衛宮士郎の新たなる道
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第9話 偽りの生命に断罪を
前書き
何も動く組織が公式・非公式に拘わらず、大きな或いは重要な組織だけとは限りません。
何日前か何か月前か何十年前か、それともつい最近か。
此処は平和な世界、多くの者が一夜に息絶えることが無い太平の世。
そんな世界のある地域の幾つかの場所に、怨念じみた“何か”が呻いていた。
『・・・・・・・・らない』
『・・・・・・足らない』
『・・・・い足らない』
『・・・・し足らな・・』
『・・・・し足らな・・』
その中でも強く強く呻いているモノを掴んでいる者がいた。
「・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・足らない・・・・・・足らない・・・・・・足らない・・・・・・足らない・・・・・・足らない・・・・・・足らない・・・・・・り足らない・・・・・・り足らない・・・・・・り足らない・・・・・・り足らない・・・・・・り足らない』
その者が“それ”を手に入れられたのは偶然だ。だが、
「これは使える」
「人間とは欲深き者、常に不平不満を抱えている」
「されど中には不満な現状を改善するために努力する者達もいると言う」
「ならば私もそれに倣おう。自分の不遇な現状を改善するために細工しよう」
その者は掴んでいる“それ”に“何か”を押し入れ、もう片方の手で近隣で呻いている残滓を引き寄せる様に集める。
事を終えたその者は、両手を俯瞰しながら呟く。
「私にこの様な機能を与えた者達よ、何時の日か存分に後悔すると言い」
-Interlude-
一子対義経の決闘が終わってから時間も時間と言う事で、ギャラリー連中は皆帰り支度に戻って行き、肝心の2人の片方である一子は落ち込んでいた。
「悔しいー悔しいよ・・・」
「確かに負けたけど、凄かったじゃないか犬!」
「うんうん、一月前とは別人の動きや薙刀捌きに見えたよ?」
「そ、そりゃーね?師匠の修業に耐えてれば・・・い、嫌・・・でも・・・・・・・・・・・・・・・」
「ワンコ?」
「犬?」
突如言葉が途切れた一子を訝しむクリスと京。
如何したのかと顔を覗き込むと、そこには顔を蒼白させている一子の顔があった。
「如何した犬!?」
「顔が真っ青だよ!?」
「だ、大丈・・・夫・・・あ、あああああたしはへーきよよよよよよよよよよ」
友人の気遣いに心配しないでと言うも、さらには体を震わせながら目から涙を滂沱し続ける。
これは尋常では無いと言う事で、一子から理由を聞く。
勿論一子の恐れているのはアルバと名乗るスカサハからの制裁だ。
日々の修業が過酷そのものなのだから、そのスパルタ師匠からの罰とは如何程のモノなのかと想像するのも恐ろしいらしい。
「自分達も共に行って謝ってやるから泣き止め」
「うんうん」
「うー、アリガト2人共。持つべきものは仲間よね」
涙をぬぐって感謝する一子。
彼女たちが友情を育んでいる一方、義経はシーマに感想を聞いていた。
「ヨシツネは動きに直線的過ぎるところがあり過ぎるようだが、最後の武器を投擲してカズコの態勢を崩してからの肉弾戦は良かったと思うぞ?」
「あ、ありがとう!」
「確かに私もそれには驚いた。義経ってば、あんな戦い方した事ないよね」
「ア、アレは昨日のシーマ君の戦い方を見て、良い戦法だなと思ったからしてみたんだ」
その言葉を聞いて弁慶は妙に納得していた。
「だから今朝の鍛錬じゃ肉弾戦主体だったんだ。やっぱりシーマに憧」
「わぁああ!わぁああ!わぁああああ!!」
恥ずかしそうにまたも弁慶お言葉を遮る。
それを何故弁慶の言葉を事ある事に遮ろうとしているのか、理解できないシーマがキョトンとしていた。
「?」
「シーマだって困惑してるし、そこまで恥ずかしがらなくても・・・」
「恥ずかしがってない!」
「やれやれ・・・・・・あれ大和、さっきから喋ってないけど如何したの?」
「口を挿む暇が無かった。まあ、特別言いたい事があった訳じゃないけど、昨日の戦い見てまだ疑う様じゃないが、シーマってそんなに凄いのか?」
