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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0215話『時津風の悔い』

 
前書き
更新します。 

 




時津風にはねー、ひとつだけ後悔を残してることがあるんだ。
まぁ、他にも探せばいくらでも出てきそうだけど敢えてあげるならやっぱり第二次ソロモン海戦で龍驤を守れなかったことかなー。
天津風や利根さんとかもいたけど敵艦載機の前にはやっぱりどうにもならなかったからねー。
あーあ、悔しいなー。
それであたしはついしれーの肩の上に乗ってる状態でだらーんと垂れてしまった。

「おっと……時津風、いきなり体重をかけないでくれ。落としそうになっただろ?」
「ごめんごめん。……ねぇしれー……少しいいかな?」
「なんだい……?」
「しれーはもし目の前で誰かを守れない事態になったらどうする……?」
「それは……」

しれーの顔が引き攣ったのが分かった。
そうだよねー。まだしれーはそう言う体験をしたことがないから当然の反応だよね。
でも、この世界に来てしまった以上いつかどこかで過ちを犯してきっとしれーは後悔してしまう時が来ると思う。
だから時津風はそんなしれーの心を守るんだー。

「大丈夫だよしれー……もしそんな事になったら時津風が慰めてあげるから。でも、聞かせて。それーはその時にどうするの……?」

しれーの頭を撫でてあげながらそう言う事を聞く時津風はきっと悪い子だ。
でも、しれーにも知ってもらいたい。
どうしようもならない時だってあるって事を。

「しかし……そうだな。もしもの事態になったら私は……どうするのかな? きっとがむしゃらになってその子を守ろうとすると思うな」
「やっぱりしれーはそう答えるよね。うん、知ってた」

時津風は笑みを浮かべながらもまたしれーの頭を撫でてあげる。

「少し昔の話をするねー? 時津風はねー……龍驤を第二次ソロモン海戦の時に守れなかったんだ」
「第二次ソロモン海戦の時か……でも、あれは仕方のなかった事じゃないかな? 海軍は龍驤を完璧に囮に使っていたのはもう知っているし」
「うん。でも護衛を任された以上は守りたかったんだ……でも、守れなかった。だからね、しれーはもし今の海軍の人達にそんな命令をされた時は覚悟をしてほしいと思うの。時津風達はみんなしれーの事が大好きだからきっとしれーの言う事なら従うと思う。それがたとえ死に逝く定めの命令だとしても……」
「時津風! そんな悲しい事を言うんじゃない!」
《そうですよ!》

あ、思わずという感じで榛名さんも出てきちゃった……。
まいったなー。困ったなー。
しれーだけならなんとか対処は出来るけど榛名さんも一緒だと少しつらいものがあるし。
うーん……。そうだね。

「でもさ、榛名さんももし自分が犠牲になって代わりにしれーが助かるならなりふり構わず命を投げ出すでしょ……?」
《そ、それは……否定できないところが悔しいですけど、でも! そんな事にならないように提督の事を守りつつ自身も死なないようにすればいいと思います。そうでもしないと……残されてしまった提督の心を守れません……》
「あっ……」

そうだね。時津風もそこは考慮していなかった。
そっかー。もし時津風が沈んでしまったらしれーが悲しむのは当たり前の帰結なのにね。

「バカだなー、あたし……そんな簡単な事も考えていなかったんだなー」
「時津風……?」
「ごめんね、しれー。もうこんなもしもの悲しい話はよそう。あたしにもしれーにもきっとよくない事だから」
「まぁ、そうだな。でも私はもし時津風が沈みそうになったら必ず救い上げるからな?」
「うん。そこは期待してるよー」

そんなしれーだから時津風達はしれーの事が大好きなんだ。
だからどんな命令でも聞こうと思っている。
きっとしれーも命令内容を改ざんしてでもあたし達を生き残らせようとすると思うし。

「しれー……時津風、重くなぁい……?」
「大丈夫だ。いつも雪風と一緒に登ってくるからもう慣れたよ。むしろ軽いくらいだよ」
「そっかー」

そんな他愛ない話をできる今という時間を時津風は大切にしていきたい。
時津風達艦娘はいずれは深海棲艦を倒したらもしかしたらいなくなっちゃうかもしれないけどそれでもしれーの心の中には残っていたいから。

「むふー!」

あたしは一回しれーから降りた。
しれーは少し不思議そうな顔をしていたけどあたしはそのあとにしれーにもう一回抱きついて、そして、

「しれー! 大丈夫だよ。さっきは少し暗い話になっちゃったけど時津風達はしれーが命令してくれる限りは沈む気なんてさらさらないから。だからしれーも誰かが沈むことを恐れないで胸を張って指揮をしてね」
「ああ、当然だ。もう誰も沈ませはしないよ……。その誓いは先に沈ませてしまった木曾たちに言っているからな」
「あー……そう言えばお盆の時に木曾さん達が来たんだっけ?」
「うん。だからその時にもう誰も沈ませないって誓いを四人に言ったんだ」
「そっかー……沈んでしまった後もしれーのところに顔を出してきてくれるんだね。少し、それは嬉しいかも」
「そうだな。もう会えないと思っていたからなおさら私も嬉しかったよ」

しれーはそれで思い出しているのか少し笑みを浮かべている。
このしれーの表情も時津風は大好きだなー。
だからこんなしれーの表情が何かの拍子に曇らないように時津風達も頑張って生き残らないとね。

「榛名さん」
《はい》
「しれーの事を守ろうね……」
《当然です。榛名はどこまでも提督の事をお守りします!》
「あはは。嬉しいな……そんな事を言われると私ももっと頑張らないとなって思ってくるみたいだよ。まぁ、まずは近々行われるレイテ沖海戦で西村艦隊のみんなを最後まで活躍させないとな」
「そうだねー。時雨達にはぜひとも最後まで頑張ってほしいな」
《そうですね……きっと、乗り越えられますから》

最後はまた少ししんみりしちゃったけど、悪い空気じゃないからいいよね。
うんうん、いい風が吹いてきたんじゃないかなー。


 
 

 
後書き
今日は時津風の進水日ですので書いてみました。




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