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ドリトル先生と春の花達

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第六幕その三

「それでもね」
「憂いてる時多いね」
「うん、仏教の無常感が強い作品だからね」 
 先生は皆にどうして源氏の君がそうしたお考えなのかとお話しました。
「だからだよ」
「憂うことが多いんだ」
「凄く華やかであっても」
「それでもなのね」
「そうだよ、あの人はね」
 本当にというのです。
「栄華の中でも憂いを感じているんだ、そしてね」
「それがまたなのね」
「作品の魅力なのね」
「そして源氏の君の魅力でもある」
「そうなのね」
「そうだよ、これまた日本人独特の考えで」
 昔からのというのです。
「所詮栄華は一時のものでね」
「必ず終わる」
「そして後には無常がある」
「世の中はそうしたものね」
「そうしたおお考えなのね」
「そうだよ。あの考えがね」
 まさにというのです。
「栄華を絶対と考えずそこから身を慎むんだ」
「ううん、その考えが凄いね」
「どんな富も権勢も絶対ではない」
「もうそのことをわかっていて」
「驕らずにだね」
「身を慎んでいるんだね」
「平家物語もそうだしね」
 軍記もののこちらの作品もです。
「無常感があって富も権勢も絶対じゃない」
「そう考えてだね」
「いつも身を慎んでいる」
「それが日本人だね」
「うん、奇麗な海を観ていても」
 春の須磨の海はとても青く澄んでいます、まだ淡い青空の下に優しいコバルトブルーの海は静かに流れています。
 その銀の輝きも含んだ青い海を白い砂浜から見てです、先生はこうも言いました。
「それも時を経て変わるしね」
「夏は夏の海」
「そして秋も冬も違う」
「時と共に変わっていって」
「別のものみたいにもなるんだ」
「そうしたこともわかっているんだ」
 日本人はというのです。
「その深さがとても奇麗だね」
「そうだね、じゃあその奇麗さをね」
「先生は日笠さんと味わってね」
「僕達はトミーや王子と一緒にいるから」
「海を観ているよ」
「どうして一緒にいないのかな」
 先生はこのことがわからず皆に首を傾げさせて聞きました。
「一体」
「いや、それはね」
「今は言わないからね」
「先生達で宜しくね」
「お二人でね」
「よくわからないけれどそうさせてもらうよ」
 皆の考えがというのです。
「日笠さんとね」
「うん、是非ね」
「そうしてね」
「まあ一緒にいればそれだけで違うから」
「別々にいるよりずっといいから」
「頑張ってね」
「何を頑張るかはわらないけれど」
 それでもというのです。
「じゃあね」
「そういうことでね」
「日笠さんとお二人でね」
「楽しい時間を過ごしてね」
「そうさせえもらうよ」
 こうお話してでした、そのうえで。 
 王子達の方から別の場所に行って先生と日笠さんだけとなりました。すると日笠さんは先生に言ってきました。 
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