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緋弾のアリア ~とある武偵の活動録~

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prelude
  ~Secret-Hysteria savant Sindroam of the certain friend~

 
前書き
キンジの回想から始まりますっ

さっさと本編に入りたい........ 

 
「へ……へ……」

「-?」

「ヘンタイ-!」

突然聞こえてきたのは、アニメ声というかなんというか、この声だけでもファンがつきそうな、おいお前その顔その姿でその声は反則じゃないか?ってくらいのちょっと鼻にかかった声だった。

「さっ、さささっ、サイッテー !!!」

どうやら意識を取り戻したらしいアリアさんは、ギギン!と俺を睨んで、バッ!とブラウスを下ろすと-

ぱかぽこ ぱかぽこ ぱかぽこ!

腕が曲がったままで、力の籠っていないハンマーパンチを、俺の頭に落とし始めた。

「おっ、おい、やっ 、やめろ!」

「このチカン!恩知らず!人でなし!」

ぱかぽこぱかぽこぱかぽこぱかぽこ!

どうやらアリアは、自分のブラウスを俺がめくり上げたと勘違いしているらしい。

「ち、違う!こ、これは、俺が、やったんじゃ、な-!」

そこまで、殴られつつの俺が言ったとき。


-ガガガガガガガガガガガンッ!!


突然の轟音が体育倉庫を襲った。
-なんだ!?
今、跳び箱にも何発か、背中の側に激しい衝撃があった。まるで、銃撃されているような-!

「うっ!まだいたのね!」

アリアはその紅い瞳で跳び箱の外を睨むと、バッ!、とスカートの中から拳銃を出した。

「『いた』って何がだ!」

「あの変な二輪!『武偵殺し』のオモチャのことよ!」

『武偵殺し』? 変な二輪? -さっきのセグウェイのことか! じゃあ今のは、まるで、 じゃなくて本当に銃撃だったのか!

体育の授業でも拳銃を使う武偵高では、 跳び箱も防弾性だ。そこはラッキーだった。
だが-こんな箱に追い詰められた状態から、どうすればいいんだ?
分からない、何もできない。今の俺では。

「あんたも-ほら!戦いなさいよ!仮にも武偵高の生徒でしょ! 」

「むッ、ムリだって!どうすりゃいいんだよ!」

「これじゃあ火力負けする!向こうは7台いるわ!」

7台……短機関銃(サブマシンガン)が7丁もこっちに向けられているっていうのか!?

「-!」

その時だった。予想外の事が起きた。銃を撃つため前のめりになってきたアリアが-
その胸を、俺の顔に思いっきり押しつけてきたのだ。

ババッ! バババッ!

跳び箱の隙間から応射するアリアは射撃に集中しているらしく、自分の胸が俺の顔に密着してることに気付いていない。

ああ。 ああ-これは、アウトだ。なぜなら-あったから。無いように見えたが、いや、実際ほとんど無いのだが、 そこは女子の胸。
こんなに小さいのに、ちゃんと柔らかいふくらみが、あった。

いま俺の顔面には、夢のように柔らかい、水まんじゅうみたいなカワイイものが押し当てられている。
-アリアの胸に抱かれるようになりながら、 俺は……

『あの感覚』を感じていた。

体の芯が熱く、硬く、むくむくと大きくなっていくような-言いようのない感覚。

ドクン、ドクン-!

火傷しそうに熱くなった血液が、体の中央に集まっていく。 なってしまう。 なっていく。

-ああ。 なってしまった。 ヒステリアモード、に……!


ズガガガッ!ガキンッ!