「少なくとも私達よりは強いよね、義経?」
「勿論だ!義経なんてシーマ君に比べれば、足元にも及ばないぞ?」
自然と二組と別れ、談笑しながら校門に向かうと、そこには丁度紋白とレオの2人に別れを告げている1-S生徒達と出くわした。
「またねレオクーン!」
「また明日でありんす!」
「グッバイ、マイフレェエエエンンンドッ!」
「いいえ、夢の世界で会いましょう!」
2人がそれぞれ仲良くなったクラスメイトと別れの挨拶を終えた所で、義経達やシーマ達が近寄った。
「流石だなレオ。もうクラスメイトの心を掌握したか」
「人聞きの悪い事を言うのはやめて下さい。一部、否定はしませんが」
「そこで全否定しないのが、お主の長所であり短所でもあるな。主も苦労するなリザよ」
「いやいや、だからこそレオ様の護衛は退屈しないんだぜ?ん?ソイツは・・・?」
そこでシーマの後ろについて来た大和に気付く。
「ヤマトだ。お主ら猟犬部隊の至宝、クリスの友人の」
「直江大和です。リザさんのお話はクリスからある程度聞いていますが、改めて宜しくお願いします」
「ん、俺もクリスお嬢様のご友人の報告書で見た事あるぜ。今後ともよろしくなと言いたいところだが」
「?」
「如何やら俺のフェロモンに当てられて、とある部分が大きくなってる様だぞ?」
「な、何の事だか!?」
焦る大和。ズバリ図星だからだ。だが一応大和は紳士だ、の筈だ。公でも失態などは人脈構成上ダメージとなる事を理解しているので、意地でも無理矢理抑え込んだ。
だがそれすらも見破られたのか、楽しそうに言って来る。
「うんうん男の子だねぇ♪だが俺に惚れても無駄だぜ?俺の愛は士郎に全て向けてるからな!今日だって一緒に寝たんだぞ?」
「えっ!?」
「たんにシロウの布団に潜り込んで抱き付いて寝てるだけであろう?」
「ソッコーでバラさないでくれよ!」
その光景が容易に想像できた大和。何を隠そう大和も京によくされているからだ、
そう、少々談笑を楽しんでいるから義経が自分の友人を紋白に紹介すると言う話になった。
何人か紹介してから最後にシーマだ。
「彼はシーマ君!って、もう知ってるよな?」
「うむ。昨日の川神百代との戦いでな。それにしてもお主は、その・・・」
何か言いたそうでやはり言えないような顔をしている紋白。
それに直に察することが出来たシーマ。
恐らくつい最近まで解決しなかった九鬼財閥と藤村組の確執についてなのだろう。
原因は自分たち九鬼にあるとはいえ、それで敬愛してやまない兄や姉、父と母、それに財閥自体が大変だったことも事実だ。よく言う所の感情と理屈は別と言う奴だろう。抗議したくても立場上言えないでもどかしい様だ。
そしてそんな相手に自分からこれから宜しくとは言いにくいとも。
だからシーマは、
「これからよろしく頼む。モンシロと呼んでいいか?」
「う、うむ勿論だ。よろしく頼む・・・!」
「「「「「「「??」」」」」」」
2人の態度の訝しむ周囲。
理解或いは察することが出来たのはクラウディオとレオだけだ。
レオは自分が関知すべき問題では無いと様子見に徹し、クラウディオはお気遣い感謝しますと紋白に気付かれない様にシーマに目礼し、同じくシーマも紋白に気付かれぬ様に気にするなとクラウディオに目礼で返す。
それにしてもと、
「如何して義経は先にシーマを紹介した時に顔を赤くしておったのだ?」
「え!?」
「ああ、それなら義経がシーマに憧」
「違う違う、違う!!」
「そんなに焦らなくても・・・」
「焦って無い!」
源氏主従のやり取りを既に察している者達はその光景を微笑ましく傍観し、その手の話に疎い者と鈍い者と気づいていない者は理解できていない様子で、そして今や身内同然の2人がシーマを揶揄う。
「おいおいシーマ、随分お安くないじゃないか?」
「そうですね。シーマさんがまさか士郎さんの同類だとは思いませんでした」
「何の話か分からないが、同類扱いは訂正してもらおうか」
「それって“俺の士郎”を非難してるのか?」
「そう受け取ってもらっっても吝かではないが、何さらっと愛人だと公表しているんだ?」
「恋人と言ってくれ」
「否定する気が無いとは呆れ果てる」
「どちらにしても矢張り士郎さんの同類ですよね、シーマさんは」
