艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第四十話
前書き
どうも、何だかんだで四十話です。正直、いつ終わるのか分からない作品ですが、これからもよろしくお願いします。
―執務室―
「しっかし、これはまたなかなか攻めた特集じゃねぇか。」
木曾がページをぺらりとめくりながらそう言った。俺はそのはるか後ろに立ち、本そのものが見えないようにしている。
赤城さんは「ふむふむ。」と言いながら観察するように注視し、摩耶さんは「やらかしたなぁ、提督よ…………。」と頭を掻いていた。長門さんはお構いなしに報告を続け、時雨は「おっきいね。」と一言。
そして、
「…………………………(ダラダラダラダラ)。」
いつも通りに椅子に座っているものの、冷や汗の止まらない提督と、
「…………………………(ゴオォォォォォォ)。」
なにかヤバいオーラを発しながら提督の首根っこを掴んでいる大淀さんがいた。
なんだろ、下手したら『魔神』の木曾より怖いかもしれない。だって、提督の目が死にかけてる魚みたいになってるもん。
「―以上だ。今回は二号の小破のみと、ほぼ完全勝利と言っても文句なしだろう。向こうも奇策を打ってきたが、うまく対処できた。なかなかだったと思う。以上。」
長門さんはそう言って、一歩下がった。そして、木曾の隣に移動して、一言。
「それと、いくら忙しくて大淀が構ってくれないからといって、こんなものに頼るなよ?」
笑えねぇ。
「(ゴゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ)。」
あ、大淀さんのオーラが増えた。
「あ、う、うん。報告お疲れ様。それじゃ、ゆっくり休んできてよ。それと二号。テメェは後で話があるからムギュ。」
提督が俺になにか言おうとしたとき、大淀さんが首根っこを持ったまま手を上げた。当然体が浮き、首を絞められる提督。
「あら、奇遇ね。私もあなたにじっっくり話があるのだけど?」
大淀さん、目が据わってる。
「……………………ハイ。」
おとなしくするしかない提督。いやまぁ、自業自得だろう。
そう言えば、なんでトラック基地の人たちが提督のピンク雑誌なんか持ってたんだろ?
「そう言えば、トラックの人が言ってたのですけど。」
そんなことを考えてると、赤城さんが口を開いた。
「『あの人は基本的に気に入ったものはストックする。』とのこと。」
「(ゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ)。」
更に倍増する大淀さんのオーラ。
そーいや、この雑誌って、朝に俺が貰ったものとおんなじなんだよな…………。多分、大淀さん一筋の覚悟として俺に渡したのだろう、多分。
もう一冊をどうするかは頭に無かったようで。バカだろ。
「『でも、今日忍び込んだ時には一冊した見つからなかった。』…………少なくとも有るであろうもう一冊は?」
まって、赤城さん本当にまって。なんか俺の雲行きも怪しくなってきてないか?
俺は提督程では無いけれども、冷や汗を流し始めた。
「あ、そうそう!そのもう一冊はち」
ドゴォオオオオオオオオオオオオン!
気がついたら、俺は提督の顔面に拳を叩き込んでいた。ごめん、提督。お前の命より俺の評判だ。
「ち?」
「ち…………血の涙を流すような…………気持ちで…………捨てました。」
そう言った後で、ガクリとうなだれる提督。
その提督に時雨と摩耶さんがスッと近づき、首もとや手首に手を当てる。
「ん、流石提督。脈はあるね。」
「安心しろよ二号。こいつは基本的に自分に非があると分かってたら何もしないから。」
時雨と摩耶さんは俺にグッと親指を向けてきた。
……………………なんだろう。物凄い申し訳ない気持ちで一杯だ。
皆を騙してるという罪悪感と、そのために提督をぶっ飛ばした罪悪感と。
こりゃあ、後で提督に色々言われそうだな…………。後で雑誌を返そう。
「それでは、私はこの人を叩き起こしますから、ゆっくりしていって下さい。特にこのあと訓練に参加しようとかいう馬鹿なこと考えてる軽巡洋艦とか。」
ビクッ!と体を震わせる木曾。やっぱりこいつアホだ。
「わかったわね?木曾ちゃん?」
と、大淀さんは凄みを効かせてそう言った。いや、木曾にちゃん付けとかしたら殺されると思うのだが……。
「あ、はい。分かりました。すんません。」
大人しく従う木曾。木曾は大淀さんにかなり弱い。一体昔に何があったのだろうか。
「それでは、失礼した。」
長門さんがそう言うと、皆次々と部屋を出ていった。俺もそれについて部屋を出る。
「うむ、ご苦労様だった。」
長門さんはそう言うと、スタスタとどこかへ行ってしまった。相変わらず素っ気ない人だ。
「んじゃ、アタシはこれから天龍に用事あるから。」
摩耶さんはそう言うと、長門さんとは逆方向に歩いていった。
「ボクと赤城さんは青葉さんに呼ばれてるから。」
と、摩耶さんと同じ方向に歩いていった。残された俺と木曾。
「んで、オレたちはどうする?」
どうやら何も用事のないらしい木曾。俺も無いから、どうしようかと悩んでいた。
いつもの木曾なら、「トレーニングセンター行くぞ!」だけど、大淀さんに釘を刺された木曾はその約束をきっちり守る気だ。可愛いかよ。
「うーん、正直やることねぇんだよなぁ。一回部屋に帰って寝てこようかと思ってたんだけどな。」
