真田十勇士
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巻ノ百十二 熊本その九
誰もそれに気付かなかった、それには訳があった。
家康は駿府でだ、苦々しい顔で幕臣達にこう言っていた。
「半蔵に調べさせておるがな」
「調べれば、ですか」
「調べる程ですか」
「嫌な感じがしてきたわ」
こう言うのだった。
「いよいよな」
「だからですか」
「調べさせる伊賀者を増やしていますか」
「そうされているのですな」
「そうじゃ、しかもな」
家康はさらに言った。
「半蔵も十二神将もこのままじゃ」
「伊賀者達をそこまで向けて」
「そうしてでもですか」
「ことの次第を確かめたい」
「そうした事態ですか」
「並の陰謀ならここまでせぬ」
家康にしてもというのだ。
「話が別じゃ」
「伴天連が関わっておりますると」
崇伝がここで言った。
「やはり」
「お主は特に思うな」
「拙僧が仏門におることもあるでしょうが」
「しかしお主も仏門の他の宗派には何も言わぬな」
「危ういものではないので」
「本願寺もじゃな」
かつて近畿や東海、北陸で一揆を起こし家康を苦しめた彼等にしてもというのだ。徳川家の故郷である三河でも本願寺の一揆である一向一揆が起こっているのだ。
「それでもじゃな」
「はい、本願寺にしてもです」
崇電は毅然として家康に答えた。
「今は大人しく暴れていた時ですら」
「伴天連よりはずっとじゃな」
「ましです、本朝を乗っ取るだの他の宗門や神道の神社仏閣を壊し民を奴婢にするなぞ」
「せんかったな」
「しかもその腐り様たるや」
伝え聞くそれもというのだ。
「比叡山も腰を抜かすまで」
「それはわしも聞いたが」
「恐ろしいことですな」
「冥府魔道じゃ」
南蛮の伴天連の者達の腐り様はというのだ。
「あそこまでの腐り方はな」
「だからです」
「あの者達は本朝に入れられぬし」
「大久保殿が関わっていれば」
「存分に調べ上げておる」
「そしてですな」
「何もなければよいが」
それでもというのだ。
「伴天連が関わりあの者達がいれば」
「その時は」
「素直に国に帰ればよし」
彼等の南蛮の国にというのだ。
「それでな、しかしな」
「それでもですな」
「若し歯向かうならば」
「その時は」
「半蔵達に戦えと命じておる」
調べさせている彼等にというのだ。
「あの者達の全力でな」
「何と、十二神将達にもですか」
「そう言われたのですか」
「服部殿だけでなく」
「あの者達にも」
「半蔵と十二神将は天下一の忍達じゃ」
家康は自負と共に言った。
「あの者達に対することが出来るのは真田家の十勇士か風魔小太郎、雑賀孫市位であるが」
「風魔、雑賀はもう死んだそうですし」
「十勇士は九度山に主の真田殿と共に流されております」
「しかもこの度のことも関わる筈もない」
「それならばですな」
「特にじゃ」
これといってというのだ。
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