「だから同類扱いは止してくれ」
結局シーマに対する義経の対応の話は有耶無耶のまま、解散する事になった。九鬼組はクラウディオの運転する車で帰宅し、風間ファミリーメンバーの4人+遅れて来た黛由紀恵で別方向に校門前を後にし、シーマ達は士郎を待つと言う事で残っている。
それにしても、
「・・・・・・・・・・・・」
「如何かしましたか?」
「・・・怪しまれたくないから周囲への警戒度をそのままにして聞いてくれると助かる」
「はい・・・それで?」
「ヨシツネへの挑戦者達との決闘での審判役を務めていた時から今も直ほぼずっと、第一校舎の屋上から見られている様だ」
何故とは聞かずに、
「誰に?」
「ナスノヨイチであろうな。警戒される素振りや嫌悪感を向けられる事はしていない筈だが」
「那須与一は重度の中二病だってマルから聞いてるけど、その関係じゃないか?」
「であれば良いのだがな・・・・・・」
それから士郎に買って貰った携帯電話を取り出して、ある者に連絡後、別の話題に切り替わってから少ししたところで、
「・・・・・・2人共、暫く学園敷地内に入っていろ」
シーマが突然神妙な顔となって忠告して来た。
2人にはシーマの言葉に従う義務など無いが、ここ数日で理不尽な性格では無いと理解しているので、疑問は持ちつつも素直に従う事にした。
「すぐ戻る」
直後にその場から一瞬にして消えていた。
-Interlude-
シーマが校門前から居なくなる少し前、九鬼組は車の中で談笑していた。
それをバックミラー越しで運転中のクラウディオが微笑ましく見守っている。
そんな時に周囲の道に人気の少なさに気付いたクラウディオが怪訝な顔をする。
(これは・・・おかしいですね)
そこへ、少し先の十字路の両角から黒い和服で統一された者達が現れて、道路を塞ぐように整列した。
その黒い和服に描かれているマークに見覚えがあるクラウディオ。
(アレは新興組織、源聖大和国ですか)
新興組織、源聖大和国。
昔の日本の風習や文化、礼儀作法や決め事こそ至高であり、現代の日本社会は邪道であり、外国に媚びを売る招き入れるなど論外だと言う思想主義者たちが立てた組織だ。
聞けば聞くほど現代社会に慣れない年寄りばかりかと思いきや、幹部以外の構成員のほとんどが若者達だ。
だが彼らのバックにいる者達は年寄りの方が多い、源聖大和国の思想を作った昔ならではの日本を至高として頂く日本と言う国の超保守派の重鎮達である。
とは言っても今の日本は国としても多くの企業としても外国とは切っても切れない関係のある国際色の強い国であり、日本だけの風習にしがみついている超保守派の重鎮達とはいわば行き遅れである。
つまり、今の日本にとってそれほど重要な――――特別な存在でも地位を築いている訳でもない、ある程度の大金を持った、そこらの資産家と変わらない程度である。
それでも彼らは自分達が特別な存在だと信じて疑わずにおり、そんな自分達が国の中心的位置やそれらを操る位置に置かれていない事を理不尽であり間違った在り方だと確信している。
その様な偏見と驕りの塊たる超保守派の重鎮達から、生まれた時から指導・教育されて来た者達でほぼ占めているのが源聖大和国なのだ。
そんな彼らが九鬼に一体何の用かと言えば、彼らの主張の間違った日本の在り方の原因の一つが技術革新からの最新技術であり、最新技術を多くを占めている企業の一つである九鬼財閥が彼らのターゲットとなり、特に英雄のクローン技術が彼らの癇に障ったのが理由だ。
試験管ベイビーやヒトクローンは、人の形をしただけの人間以下の畜生であり、今すぐその技術の放棄と消滅及び英雄を語らせている畜生たちの身柄を自分達に引き渡し処分させろと言う命令を彼らは九鬼財閥に送っていた。
要請では無く命令と言う所が、彼らの極まった愚かな思考を如実に表していると言えるだろう。
勿論そんなものに耳を傾ける筈も無く、下らんと一蹴して無視した結果がこれだった。
まさかこんなにも武力で訴えて来るとはと、色んな意味で予想外だったと言うのがクラウディオの本音である。
彼らに武力など無いと言うのが九鬼の調査結果である。