弾切れの音を派手に上げたアリアが、身をかがめて拳銃に弾倉(マガジン)を差し替える。

「-やったか」

「射程圏外に追い払っただけよ。ヤツら、並木の向こうに隠れたけど……きっとすぐまた出てくるわ」

「強い子だ。それでも上出来だよ」

「........は?」

いきなり口調がクールになった俺に、アリアが眉を寄せる。 ああ、やっちまうのか-また。
その逡巡は、ほんの一瞬で。

俺はアリアの細い足と、すっぽり腕に収まってしまう小柄な背中に手を回し、すっくと立ち上がってしまっていた。

「きゃっ!?」

「ご褒美に、ちょっとの間だけ-お姫様にしてあげよう」

いきなりお姫様抱っこされたアリアが、ぼんっ。
ネコっぽい犬歯の口を驚きに開いて、真っ赤になった。

俺はアリアを抱いたまま跳び箱の縁に足をかけ、バッ、
と倉庫の端まで一足で飛ぶ。そして、積み上げられたマットの上に........ちょこん。

「な、なな、なに…!?」

さっきまでの俺とは一変してしまった俊敏な動きにアリアは目をぱちぱちさせている。

「姫はそのお席でごゆっくり、な。銃なんかを振り回すのは俺だけでいいだろう?」

ああ、俺よ。もう、自分を止められないらしいな。

「あ........アンタ........どうしたのよ!?おかしくなっちゃったの!?」

慌てまくったアニメ声に被せるようにして-

ズガガガガガガンッ!

再び、UZIが体育倉庫に銃弾を浴びせてきた。だが壁は防弾壁だし、ここはヤツらから見て死角になっている。
撃つだけ弾の無駄だ。
そして........ヤツらの射撃線が交錯する、ドアの方へと歩いていった。

「あ、危ない!撃たれるわ!」

「アリアが撃たれるよりずっといいさ」

「だ、だ、だから!さっきからなに急にキャラ変えてるの!何をするの!」

「アリアを、守る」

マットシルバーのベレッタM92Fを抜いて、ドアの外に身を晒した。
グラウンドに並んだ7台のセグウェイが、一斉にUZIを撃ってくる。

その弾は-全て、当たらない。当たるわけがない。視えるからだ。
今俺の目には、銃弾がまるでスローモーションのように、全部視えてしまうのだ。
いい狙いだ。全て、俺の頭部に照準を合わせてるな。
俺はその一斉射撃を-上体を後ろに大きく反らして、やり過ごしてやった。そしてその姿勢のまま 、左から右へ、腕を横に凪ぎながらフルオートで応射する。
見なくても、放った全ての銃弾の行き先が分かる。

使った弾丸は、7発-

その全てが、UZIの銃口に飛び込んでいくのも、分かる-!

ズガガガガガガガンッ!

折り重なるようにして倒れたセグウェイたちが全て沈黙しているのを確かめると、体育倉庫に戻った。

中ではアリアが、なぜだか跳び箱に入り直していた。
跳び箱から上半身を出した状態で、『今、私の目の前でなにが起きたの?』という顔をしている。
そして俺と目が合うと、ぎろ! と睨み目になって、跳び箱の中に引っ込んでいった。

........何だ。
何でか、怒っているようだ。

「-お、恩になんか着ないわよ。あんなオモチャぐらい、あたし1人でも何とかできた。これは本当よ。本当の本当」

強がりながら、ゴソゴソ。何やら跳び箱の中でうごめく。 どうやら服の乱れを直しているらしい。
だが........それは少し難しいだろう。さっきお姫様抱っこしたときに見てしまったのだが、アリアのスカートはさっきの爆風のせいか、ホックが壊れてしまっていた。

「そ、それに、今のでさっきのをうやむやにしようったって、そうはいかないから!これは強制猥褻!れっきとした犯罪よ!」

「........アリア。それは悲しい誤解だ」

俺は-シュルッ……とズボンを留めるベルトを外して跳び箱に投げ入れてやった。

「あれは不可抗力ってやつだよ。理解してほしい」

「あ、あれが不可抗力ですって!? 」

跳び箱の中から、俺のベルトで留めたスカートを押さえつつヒラリと出てきた。
ふわっ。見るからに軽そうな体が、俺の正面に降り立つ。

え。
立ったのか?それで?というくらい、やはりアリアはちっこかった。ツインテールを留めているツノみたいな髪飾りで上乗せしても、145、ないだろう。

「ハ、ハッキリと……あんた……!」

ぶわああぁ。そして、わわ、わわ、わ。ローズピンクの唇を震わせてから、がいん! 床を踏みつけた。

「あ、あたしが気絶しているスキに、服を、ぬ、ぬぬ、脱がそうとしてたじゃないっ!」

そんなに恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。

「そ、そそ、それに、む、むむむ」

がいん! ……床に何の恨みがある?

