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提督はBarにいる。

作者:ごません
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風邪引き提督と艦娘達・2

『提督、何をしているんだい?』

「いや、むしろお前が何してんだ」

喧しい金剛を追い出して、布団にくるまって寝ていたと思ったら、時雨が俺に密着していた。

『ふふっ、提督が風邪を引いて寝込んでるって聞いたからね。看病しに来たのさ』

「いや、何で看病しに来ておいて添い寝してんだ」

『だって、具合が悪くなると人肌が恋しくなったりしない?』

「ならん。むしろ風邪引いた原因が人肌求めたせいだから余計にな」

『まぁまぁ、そんな事言わずに。それよりも運動すれば身体も温まるんじゃない?』

 おい待て、このパターンはあれじゃないか?エロ本なんかでよくある運動(意味深)的なパターンの奴なんじゃ。時雨の奴も制服のボタン外し始めてるし。

「お、おい待て時雨。流石にそれは……」

『ふふふ、提督……勝負だよ!』

 ボタンを外した時雨がバサッと制服を勢いよく脱ぐと、その下から現れたのはレオタード。それも、新体操の選手が着てるような奴ではなく、女子プロレスラーが着てそうな奴だ。

「はっ?」

 意味が解らな過ぎて、一瞬目が点になる。時雨は部屋の隅まで走っていくと、助走を付けてこちらに駆け寄ってきてベッドの前でジャンプ!そのまま俺にフライングボディプレスを仕掛けてきた。

「うぐおっ!」

かなりの勢いでボディプレスされたせいで、変な声が出た。

『あっ!時雨、抜け駆けはズルいっぽい!』

『村雨、行っきま~す!』

『なのです!』

『Уρааааааа!』

『突撃するわ!』

 時雨のボディプレスが合図だったかのように、部屋のドアが開かれて次々と駆逐艦達が雪崩れ込んで来た。そしてベッドに飛び込んできて、ベッドの上はさながら押しくらまんじゅう状態だ。

「やっ、止めろバカ!静かに寝かしてくれ……うわあああああぁぁぁぁぁーーー……」




「はっ!?ゆ、夢か……ん?」

 熱に浮かされて変な夢を見てしまったらしい。と思ったら、ベッドの上には俺に寄り添うように丸くなって寝ている駆逐艦の姿が。それも複数。

「おい……何してんだお前ら」

「ふぇ……はわわわ、司令官を起こしちゃったのです!?」

 最初に起きて慌て出したのは電。その顔は今にも泣き出しそうで、今誰か部屋に来られたら物凄く気まずい。

「怒ってないから、泣くな。な?んで、何でベッドの上で押しくらまんじゅう状態になってるかを答えてくれ」

「は、はい……実は」

 電の話によると、俺が寝込んでいると聞き付けた時雨の奴が『人肌で温めてあげよう』と言い出し、俺の寝ている部屋に突撃。それを止めようと他の駆逐艦娘達も部屋に突入……したはいいものの、時雨が幸せそうにスヤスヤと添い寝をしている姿を見ていたら羨ましくなったらしい。そして次々と欲望に屈して、俺の周りが駆逐艦だらけの押しくらまんじゅう状態が出来上がったらしい。

「司令官さんはぐっすり寝てたのに……起こしてごめんなさいなのです」

「いやまぁ、良くはねぇが……怒ってないから安心しろ」

 万が一風邪が移ってダウンされても困るしな。

「しかし……その元凶の時雨が見当たらんが」

 俺の呟きが聞こえたのか、布団の中で何かがビクリと震えた。

「……まさか」

 布団を捲ると、俺のズボンに手を掛けようとして固まっている時雨とバッチリ目が合った。

「えへ、お……お邪魔してま~す」

「弁明の余地無し。連行」

「「「「イエッサー」」」」

 複数の駆逐艦達に拘束され、抵抗しながらも連行されていく時雨。ズルズルと引き摺られながら『出来心だったんだ』とか『魔が差しただけなんだ』とか『夕立だけずるい』だの叫んでいた気がするが、熱に浮かされて幻聴が聞こえたのだろう。まだ夕飯には早いだろうし……もう少し寝よう。




「腹が……減った」

 唐突にゴローちゃんみたいな台詞を吐いて起きてしまったが、事実腹の虫が喧しく鳴いている。窓の外を見ると既に星空……駆逐艦達に起こされてから4時間位は寝ていたらしい。朝と昼の中間位の時間にお粥を食って以来腹に何も入れていない。食欲が出てきた事を考えれば身体も治そうと必死なようだ。

「熱も下がってきたようだし……気だるさも無くなってきたな」

 いやはや、頑丈な我が身に感謝だな。しかし……流石に病み上がりに自炊はしたくないが、この空腹には替え難い。さてどうしたものか……と思案していると、

「提督、起きてらっしゃいますか?」

 ノックの音と共にドアの外から声が掛かる。この声は……大和か。

「あぁ、起きてるぞ……というか、腹が減って起きた所だ」

「あら、それならグッドタイミングでしたね。ちょうど今お夕食とお薬をお持ちした所です♪」

「ありがてぇ……早速入ってくれ」

「ふふっ、失礼しますね」

 そう言って入ってきた大和の手には、お盆が載せられており、その上には湯気の立つ丼が乗っていた。

「消化の良い物を、と思いまして。特製の『梅ワカメうどん』です!」

「おおぉ、美味そうじゃないか……で、七味は?」

「えっ」

「うどんには七味だろ、常識的に考えて」

 何を隠そう、俺は辛い物好きでな。丼物や蕎麦、うどんを食う時には七味をこれでもかとかけて食うのが好きなんだ。しかしそれが見当たらない。

「ダメですよ提督、具合が悪い時には刺激物は避けるべきです」

「いや、しかし」

「ダ・メ・で・す」

「アッハイ」

 病人に人権は無いに等しい。ここは大人しく従って、早い所治すべきだろうな……ウン。決して凄んだ大和の後ろに般若が見えたりはしていない。最近金剛以外の嫁達の積極性がヤバイ。しかしまぁ、七味が無くともこのうどんは美味い。具もワカメにネギ、練り梅と俺の体調を気遣っての物だと伝わって来るしな。腹が減っていたのもあって、一気に完食してしまった。

「もぅ、少しゆっくりと食べて内臓を労って下さいよ?」

「仕方無いだろ……それぐらい美味かったんだ」

 俺がそう言うと、大和は顔を真っ赤にして照れていた。

《大和特製・簡単梅ワカメうどんのレシピ》※分量1人前

・冷凍うどん:1玉

・めんつゆ(2倍濃縮):100cc

・水:200cc

・長ネギ:1/4本

・乾燥ワカメ:大さじ1

・練り梅:小さじ1


 鍋にめんつゆと水を入れて火にかけ、長ネギを2mm幅の斜め切りにして鍋に入れる。汁が沸騰したら冷凍うどんを入れて、1分程煮る。この時、触りすぎるとうどんが切れてしまうので触らずに煮て、1分経ったらほぐす。

 丼に乾燥ワカメを入れて、うどんと汁を一緒に入れてザッと全体をかき混ぜる。仕上げに練り梅を載せれば完成。



 

「そう言えば、真っ先に飯を持って飛んで来そうな金剛が来てねぇな?」

「あ~……金剛さんは、『精力付けて、早く治すデース!』って言って、ウナギのゼリー寄せを作って持ってこようとしたのを、妹さん達に止められてました」

 と苦笑いで返された。比叡、榛名、霧島……GJだ。俺は心の中で称賛を贈り、明石から処方された薬を飲んで再び床に着いた。 
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