疲れてはいるからな。
すると、木曾は腕を組み、悩んでいた。
…………そう言えば、俺がここに来てからコイツがこの時間帯に訓練してないところって殆ど無いな。
……ある意味、日常の木曾が見れるチャンスかもと思ったんだけど…………そもそも日常が訓練だったなコイツ。
レアかよ。
「お前さ、部屋とかでなんか趣味とかしてないのかよ。」
「え?俺は部屋に帰ったら脱いで寝るくらいだぞ?」
バカだ。たったそんだけの為に部屋はあるんじゃ……………………ん?。
「ワンモアプリーズ。」
「え?俺は部屋に帰ったら脱いで寝るくらいだぞ?」
おーけーい。違和感の正体が分かった。
「『脱いで』?」
そう、『脱いで』。普通そこには、『着替えて』のワードが入るはずだ。
「うん、脱いで。」
しかし、どうやら間違いでは無いらしい。
…………まさか。
「お前、パジャマとか寝間着とかは?」
「着ないね、何も。」
裸族だった。
「…………お前さぁ。女の子相手なら兎も角、男の俺に言うなよ…………。」
俺は頭を押さえながらそう言った。こいつ、ここに来る前とか大丈夫だったのだろうか。
「お前はオレを女と見てるのか?ちなみにオレは見てない。」
と、威張るように言う木曾。いや、威張るなよ。反論できない俺も俺だけどさ。
「まぁ、それはそれとして、もし何もないならいい案があるのだが。」
と、俺は木曾に言った。時計を見ると、一四〇〇。ふむ、飯までは潰せるかな。
「なんだよ、勿体ぶらずに言えよ。」
急かす木曾に、俺はこう言った。
「三十分後に屋上で。動ける格好でな。」
―屋上―
ふむ、提督はどうやら約束を守ってくれたらしいなと、屋上の様子を見てそう思った。
「うーい、来たぜー。」
その様子に納得するように頷いてると、扉を開けて木曾が入ってきた。黒のタンクトップにハーフパンツと、時期的にまだギリギリ許されるような格好でやって来た。
「お、時間ぴったり、流石だな。」
俺はそんな感じで声をかけた。しかし、木曾はその声には反応しなかった。どうやら、ここの様子に驚いてるらしい。
「…………なにこれ。」
「バスケットゴール。」
木曾の質問に俺は即答した。
覚えてる人が居るかどうか怪しいから説明するが、ここに来たときに親父達から送られてきた荷物に、バッシュとバスケットボールが入っていた。
どうやら提督はそれを知っていたらしくて、この際だから新しい娯楽をということで、屋上に設置したわけだ。無論、俺が頼み込んだのも理由の一つだが。
「…………お前、バスケ部だったのか?」
木曾はストレッチを始めながらそう言った。おいこら屈むな、見える見える。
「あぁ。更に言うと、拓海や悠人もだ。」
俺は視線をバスケットゴールに写しながら答えた。それを見て、不思議そうな顔をする木曾。いや、どこまで女子力ねぇんだよ。
「んで、ここで飯までバスケして遊ぼうってか?言っとくけど、俺はサッカーや野球なら大得意だが、バスケはしたことねぇぞ?」
木曾は腕を上に伸ばしながら言った。今度はヘソだよ。だから恥じらい持てってば。
まぁ、既にこいつの全裸見たことある俺が言うのもアレだけどさ。
「まぁ、教えながらやるよ。あと、春雨と皐月呼んだから、もうすぐ来ると思うぜ?」
俺は手に持ったバスケットボールをダムダムとドリブルする。うむ、懐かしい。
「あ?春雨は兎も角、皐月?何でまた。」
あ、そうか。こいつは俺が皐月と仲良いの知らないのか。
「いやな?最近春雨とかと絡んでると、大抵アイツがいるから、自然と仲良くなってな。今回も春雨誘おうとしたときに近くで暇そうにしてたからさ。」
それを聞いて、暫く考えるような顔をしたあと、ニヤリと笑う木曾。
「…………どうした。」
「いや?べっつにー?」
…………腹立つなぁ。
「おい、言いたいことあるなら―。」
「皐月だよー!来たよ、ニゴー!」
「こ、こんにちは、千尋さん、木曾さん。」
俺が木曾に問い詰めようとしたところで、皐月と春雨がやって来た。なんとも狙ったようなタイミングだ。
皐月は黒地に黄色のラインが入ったパーカーにベージュのハーフパンツ、春雨はピンクのガーディアンに黒のスカートだった。春雨、それ多分具が見える。
「ん、来たか。」
「よう、春雨に皐月。」
俺と木曾は手を上げて挨拶する。
「えへへ、ボク、木曾と遊ぶのって初めてかも!」
皐月は実に嬉しそうにそう言った。
「―ッ。」
「……?木曾、どうした?」
それとは裏腹に、目を見開いている木曾。心なしか、驚きというか驚愕というかといった表情を浮かべていた。
「…………あぁ、そうだな。」
しかし、すぐに笑顔を浮かべて答える木曾。気のせいか、いつもより優しさを含んだ、優しい笑顔だった。
…………何があったかは知らないけど、なにかこいつが成長した気がした。
「さてと…………チーム分けするか!」
その後、俺達は日が暮れるまでバスケをして楽しんだ。
後書き
読んでくれてありがとうございます。この話を書いている途中で、「あ、艦これたのしい」と、一時期全くしてなかった艦これを再開しまして。クッソ楽しい。こんな面白いゲームをほったらかしてたとは。何て奴だ。正直、人生損してた。これからは怪物お弾きとかと一緒に楽しもうかなと。
それでは、また次回。
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