「胸、見てたあああぁっ! これは事実!強猥の現行犯!」

さらに赤くなった。耳まで真っ赤だ。

「あんたいったい!なにする!つもりだったのよ!せ、せ、責任とりなさいよ! 」

がいん! がん! ががん!
新しいタイプの地団駄だな。それ。

「よしアリア、冷静に考えよう。いいか。俺は高校生。中学生を脱がしたりするワケがないだろう?
年が離れすぎだ。だから-安心していい 」

アリアは、わぁあー!という口になって絶句している。
そして-ぎぎん!という目になって俺を睨み付ける。

「あたしは中学生じゃない!! 」

-まずいな。 女というやつは実年齢より上に見られると怒る習性がある。このままだと、倉庫の床が砕ける。
フォローしておいたほうがいいだろう。

「……悪かったよ。インターンで入ってきた小学生だったんだな。そうかもとは思っていたよ。しかしすごいな、アリアちゃんは-」

アリアが顔を伏せた。そして、 ぱしっ、と左右太ももに手をついた。 今度はなんだ。忙しい子だな。

「こんなやつ……こんなやつ……助けるんじゃなかった! 」


ばぎゅぎゅん!


「うぉっ!」

足元に撃ち込まれた2発の銃弾に、俺は青ざめた。
この子、撃ってきたぞ!それも2丁拳銃で!

「あたしは高2だ!!」

「ま、待てっ! 」

さらに至近距離から銃を向けてきたアリアに-俺はむしろ飛びかかり、その腕を両脇に抱え込んで後ろに突き出させた。

ばりばりばりっ!がきんがきんっ!

アリアが反射的に引き金を引き、床が着弾した音を上げる。今の-音で分かる。2丁とも弾切れだ。
よかった。普段の俺だったら、今頃鉛弾を何発も喰らって床をのたうちまわっていただろう。

俺たちはそのまま、取っ組み合うような姿勢になった。

「-んっ-やぁ!」

くるっ。体をひねったかと思うと、対格差をものともせず俺を投げ飛ばした。

「うっ-!?」

辛うじて受け身を取ると、その勢いを殺さず-俺は体育倉庫から転がり出た。

「逃げられないわよ!あたしは逃走する犯人を逃がしたことは!1度も!ない! -あ、あれ?あれれ、あれ?」

叫びながら、わしゃわしゃとスカートの内側を手でまさぐった。 弾切れになった拳銃に再装填(リロード)する弾倉(マガジン)を探しているのだろう。

「ごめんよ」

さっき投げられた際にスカートからスリ取っておいた予備弾倉(スペアマガジン)を掲げ-あさっての方向に投げて見せる。

「-あ!」

アリアは無用の長物になった拳銃をブン!ブン!と振り回した。やったな!やったな!という動作らしい。

「もう、許さない! 膝まずいて泣いて謝っても、許さない!」

じゃきじゃき!

背中に隠し持っていた刀を、二刀流で抜いた。
銃、格闘技ときて、今度は刀か-!

-だんっ!アリアが人間離れした瞬発力で飛び掛かってきた。そしてその寸詰まりの日本刀を両肩めがけて流星みたいに突き出してくる。

ザザッ!

俺はなんとか、背後に転がってそれを避けた。

「強猥男は神妙に-っわぉきゃっ!?」

勢いよく俺の方に踏み出したアリアは見えない相手にバックドロップを喰らったように、真後ろにブッ倒れた。 その足元には、アリアの弾倉から抜いておいた銃弾がいくつも転がっている。
さっき、投げた弾倉に目を奪われた隙にバラ撒いておいたのだ。

