恐怖を抱きました。
あれは……戦争を終わらせるためのものなのに、今度は戦争を起こすものとして使われていることにショックを受けました。
そして、聖王のゆりかごが動いているという事は中には聖王の血筋の誰かがいるという事に結びつく。
それを連想して私は、でも当時力もなにもなかった私にはなにも出来ることが出来ずにただただ家族と逃げる事しかできないでいた。
でも、少し時間が経過して避難先でゆりかごの映像を見ていた時だった。
ゆりかごから一筋の光の線が生えてきてそれは何度もゆりかごを切り裂いていくという光景……。
最後には爆発とともに局員の皆さんの泣き叫ぶ声やその映像を見ていた私達市民も大いに喜んでいる中、私は見ました。
映像の中では何人かの人がゆりかごからまるで光のベールで守られているようにゆっくりと地上へと降りていくという光景……。
その中にありえない人の姿がありました。
そう……オリヴィエ殿下の姿がその中にあったのです。
私は幼心のままに『オリヴィエ殿下にいつか直接会えるかもしれない……そして私の気持ちを聞いてほしい』という思いを抱きました。
そしてオリヴィエ殿下とは別にもう一人気になる人の姿がありました。
のちにミッドチルダを救った英雄として持て囃されるようになる人物……シホ・E・S・高町さん。
その彼女を見てクラウスとしての記憶が訴えかけてきたのです。
あの人の事も知っていると……。
私はそれまでクラウスの辛い記憶をあまり見たくない思いから意識しないようにしていたのですが……シホさんが誰なのかを知りたい一心で記憶を自ら見るように心がけました。
そして同時にシホさんの経歴も調べていく事にしたのです。
そして少しだけだけど分かった事がありました。
それは……、もしかしたらシホさんはあのオリヴィエ殿下の近くでいつも控えていた錬金術師の末裔なのかもしれないと……。
それからはオリヴィエ殿下とも会える機会を探りながらもいつか勝負できるように鍛えてきました。覇王流が今の彼女に通用するのかという事も期待しながらも。
そしてとうとう私はシホさんと会える機会に巡り合いました。
「あなた方……特にシホ・E・S・高町さんに確かめさせていただきたい事があります……」
私はシホさんとノーヴェさんを見下ろしながらそう二人に語り掛けました。
シホさんは私を見て、少しだけ優しい笑みを浮かべました。もしかしてあちらも私の事を分かっているのでしょうか……?
でも、それだけで分かってしまった。
シホさんの佇まいはなるほど、英雄と言われるだけあって今の私では敵わないのかもしれないものだと……。
それでもここまで来てしまったのですからもう後戻りはできません。
そんな時にノーヴェさんが私にこう言いました。
「質問するならバイザーを外して名前を名乗れよ」
なるほど……確かに礼儀がなっていませんでしたね。
シホさんの前だとこの少しの胸騒ぎも合わせて少しだけ冷静に欠けていたみたいです。
それなので私は言われた通りバイザーを外しました。
そして名乗ります。
「失礼しました。私はカイザーアーツ正統ハイディ・E・S・イングヴァルド……『覇王』と名乗らせていただいています」
「そう……やっぱり子孫なのね」
シホさんはそう小さく呟きましたが『やっぱり』ですか。
彼女も私について調べていたようですね。
「はい……そうです。少し伺わせていただいてもよろしいでしょうか……?」
「なんだ? シホさんになにか言いたい事があるのか?」
「いいのよノーヴェ。後は私に任せて……」
「わかりました」
ノーヴェさんより一歩シホさんは前に出てきて、
「私も……あなたとお話をして見たかったのよ。クラウスの子孫なのだとしたら私とも無関係じゃないから」
「それは……やはりあなたも過去からの記憶を受け継いでるのですか? そう……あの聖なる錬金術師の……」
「そこまで私の事を分かっているのね。さすがね……でも少しだけ勘違いかしら?」
「それはどういった……?」
「それより……あなたは格闘家に勝負を何度も挑んでいるのでしょう? 事情を聞かせてもらってもいいかしら? なぜそんな事をしているのかを……」
シホさんはそう言ってなお優しい笑みを絶やさないでいました。
それが私の心になにかしらの訴えをしてきているようで胸が少しだけやはり締め付けられます。
だけどその前に、
「あなたは……聖王殿下と冥府の炎王の知り合いだというのは本当ですか……?」
「ええ。もうメディアには顔は出てしまっているからオリヴィエ陛下とイクスヴェリアとも会った事があるわ」
「そうですか……私は、私には成すべき事があります。クラウスの想いを継いで列強の王たちをすべて倒してベルカの天地に覇を成す事……」
