とある3年4組の卑怯者
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55 社会科実習
前書き
たまにはみどりちゃんにも焦点を当てないと・・・。また「永沢君」からのキャラクターが堀さんだけではどうかと思ったので他のキャラも出すことにしました。
みどりのクラスでは社会の授業を行っていた。担任の賢島先生が社会科実習を行う事を皆に告げている所だった。
「今回から社会科実習を行っていただきます。課題は町にあるお店一軒を取材をしてそのポスターを作成するという内容です。それじゃあ、班分けをしよう」
賢島先生は黒板に班の割り振りを書きだす。
「堀さんと同じ班になれたらいいですね」
みどりは堀と一緒の班になることを祈った。
「でもわからないわ」
堀がみどりに言った。みどりは堀のおかげで以前のように泣く頻度は少なくなり、少しずつクラスメイトと馴染めるようにはなっていた。だが、堀なしでは未だ心細さが残っていた。
班分けが決まった。ところがみどりと堀は別々の班となってしまった。
「堀さんとは別の班ですか・・・。やっていけるんでしょうか?」
「大丈夫よ、ここで皆の力になれるよう努力すればきっとやっていけるわよ。吉川さんならできるわ。頑張って!」
「ありがとうございます。私、頑張ってみます!」
みどりは堀に応援されて感謝するとともに、決して泣いたりして皆に迷惑かけまいと決心した。
(そうだった。今まで堀さんのサポートがあって友達が増えたけど、いつまでも堀さんに頼られっぱなしではいけない・・・。頑張らなければ!)
みどりは決心した。
クラスは班ごとで話し合えるように机をテーブルのように向かい合わせ、班ごとに集まった。みどりの班は彼女の他、麦田愛花、茅原典男、倉山洋、そして平井やすあきの五人組となった。
(ひ、平井さんと・・・!?)
みどりは平井と同じ班になってやや恐怖心を覚えた。平井は乱暴な所があり、不良と言ってもおかしくないくらいだった。みどりは平井にビクビクしていた。
「それじゃあ、班長を決めてくれ」
賢島先生が皆に呼び掛けた。倉山がどうするか相談に出る。
「誰がやろうか?」
「誰でもイイぜェ!!」
平井が素っ気なく言った。
「じゃあ、じゃんけんで決めるか!」
茅原が提案した。反対意見はなかったのでじゃんけんで決めることにした。
じゃんけんの結果、平井が班長になった。
「俺かァ、メンドくせェ!!ンじゃァ、どの店がイイか、何かアるかァ!?」
平井が皆に聞いた。
「う~ん、迷うわね・・・」
麦田が首を傾げながら言った。
(私も何か言わないと・・・!!)
みどりは自分も何か言わないとと思った。しかし、平井がすぐ口を開く。
「ンじゃァよォ、俺が好きで行くラーメン屋はどウだイ?そこのラーメンすげエうめエンだ!!」
「へえ、ラーメン屋か、平井君も意外なことを思いつくね!」
茅原が平井の提案に感想を言った。
「どこが以外だァ!?」
「いや、なんでもないさ・・・」
こうして平井の提案でみどりの班は平井のお気に入りのラーメン屋に決定した。
(私は何も言えずに進んでしまっている・・・。これじゃあ、今までと変わらない・・・)
みどりは自分が何も出来なくて自分が情けなく感じた。課題として質問を5つ考えることが出された。
「質問かァ。オイ、誰か質問考えてくンねェかァ?」
平井が聞く。その時、みどりが頭で何かを閃いたようだった。
(そうだ、ここで質問を私が・・・)
「あ、あの、すみません・・・」
皆がみどりの方を向いた。
「ンだァ、吉川?」
「その質問を作るの・・・、私がやってもよろしいでしょうか?」
みどりは恥ずかしがりながら聞いた。
「アア、イイけどよォ、オメェ、ちゃんと作れよォ!!忘れたら承知しねェからな!!」
平井は高圧的にみどりに言った。
「は、はい、わかりました・・・」
みどりはややビクビクして返答した。
「ンじゃァ、ラーメン屋には電話で俺が聞いとっからよォ、誰か記録してくれる奴イネエか!?」
平井は聞いた。
「僕がやるよ」
茅原が答えた。
「ンじゃァ、写真も必要だよなァ、倉山、オメェ、やれるか?」
「わかった。カメラは父さんのを借りるよ」
「よォし、じゃァ、麦田はポスターの構成を考エてくれよォ」
「いいわよ」
こうして役割分担が終了した。
みどりは下校中、平井の言葉が何度も頭の中で響き渡っていた。
《オメェ、ちゃんと作れよォ!!忘れたら承知しねェからな!!》
(もしちゃんと質問を作れなかったら平井さんに怒られる・・・。皆に迷惑かけてしまう・・・。自分から積極的にやるって言ったのに・・・)
校門を出たところ、後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。
「吉川!!」
「吉川さん!!」
麦田と茅原、倉山がみどりを追いかけながら来た。
「皆さん、どうしたんですか?」
「はあ、はあ、お前、質問一人で考えるつもりかい?」
倉山が聞いた。
「はい、私の仕事ですから・・・」
「でも一人で考えるのには荷が重いんじゃないの?」
麦田が心配そうに聞いた。
「は、はい・・・」
「僕達も君の質問づくりに協力するよ。だから一人で抱え込むなよ!」
「え、いいんですか?私のために・・・。でも他の皆さんも自分の役割があって忙しいんじゃないんですか?」
「そんなことないぜ!俺は当日にカメラを持って取るだけだからそれまで他の役割を手伝うよ!」
「僕もノートの用意はすぐできるからさ。それ以外ヒマになっちまうから、それまで君の手伝いをするよ!」
「あ、ありがとうございます!」
みどりは自分に協力してくれる皆に感謝した。
「それじゃあ、後で吉川の家に行こう!」
倉山が皆に呼び掛けた。
「ごめんね、倉山君、私今日ピアノのお稽古があって行けないの」
「わかった。じゃあ、俺と茅原と吉川で考えるか」
「そうだな」
「はい!」
こうしてピアノの稽古がある麦田は急ぎ足で帰り、倉山と茅原とみどりは後でみどりの家に集合する約束をした。帰宅途中、みどりが倉山と茅原に聞いた。
「あの、どうして私の事を心配してくれたのですか?」
「それは、お前が平井にあんなこと言われて動揺していたように見えたからだよ」
倉山が答えた。
「わかっていたんですか・・・。でも今までは私は皆から相手にされませんでしたし、迷惑かけるばかりで、どうしてこんな私に・・・」
「何言ってんだ、君は堀が来てから変わったじゃないか」
「・・・え?」
「みんなと遊ぶようになったし、小さいことで泣くことも少なくなってるぜ!」
「あ、ありがとうございます・・・!」
茅原の言う事は間違ってはいなかった。確かにみどりは堀のお陰で休み時間クラスメイトと遊ぶようになったし、今まで独りで登下校していたが、友達とするようになり、男女問わずクラスメイトの輪の中に入って行けるようになっていた。
「もし、平井に何か言われたら俺達がフォローするから安心しろよ!」
「は、はい、ありがとうございます!私、皆のご迷惑にならないように頑張ります!!」
みどりは班の皆に全力で貢献すると己に誓った。こうしてその後、三人はみどりの家に集まり、質問内容を考え合うのであった。
後書き
次回:「中華麺屋」
社会科実習を進めるみどりの班。そして平井の行きつけのラーメン屋へ取材を行う当日となり、みどり達は取材の地へと訪れる・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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