レーヴァティン
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第二十八話 団長の依頼その五
「様々でござるが」
「どっちにしてもな」
「裏切り者は存在するものでござる」
「だからか」
「その場合は堅固さが役立つでござるよ」
「その意味では意味がなくても別の意味では意味がある」
「そうしたものでござる、ですから」
進太はさらに話した。
「拙者はこの内城の堅固さが好きでござる」
「わかったぜ、まあ俺としてはな」
久志は自分の考えをまた述べた。
「城はな」
「堅固なものがでござるな」
「いいな、派手な宮殿とかな」
そうしたものはというと。
「あまり好きじゃないからな」
「ベルサイユとかか」
正が聞いてきた。
「ああした宮殿はか」
「別にいいな」
興味がないというのだ。
「ああした場所は」
「すげえ立派な宮殿とかはか」
「どうでもいいんだよ」
「趣味じゃないか」
「皇居見ろよ、皇居」
「ああ、あそこな」
「滅茶苦茶質素だろ」
「日本の皇室のお住まいにしてはな」
皇紀にして二千六百年以上の歴史に世界第三位の経済大国の国家元首の座にあるがだ。日本の皇室の皇居は実に質素だ。
「異常な位な」
「質素だな」
「あの質素さ見たらな」
「とてもな」
「贅沢なんだな」
それこそというのだ。
「馬鹿々々しいぜ」
「そう思ってか」
「そりゃいい家には住みたいぜ」
久志にしてもというのだ。
「けれどそんな宮殿とかな」
「住みたいとはか」
「思わないな、屋敷位でいいな」
それ位でいいというのだ。
「俺はな」
「屋敷か」
「それ位でいいぜ」
「宮殿じゃなくてか」
「そんな大層なの建ててもな」
こうも言った久志だった。
「何処に暮らすんだ」
「何処に、ですか」
「ああ、どでかい立派な宮殿建てても」
例えそうしてもというのだ。
「自分の部屋、遊びの部屋、書斎、トイレ、食堂、風呂」
「合わせて六つですね」
「自分の部屋なんてな」
それこそと順一に話した。
「思いきり贅沢して六つだろ」
「その六つの部屋があれば」
「いるか?嫁さんの部屋を入れてもな」
そうしてもというのだ、久志は自分がこの世界では既婚者であることもしっかりと認識している。
「そんなにいらないだろ」
「それで宮殿はですね」
「いらないと思うけれどな」
「皇居の様にですね」
「質素でな」
「いいですか」
「ベルサイユとかサンスーシとかシェーンブルンとかな」
欧州の王侯達のみらびやかな宮殿はというのだ。
「いいと思わないんだよ」
「あれは権威ですから」
「王家のか」
「はい、壮麗にして豪奢な宮殿に住む」
「それが権威か」
「ですから」
それが為にというのだ。
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