真田十勇士
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巻ノ百十三 加藤の誓いその五
「何なら徳川の姓もじゃ」
「それまでも」
「そこまでされることもお考えじゃ」
「まさに別格の家ですな」
「前田家以上じゃ、だからな」
「それ故に」
幸村はまた言った。
「加藤殿としては」
「いいと思っておるが」
「やはり茶々様が問題で」
「あの方は天下にこだわっておられる、いや」
「今尚ですな」
「天下はな」
まさにというのだ。
「危うい」
「そして豊臣家も」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「実にな」
「そうですな、だからこそ」
「こちらは出来ておる」
「用意が」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だからな」
「何時でもですか」
「ここに来ればな」
その時はというのだ。
「何時でも迎える、しかしな」
「加藤殿は」
「あと僅かじゃ」
その命がというのだ。
「だからな」
「後はですか」
「家臣達に託しておく、そしてな」
「この熊本からですな」
「薩摩じゃ」
そこにというのだ。
「行くのじゃ」
「その時は」
「その話もじゃな」
「はい、今度は薩摩に行き」
そしてというのだ。
「お話するつもりです」
「それがよい、ではな」
「はい、加藤殿も言って頂いたので」
「わしが文を書くか」
「そうして頂けますか」
「うむ」
加藤も頷く。
「右大臣様の為ならばな」
「かたじけのうございます」
「よい、むしろじゃ」
「それがしがですか」
「わしは太閤様に可愛がって頂いた者じゃ」
それこそ幼い頃からだ、秀吉に育てられてきたま子飼いの者だ。それだけに恩義が深いのだ。
「だからこうしたことも当然じゃが」
「それがしが。ですな」
「貴殿は信濃の者」
真田家自体がというのだ。
「右大臣様には縁も何もないではないか」
「いえ、関白様にです」
秀次のことをだ、幸村は加藤に話した。
「それがし目をかけて頂きお助けしようとしました」
「高野山においてか」
「それでお助けしようとしたのですが」
この時のことを話すのだった、ここで。
「しかし」
「それでもか」
「はい、そこで右大臣様を頼まれました」
その秀次にというのだ。
「是非にと」
「そうであったのか」
「豊臣家の最後の方となるあの方を」
「関白様はそうしたことをされていたか」
「それで」
だからこそというのだ。
「それがしは関白様との約束の為に」
「わかった、義か」
「関白様とのお約束で」
「そうか、ではな」
「このお約束によりです」
「貴殿は右大臣様の為に働くか」
「戦国の世はようやく終わるでしょうが」
しかしというのだった。
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