真田十勇士
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巻ノ百十 対面その二
「二国の国持ち大名としてじゃ」
「右大臣殿を遇される」
「官位もそのままで」
「無論よき城にも住んでもらう」
その領地のだ。
「確かな普請のうえでな」
「そうしてもらいますな」
「これからは」
「何かあれば」
「そうじゃ、大和でもよい」
秀頼が近畿から離れたくないのならというのだ。
「とにかく話をしたい、だからな」
「有楽殿にお願いし」
「北政所様にも動いてもらい」
「そして加藤殿にも」
「そうしてもらう、特に虎之助か」
加藤清正、彼だというのだ。
「あの者は今でもお拾殿を大事に思っている」
「左様ですな」
「やはり旧主ということで」
「他の豊臣家の家臣だった方々もですが」
「あの方は特にですな」
「だからじゃ」
加藤には特にというのだ。
「動いてもらおう、あの者に文を出すそれも速文じゃ」
「すぐにですか」
「肥後に伝えられますか」
「うむ、早速書く」
その文をというのだ。
「そして動いてもらおう」
「わかりました、では」
「その様に」
幕臣達も家康に応えた、そしてここでだった。
柳生がだ、家康にこうしたことを言ってきた。
「それで加藤殿ですが」
「うむ、そのお拾殿のことでじゃな」
「熊本城ですが」
「いざという時はじゃな」
「右大臣殿をお迎えする為の間等があるとか」
「その様じゃな」
家康は柳生のその言葉に落ち着いた顔で返した。
「どうやらな」
「ご存知でしたか」
「実はあそこにも伊賀者や甲賀者を送り込んでおった」
既にというのだ。
「そうして調べさせていたが」
「実際にですか」
「あの城にはそうした間がある様じゃ」
「やはりそうでしたか、では」
「捨て置け」
家康は微笑んでだ、柳生にこの言葉を返した。
「別によいわ」
「左様ですか」
「そうはさせぬ、そして若しもじゃ」
「戦になっても」
「あの者が公にせねばじゃ」
それでというのだ。
「よいわ、虎之助もそこで公にはせぬ」
「左様ですか」
「そうじゃ」
決してというのだ。
「それはない」
「あの方はですな」
「そうした馬鹿なことをするものもおらん」
「加藤殿の次も」
「うむ、どうやらあ奴は病に罹っておる」
家康はこのことも知っていた。
「花柳のな」
「何と、花柳の病ですか」
「それにじゃ」
「あの病は於義丸様が」
優木秀康だ、家康の次男である。
「そしてお若くして」
「その病の様じゃ、どうも片桐孫六もじゃ」
豊臣家の家老、執権と言っていい彼もというのだ。
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