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ガンダム00 SS

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ep2 矜持

 
前書き
SS第2話は1stの17話『悪意の矛先』で名誉な戦死を遂げたハワード・メイスン准尉が主役です。
 

 
「なっ、何だとッ!」

グラハム・エーカー上級大尉の驚愕に満ちた声がミーティングルームに響く。ハワード・メイスンは彼の顔から、異常事態を悟った。

グラハム上級大尉が強張った顔で、今入った情報を口にする。

「ガンダムが出現したのは我々の基地だった……」

隣にいたダリル・ダッジが眉間に皺を寄せ、いつも以上に低い声で問いかける。

「現れたのは新型のガンダムですか?」

「それは分からない。だが、私たちの基地が狙われている。行くぞ、フラッグファイター!」

「「了解!」」

ハワードはダリルと共に言葉を返し、走り出すグラハム上級大尉に続いた。

目の前を駆けるグラハム上級大尉の背中を追いながら、ハワードは先日の大規模な戦闘を振り返る。

ジョシュア、ランディ、スチュアート。タクラマカン砂漠での合同軍事演習で、オーバーフラッグスは3人の優秀なフラッグファイターを失った。新たなガンダム3機の襲撃が予想外だったとはいえ、惜しい結果だった。

格納デッキに着き、自身のオーバーフラッグに乗り込む。サングラスを外し、ヘルメットを被って出撃準備を整えていく。

先ほど、ダリルは『ガンダムほどの性能を持つ機体があれば』とガンダムを羨んだ。だが、それはフラッグファイターの矜持に反する発言だとハワードは注意した。

ーーガンダムは確かに強い。だが、性能だけが全てではないと隊長も言っていた。

ーー俺たちはフラッグファイターだ。我が軍の最新鋭機を愛さずに、何を愛すれば良い?

ダリル機に続き、ハワードが機体を緊急発進させる。グラハム上級大尉に従って陣形を組み、MSWAD基地に急いだ。

「頼むぞ、フラッグ」

ハワードはコクピットで1人呟いた。しかし、武力介入の危機に瀕している基地は、まだ遠い。



MSWAD基地は遠目から見ても分かるほどに燃えていた。不吉な黒い煙が青空に上り、穏やかなキャンバスを汚している。

ハワードは、上空に飛んでいるガンダム3機がメインカメラのズームで確認する。合同軍事演習で突如現れた新型のガンダムだった。

グラハム上級大尉が怒りの声を吐き出した。

『堪忍袋の尾が切れた!許さんぞ、ガンダム!』

ガンダムの1機が先行し、こちらへ向かってきた。そのガンダムが小型ミサイルのようなものを射出し、グラハム機に迫る。だが、彼はそれを全て躱してライフルの弾をガンダムの胴体に打ちつけた。

ハワードは仲間と共にガンダムを牽制する中で、自身の発言を思い出していた。

ダリルの弱音を制し、矜持を持てと諭した。ハワードは本気でそう考えているし、グラハム上級大尉ならそれを体現できると信じている。

その一方で、ハワードにはフラッグファイターとしての矜持を自分で証明したいという思いもあった。ダリルへ放った言葉が脳裏から離れず、何度もリピートされる。

ーーフラッグがこれ以上コケにされるわけにはいかない!

ハワードは機体を下降させ、陣形から外れた。

『ハワード!?』

ダリルの驚いた声がヘルメットに届く。ハワードはそれに応えることなく、ガンダムに接近する。そして、飛行形態からMS形態への空中変形を取った。人前で空中変形ーーグラハム・マニューバを見せたのは今が初めてだった。

フラッグの腕に収納されたプラズマソードを引き出し、ハワードはガンダムに斬りかかる。

ガンダムが大型の剣を手に取ってプラズマソードに対抗してきた。ハワードは間近に見るガンダムに向かって身を乗り出す。

「見たかガンダム!これがフラッグの力だ!」

何もガンダムと互角の力が必要なわけではない。自軍の機体を信じ、愛すればその思いは現実に繋がるのだ。

ーー俺はフラッグファイターとして、フラッグでガンダムを……。

そのとき、鍔迫り合いで散る火花の裏で、敵パイロットが笑ったような気がした。

警告音がコクピットに鳴った瞬間、機体の四肢やフライトユニットに小型ミサイルが突き刺さる。

「うぅおぉああッ!」

『ハワード・メイスンッ!!』

小型ミサイルが機体に食い込み、ハワードの身体が破損したコクピット機器に挟まれる。どこかの骨が折れる音がした。

頭部にもグサリと刺さり、メインカメラが破壊される。エンジンの勢いがが失せ、落下の浮遊感が動けなくなった身体に襲った。

真っ暗になったコクピットの中で、ハワードは仲間の声を聞いたような気がした。何か返さないと、と感じた彼は途切れ途切れの言葉を発する。

「隊長……。フラッグは……」

ーーやはり、我が軍の最新鋭機です。

自らの独断行動に悔いはなかった。この行いが、フラッグの新たな可能性に光を当てる気がしたからだ。


 
 

 
後書き
どうしてGNファングで機体をめった刺しにされたハワードさんを書いたのか。理由は簡単、彼が好きだからです。 あのサングラスになりたいくらい。 
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