「それがあなたの目的なの……?」
「はい、そうです」
「お前は何を考えてんだ? もうベルカっていう国自体無くなってんだぞ!? かつての王たちの子孫達もそれぞれ生き残ってそれぞれに暮らしがあるんだ! そしてお前もそうなんだろう!?」
ノーヴェさんがそう叫んできます。
それは分かっています……それでも私にはクラウスの意思を継ぐ義務があるんです。
記憶を引き継いでしまった私にはそういう生き方しかできないのです。
「ふぅ……わかったわ。あなたも過去の記憶に捕らわれているのね。ノーヴェ、ちょっと荷物も持ってもらってもいいかしら……?」
「え? あ、はい。いいですけど……まさかシホさん?」
「ええ。ハイディさん……それなら私にも戦う義務があるわね。あなたのいう通り私は聖なる錬金術師……末裔というのは間違いだけどあなたの事を放っておけないから」
「ご配慮痛み入ります。あなたの事情も聞きたいところですが……今は」
「ええ。拳を交えるんでしょう? クラウスの子孫らしいわ」
そう言ってシホさんは少し体をほぐすように動かした後に構えをしました。
そこからにじみ出てくる強者の体現。
聖なる錬金術師のあの人は格闘はてんでダメだったとクラウスの記憶が言っているのですが……シホさんは強いのでしょうか?
「それでは……まいります!」
「ええ!」
私は魔力をバネにチャージをしかけました。
速攻からの突撃、いきなりなら不意打ちはできると踏んだ、と思ったのですが……チャージした次の瞬間にはシホさんの姿は掻き消えていました。
どこに!?という疑問を感じる前に私のわき腹から鈍痛が響いてきました。
「なっ……!?」
「はい。今のであなたは一回死んでいるわ」
「ッ!」
いったん後方へと下がっていき何をされたのかを思考しました。
それでも私が追い付けないほどの反応速度で移動してお腹に拳を一発入れたという単純なものなのに、それだけが脅威という一言で片づけられないものなのかと感じました。
「さすが……英雄と呼ばれるだけありますね。今の私では敵いそうにないみたいです。ですが!」
せめて一撃だけでもという思いで私は先程よりもさらに本気でシホさんに挑む覚悟を決めました。
それを感じてかシホさんも私に一撃を与えるためにまたしても高速で接近してきました。
そして、
「これを耐えられたら反撃を許すわ。せいぜい耐えてね?」
シホさんの拳に魔力が宿り、私に拳を放ってきました。
私はその拳をなんとかギリギリ掴む事に成功したためにカウンターバインドを仕掛けてシホさんの腕を封じました。
これなら……いける!
「いきます! 覇王……断空拳!!」
私の今の渾身の一撃がシホさんにヒットしました。
これで倒れないのなら私の力不足という事になりますね。
そして思った通り、
「……いい拳だったわ。バインドからのカウンターはなかなかのものね」
そこには私の覇王断空拳を受けたにもかかわらずに平然と立っていたシホさんの姿がありました。
強い……ッ!
これが数多の戦いを潜り抜けてきた人の私との実力の差か。
そう思った矢先に、
「あ、れ……?」
急に私の視界が揺らいできました。
もしかして、
「ああ……それとカウンター返しもしておいたからそろそろ意識も朦朧としていると思うわ」
「なるほ、ど……素直に完敗です……」
私はそこで意識を失いまして視界がブラックアウトしました……。
とりあえず、どうにか制圧できたわね。
「さすがですねシホさん」
「まぁ、なんとかなってよかったわ。それよりまずはこの子をどうするか考えましょうか。私も彼女とゆっくりとお話がしてみたいから」
「そうですね。それじゃスバルの家にでも行きますか?」
「そうね。寄らせてもらおうかしら……」
ノーヴェがそれでスバルの家へと連絡している間に気絶している彼女の身体が光ってそれが収まるとそこには先ほどまでの大人ではなく少女の姿があった。
「って、こいつがさっきまでのあいつだったのか? まだガキじゃねーか」
「大人になる魔法でも使っているのね。とにかくスバルの家まで運びましょうか」
「了解っす」
その後にこの子の手荷物とかも調べたロッカーから持ってきて彼女の目が覚めるのを待つことにした。
有意義な話ができるといいわね。
後書き
こんな感じでシホさんの圧勝でした。
これから強くなってもらいたいですね。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
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