事実、此方の進路である道路を塞ぐように整列している黒い和服の者達の足運びや所作を見る限り、一般人と変わらない――――つまり雑魚である。
いや、彼らの後方へと目をやると、この場の指揮官と思われる中年の男を守る様に取り囲む黒い和服に虚無僧笠で素顔を隠す8人と映画村などで借りれるような大名の着物に虚無僧笠でこれまた素顔を隠す1人の合計9人は少しは出来そうだが、それでも九鬼従者部隊の最下位から数えた方が早いくらいの番付よりも下くらいの腕のほどしか感じられなかった。
それ故、クラウディオが取った行動は、
「すみません御三方。手早く済ませますので、如何か暫しお待ちを」
車を止めて運転席から降りるクラウディオ。
恭しくお辞儀をしてから当然に言い放つ。
「無為な怪我をしたくなければ、如何かお退きください」
「ふざけるな貴様!」
「我らの方にこそ正義があると言うのに!」
「しかもこの至高な大和の国に我が物顔で足を踏み入れて何様のつもりだ!」
「今すぐこの国から出ていけ!」
「或いは今すぐ自害せよ!」
「速く我らの命令を聞かぬか!」
「・・・・・・・・・」
正直話にならな過ぎて嘆息するクラウディオ。
そのクラウディオの反応すらも彼らにとっては侮辱同然なのか、今も喚き散らしている。
さらに、退路を塞ぐように後ろの方からも源聖大和国の構成員がわらわらと現れた。
だがおかしな事に九鬼従者謡の者達が未だに駆けつけに来ない。
恐らく彼らに足止めを喰らっていると言った所か。
いよいよ対話は無駄と判断したクラウディオが構えようとした所で、後部座席から義経と弁慶が降りて来た。
「漸く現れたか、日本が誇る英雄の名をかたる畜生ども!」
「っ・・・!」
「・・・・・・」
義経達は事前にこの様な偏見的な意見を持った者達も世の中に入る、と言う事を説明を受けていた。
だからという訳ではないが、世の中の物事をある程度理解している弁慶は源聖大和国の構成員からの罵倒を幾ら受けても素知らぬ顔で流している。
寧ろ彼女の心配は、紋白と共に自分も打って出ると言う事を聞かなかった(紋白には残ってもらった)義経だ。
横目に義経を見ると、彼女は矢張りどうしても眼を向けられずにいる。
義経はまだまだ人の憎悪や悪意に対して耐性も無く、弁慶の様に受け流せない。
「義経、無理しないで車内に戻った方が良いんじゃない?」
「そんな事出来ない。弁慶が矢面に立っているのに義経だけが後ろにいるなんて絶対に嫌だ!」
(ヤレヤレ)
昔から一度言い出したら聞かない主の態度に、諦めつつも心の何処かでその選択を嬉しく思う弁慶。
義経と共に錫杖を源聖大和国の構成員達に向ける。
「畜生風情が何のつもりだッ!」
「我らに矛を向けるなど思い上がるのも大概にせぬか!」
「大概にするのはアンタ達でしょ?私達を畜生だと仮定して、そんな言葉も解せない畜生に怒鳴り散らすなんて駄々を捏ねた子供みたい――――いや、それ以下で無様ったらないの自覚できてる?」
ワザとらしく肩を竦めて呆れるように言い放った弁慶の言葉は、彼らの気を頂点にまで逆撫でするのには十分過ぎた。
『「『「『「『「『「畜生風情ぇええがぁあああああッッッ!!!』」』」』」』」』」
彼らは全員腰に携えていた刀を鞘から抜き放ち、九鬼の一同を斬り殺そうと駆けだして来るが、直に全員動けなくなった。
「何d」
さらに自らの腕で口を塞ぐようにして喋れなくなる。勿論自分達で態とその体勢を取った訳では無い。
答えはクラウディオの鋼糸による結界に嵌り、彼の指先一つの動きで全員拘束されて喋れなくされたのだ。
「義経様、弁慶様、この通り拘束したので、車内にお戻りください」
「だけど!」
「ご安心を残りも直に済ませます」
何時の間にか鋼糸による結界は範囲が広がっており、黒い和服に虚無僧笠を被っている8人よりも前にいたリーダー格と思われる剣客にクラウディオの攻撃の手が伸びる。
だがしかし、
「・・・・・・・・・」
「なっ!?」
虚無僧笠のリーダー格はクラウディオの鋼糸を居合い切りで見事に断ち切って見せたのだ。
驚いたのは別にクラウディオ自身が自信家だったからでは無い。
相手の力量を推し量った上での攻撃だったにも拘らず、通じなかったからだ。
(見誤った?)
