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真田十勇士

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巻ノ百十一 二条城の会食その三

 彼等は政宗に強い懸念を抱いていた、だが政宗は諸大名達のその目をもうわかっていてだ。
 密かにだ、影にいる者達に言っていた。
「この度はじゃ」
「はい、最早ですな」
「諦めますか」
「そうされますか」
「これ以上はわしも少将殿も危うくなる」 
 だからだとだ、姿を見せぬ者達に言うのだった。
「全ての足跡を消せ」
「そしてですな」
「そのうえで」
「我等は手を引く」
 そうするというのだ。
「この度はな」
「では、ですな」
「切支丹とのつながりのこともですな」
「全て消す」
「そうされますか」
「ご老中の大久保殿とのつながりもな」 
 それもというのだ。
「全てだ」
「消してそうして」
「後は大久保殿がですか」
「どうされるかですか」
「それはわしの預かり知らぬこと」
 既にそうなってしまうというのだ。
「大久保殿で何とかされよ」
「ですか、では」
「少将殿もですな」
「後はですな」
「危害が及ぶことはありませんな」
「それも一切」
「そうじゃ、少将殿も伊達家も守れる」
 そのどちらもというのだ。
「今のうちに動くとな」
「幕府に怪しまれようとも」
「それだけですな」
「そしてまた時を待つ」
「そうされますか」
「それだけよ、しかしどうもな」
 ここでだ、政宗はその責眼を鋭くさせてだ。そのうえで影の中に潜み通dけている者達にこうも言った。
「天下は定まってきたか」
「幕府に」
「そうなってきましたか」
「今は」
「そうした状況になってきていますか」
「幕府の政は盤石じゃ」
 そうなってきているからだというのだ。
「そして民達も幕府に懐いてきておる」
「天下が泰平になることを望み」
「そのうえで」
「民に苦労をさせぬ政もしておってな」
 このこともあってというのだ。
「かなりじゃ」
「幕府になつき」
「天下は幕府の治に従いだしている」
「そうなっていますか」
「わしが天下を握ろうとしても」
 今もそれは諦めていないがというのだ。
「それは出来ぬやもな」
「最早ですか」
「それは適わぬ」
「そうなってきていますか」
「そうも思えてきた、若しそうならな」
 天下を獲る夢が適わぬなら、というのだ。
「後はな」
「ばい、それではですな」
「もうですな」
「それを諦め」
「そのうえで、ですか」
「仙台という場所にも民にも愛着が出て来た」 
 そうなってきたからだというのだ。
「思う存分治めてみるか」
「そしてそのうえで、ですか」
「仙台を豊かにされますか」
「そうお考えですか」
「そうするか、まあ大坂の動き次第ではな」
 もっと言えば茶々だ、政宗から見れば彼女は何もわからず勝手ばかりしている女でしかない。 
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