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真田十勇士

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巻ノ百十二 熊本その八

「そしてじゃ」
「はい、加藤殿にですな」
「お会いして」
「万が一のことに備える」
「そうしていきますな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「今はな、しかしな」
「出来ればですな」
「そうしたことにはなって欲しくないですな」
「戦になりそうなることは」
「どうしても」
「そう思う、ことが穏やかで禍根なくいけば」
 それでというのだ。
「それに越したことはない」
「ですな、戦になるよりです」
「穏やかに話で済めばいいですな」
「聞いたところ右大臣様と大御所殿のご会食は穏やかで」
「意気投合したところもあったそうですが」
「右大臣様が大坂のまことの主であればな」
 秀頼、彼がというのだ。
「それで話が終わったが」
「しかしそうではない」
「どうしてもですな」
「大坂については」
「主が違う故に」
「あの茶々殿ではな」
 真の主が彼女だからだというのだ。
「厄介なのじゃ」
「ですな、もうあの方については何度もお話しましたが」
「まことに厄介ですな」
「まるで火薬ですな」
「そうし方ですな」
「そうじゃ、大坂は天守にこれでもかと火薬を詰め込んでおる」
 幸村は今の大坂をこう例えた。
「だから下手をすればな」
「城を吹き飛ばしてしまう」
「その火薬で」
「そうなりますな」
「いざという時に」
「それがまずい、そしてな」
 それにというのだ。
「拙者が思うにな」
「ここはですな」
「熊本に赴き」
「そうして手を打っていく」
「いざという時に備えて」
「常に最悪の手を考えてな」 
 そのうえでというのだ。
「手を打っておくものじゃ」
「戦はですな」
「そして政も」
「そうして生き残ることですな」
「それが真田家ですな」
「真田家は滅びの道を選ぶ家ではない」
 いざという時に潔く、というのだ。
「恥や埃は忘れぬがな」
「それでもですな」
「生き残る」
「潔く散るのではなく」
「そうしていく家ですな」
「武士であるがじゃ」
 しかしというのだ。
「忍でもあるな」
「はい、時として潜む」
「忍に徹する」
「そうした家ですな」
「生き残る為に」
「生きていればまた戦えるし雪辱も注げる」
 こうした考えだというのだ、真田家は。
「だからな」
「それで、ですな」
「最悪の場合も考えて」
「そうして手を打ち」
「生き残るのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その場合にあえて備える」
「その為にですな」
「今はですな」
「熊本に行く」
 こう言ってだ、幸村は十勇士達を連れてそのうえで熊本城に向かった。主従十一人全員でそうしたが。 
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