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ヘタリア大帝国

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116部分:TURN11 エイリス女王その十


TURN11 エイリス女王その十

「そちらの視察や書類のサインをお願いね」
「わかったわ」
 笑顔でだ。マリーは敬礼で応えた。
「じゃあ早速ね」
「私は内政を受け持つわね」
 エリザは自分から娘に言ってきた。
「これでもずっと政治には携わってきたから」
「では。お母様はそちらをお願いします」
「わかったわ。それじゃあね」
「後は議会ですけれど」
 エイリスにも議会がある。二院あり貴族院と下院がある。下院は平民で構成されておりそして貴族院は文字通り貴族により構成されている。セーラが今問題視しているのは貴族院なのだ。
「あの議会は」
「貴族ねえ。彼等はね」
「最近。どうも」
「自分のことしか考えていない者が多いわね」
「はい、それで議会でもです」
 どうかというのだ。その議会でだ。
「何かと。王室の政策に異議を唱えてきます」
「私達が間違っているのならいいけれど」
 エリザもその場合は受け入れるというのだ。
「けれどね」
「はい、彼等の既得権益にしがみついて」
「それだけを考えてね」
「国家としての政策にも反発しています」
「議会は必要よ」
 政治においてだ。このシステムは不可欠だというのだ。
「政策のチェックや議論の為にね」
「はい、その通りです」
「けれど。議会は一歩間違えると」
 どうなるかとだ。エリザはその明るい顔にやや憂い入れて言った。
「ああしてね」
「腐敗しますか」
「そう、衆愚政治になるのよ」
 議会の問題点をだ。エリザは娘に話したのである。
「それは下院も同じだけれどね」
「今は貴族院ですね」
「彼等の既得権益は多いわ」
 エイリス帝国の長い歴史の中でだ。できあがっていったものの一つだ。歴史の中で形成されていくものは決していいものばかりとは限らないのだ。
「だからこそね」
「彼等もですね」
「ええ、その既得権益を守る為に」
「王家の政策に反発するのですか」
「この状況でもね」
 国難にある、その中でもだというのだ。
「彼等にとっては国家より自分達の権益の方が大事だから」
「けれどそれっておかしいんじゃないの?」
 マリーは母と姉の言葉を聞きながらだ。その横でこう言ってきた。
「だって。エイリスが滅んだらあの人達も滅ぶんじゃない」
「それはその通りよ」
「じゃあ何でそんなことするの?」
 首を捻りながらだ。マリーは言う。
「自分達のことしか考えないの?」
「見えていないのよ」
 エリザは次娘にも話した。
「自分達のこと以外はね」
「ううん、やっぱり馬鹿みたいだけれど」
「愚かではあるわ」
 エリザはマリーのそのことも否定しなかった。
「けれど。本当にね」
「あの人達は全く気付かないのね」
「貴族院、植民地全体を含めてですが」
 セーラは曇った顔で母と妹に話した。
「抜本的な改革を考えていました」
「貴族達の権益を大幅に縮小するね」
「その権限もです」
 それを考えていたというのだ。
「アンドロメダで見てきましたから」
「ああ、あの叛乱ね」
 セーラが即位してすぐにだ。エイリスの植民地の一つアンドロメダ星域で叛乱が起こったのだ。セーラはその叛乱を自ら出陣して鎮圧した。そしてそこで見たのである。
「植民地にいる貴族達の横暴は目に余ります」
「ええ、私の頃はまだずっとましだったけれど」
「それでもです」
 どうだったかというのだ。
「今の腐敗は酷いものです」
「それでセーラちゃん叛乱は鎮圧したけれど処罰は寛大だったのね」
 これは基本的に心優しいセーラの性格も影響している。
「それでなのね」
「はい、叛乱を起こした者達に問題はありません」
 そのだ。植民地の者達にはというのだ。
「問題はです」
「そうね。貴族達にこそ問題があるのよ」
「私もそれを知りました。何とかしなければ」
 セーラは深刻な顔で述べる。
「エイリスの屋台骨が揺らぎます」
「この戦争が終わっても」
「何か大変そうだね」
 三人でだ。戦後のことも考えていた。エイリスは今斜陽の入り口にいた。しかしこのことはセーラ達は何とか挽回しようとしていた。その為に必死に戦っているのだ。


TURN11   完


                  2012・3・14
 
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