「こ、このっ……みゃおきゃっ! 」

勢いよくコケている。マンガみたいだな。

この隙に俺は、一目散に逃げることにした。

「この卑怯者!でっかい風穴-あけてやるんだからぁ!」



-「って事があってな……」

「なるほど。だからアリアのヤツ、怒ってたのか… 確かにあの体型なら小学生と間違えてもおかしくはないな。
フフっ。」

「笑うな!」

「悪い悪ぃ」



「さて、着いたぞ」

-2年A組。ここが仲間と一年を共にするクラスだ。
ついでにキンジも一緒のクラス。楽しくなりそうだな。

ガラガラッ。

「スミマセン、遅れました…」

俺とキンジは、頭を下げながら教室に入る。

「あ、2人ともきたね。じゃあHR始めるから座ってー」

おっとりしたような声―担任は武偵高の良心こと、高天原ゆとり先生だ。

ガタガタッ。

「はい、2人とも 座ったから…HR始めましょう。まずは、去年の三学期に転校してきたかっわいい子から自己紹介してもらっちゃいますよー?」

転校してきたかっわいい子………誰だ…?

ガタッ、と机から立つ音がした。
そして先生が―

強襲科(アサルト)の神崎・H・アリアちゃんでーす!」

次の瞬間、隣からガタッ。という音がした。

「どうした、キンジ」

「いや、なんでもない。…シカクデミエンカッタ」

そして、いよいよアリアが口を開いた。

「先生。あたしはアイツ、とアイツの隣に座りたい」

と言って。俺、とキンジを指差してきた 。
…無理だろ。俺とキンジの隣に座るってことは、そこだけ横3列になるが。

「うーん……遠山君と如月君の間かぁ。別に、私は構わないけど……みんな、大丈夫?」

大丈夫じゃないだろ。

「Okay!」「大丈夫だ、問題ない」「いいと思います」

忘れてた。ここはバカの集まり、武偵高。
マトモな人間など、誰一人いるはずもなく。

「よ、良かったなお前ら!ようやく春が来たみたいだぞ!!」

「違う武藤、そんなんじゃない」

武藤剛気。車輌(ロジ)科のAランク。
特技は、乗り物と名の付くものなら何でも運転できる。

……もはやそれ、特技じゃないよな?

「あらあら、最近の女子高生は積極的ねぇ」

先生、何重に誤解しないでください。

するとアリアが、シュルッ……ぽいっ。

「キンジ、それさっきのベルト」

「呼び捨てかよ……」

「分かった!理子分かっちゃった!!これ、フラグばっきばきに立ってるよ!」

今度はお前か。
峰理子。探偵(インケスタ)科No1のバカキャラだ。

「キーくんベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた!これ、謎でしょ謎でしょ!?でも、理子には推理できた!出来ちゃった!」

コイツのことだ。ロクな推理の予感がしない。

「キーくんは彼女の前で、ベルトを取るような何らかの行為をした!そして彼女の部屋にベルトを忘れていった!つまり―2人は、あつーいあつーい恋愛の真っ最中なんだよ!キャーッ!」

……バカだ。まごうことなきバカだ。
どうしてそっち方向に話を飛躍させる?

「キンジがこんなカワイイ子といつの間に!?」

「影の薄いヤツだと思ってたのに……」

「女子どころか他人に興味が無さそうなのに!」

「フケツ!」


…武偵高の生徒は、一般科目(ノルマーレ)の他に専門科目を履修する。クラス、学年を越えて学ぶので顔見知り率は結構高い。のだが、息が合いすぎだろ。お前ら。

隣でキンジが頭を抱えた時、

―バギュギュン!!

音のした方向には顔を俯かせているアリア。その手には2丁拳銃のコルト・ガバメント。
そう、抜き様に撃ったのである。

「れ、恋愛なんて……くっだらない!」

―チン、チンッ……

空薬莢が落ちる音が、余計に静けさを際だたせる。
だが……まさか自己紹介で発砲とはな。

武偵高では、必要以上の発砲は控えられている。
つまり、してもいい。

「全員覚えておきなさい!今度からそういうこと言うヤツには―」

これが、神崎・H・アリアがクラスに発した最初の言葉である。

「―風穴開けるわよ!」


~Please to the next time!
 
 

 
後書き
またまたキンジの回想多め。スミマセンね。
少し長くなりました。
次回からはちょっとオリジナル要素いれる(かも)。

誤字脱字はコメントにて。感想、評価くれると私が喜びます。

それではノシ

 
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