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ドリトル先生と春の花達

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第七幕その三

「そうだと思ったよ」
「ああ、和歌だね」
「日本語のそうした言葉自体がなんだね」
「和歌になっている」
「そうなんだね」
「あの美しさは日本語自体にあるんだね」 
 和歌のそれはというのです。
「ただ和歌にだけあるんじゃないんだよ」
「そうなんだね、春雪ね」
「確かに奇麗な言葉だね」
「春の雪って困るけれど」
「言葉としては奇麗だね」
「いい言葉だね」
「英語や他の言葉とはまた違った」
 先生は言いました。
「独特の雅というかね」
「そうした奇麗さがね」
「あるっていうんだね」
「日本語そのものに」
「先生はそう言うんだね」
「うん、聞いていたら」
 日本語はというのです。
「そう思ったし感じたよ」
「この雪を見ていたら」
「四月なのに降ってるけれど」
「それでもだね」
「奇麗だっていうんだね」
「そうなんだね」
「うん、この春の雪を見て」
 先生は今も見ています、そのうえでのお言葉です。
「さらっと和歌が出来たら」
「それはだね」
「もう歌人だね」
「そうなるんだね」
「残念だけれどここでさらりとはね」
 先生は少し苦笑いにもなりました。
「出ないね、僕は」
「ううん、それでもだね」
「日本の歌人になるとだね」
「その和歌がさらっと出る」
「この春の雪を見ていて」
「そうだろうね、特にね」
 先生は皆にさらに言いました。
「ここから凄いのはね」
「凄い?」
「凄いっていうと?」
「恋を詠うんだよね」 
 この春の雪を見てというのです。
「儚さや悲しさを込めて」
「あっ、そうだよね」
「日本の和歌ってそうだよね」
「さらっと入れるよね」
「季節の中に恋もね」
「それで感慨を深めるんだよね」
「それがまた凄いんだよ、源氏物語や伊勢物語だけでなく」
 そうした物語に止まらずというのです。
「五七五七七のその短い中にね」
「季節に恋も入れて」
「そして一つの世界にする」
「それがまた凄いんだね」
「日本の和歌にあるものは」
「そうだっていうんだ」
「うん、僕に出来るかな」
 不安にも思うのでした。
「和歌の中に恋まで入れれるかな」
「難しいっていうんだ」
「先生にとっては」
「どうにも」
「うん、どうだろうね」
 先生は降り続ける雪を観つつ思うのでした、そしてお昼御飯の時にお外に出てみるとでした。
 梅や桃の下が雪で真っ白になっていてです、花々にも雪がかかっています。その花と雪の景色を見てです。
 先生はまたこの奇麗さに思うのでした、ですがその先生にふと通り掛かった学生さん達がお声をかけました。
「先生どうされたんですか?」
「何かありましたか?」
「梅や桃に何か」
「雪にでしょうか」
「奇麗だって思ってね」
 それでとです、先生は学生さん達に答えました。 
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