反省し、また観察を始めようとすると、リーダー格が動く。
「八聖衆、殺害を許可する」
「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」
1人は鋸を1人は小太刀を1人は薙刀を1人は十字槍を1人は鎌を1人は槌を1人はあらゆる暗器を1人は弓を取り出す。そしてリーダー格は勿論刀を。
それぞれ己が半身たる得物を取り出した途端、虚無僧笠の9人の気が爆発的に増えた。
この事に驚きを隠せないクラウディオ。
自分の観察眼が見誤る事はあるだろうが今は如何でもいい。それ以上に今は考えねばならない事があるからだ。
それは、後で背を向けていた義経様と弁慶様、それに車内で待機しておられる紋様の御3方をどう生かしてこの場から逃がすかだ。
何せリーダー格の虚無僧笠は実務家事戦闘力から何でもござれの完璧執事から見ても格上の強者だ。
勝手な憶測だが、一対一の状況でもヒュームでも勝てるか判別できないほど。
残り8人は自分よりも下であろうが、序列最下位などトンデモナイ。
風間ファミリーの武士娘である川神一子や椎名京が、ファイターハイ状態で実力の限界を超えた状態くらいには強いのだ。それが8人だと言うのだから窮地である。
兎に角、何としてもこの窮地からあの御3方を脱出させる事に努めねばと思案していた所に、鋼糸の結界を全て切り裂いて自分を切り捨てようとするリーダー格ほぼ眼前に来たのだ。
これにクラウディオは今集められるだけの鋼糸を集束させて、最硬防御姿勢を取
「切捨て御免」
「ッッ!!?」
防御に回した鋼糸ごと袈裟切りされたクラウディオは、衝撃により吹き飛ばされて塀にぶつかる。
「ゴフッ!」
「クラウ爺!」
塀に激突した衝撃と斬られた事により吐血するクラウディオ。
しかし吐血して意識があると言う事は生きている証拠でもある。防御に回した鋼糸は全て切り裂かれてしまったが、代わりに斬られた肩口から胸のあたりまでそこまで深い傷口では無い。
しかし吐血する程なので重傷なのには変わらない。
(直に立たねば・・・!)
追撃を恐れて立ち上がろうとするも、力入らず立てない。
そして切った張本人は残念ながら標的を変えた。リーダー格の虚無僧笠が見ているのは鋸・槌・小太刀の八聖衆の3人と戦っている義経だ。
彼女は放課後での決闘からの疲労が今まさに出てしまい、三対一と言う状況である為、何とか防いでいると言った感じだ。
防戦一方で苦境に立たされていると言うのに、さらにはリーダー格が切り込もうとしているのだから四面楚歌とはこの事である。
「義経!クソッ!アンタ達邪魔なんだよ!このままじゃ、義経が・・・!」
弁慶は四対一だが、義経とは違い疲労していないので寧ろ完全に抑えることが出来ているが有利にも働いていない。つまり駆けつけたくても駆けつけられない。
「義・・・つッ」
立ち上がろうとするも矢張り立てないクラウディオ。
そうして無情にもリーダー格の虚無僧笠が突きの姿勢を取り、
「・・・・・・・・・」
「うぐ、クッ・・・・・・・・・・・・えっ」
何時の間にか義経の命を刈り取らん刀の切っ先は、彼女の左目の直前まで迫って来ていた。
後書き
予想よりも文字数が多くなったので、分けます。
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