とある3年4組の卑怯者
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49 愛犬
前書き
この作品でのみぎわさんは登場する度に「花輪クンと仲良くなる女子に嫉妬し、キレる」というパターンばかりになってしまったので、今回からのエピソードはヤキモチを焼かないみぎわさんを書きたいと思います。また、アニメ「ちびまる子ちゃん」2期40話「たかしくん」の巻で登場したたかしくんを登場させます。アニメを視聴した時はあまりにも心が痛む内容でしたので、たかしくんにいい事があってほしいと願って執筆しました。
みぎわは友人の冬田美鈴と快晴の空を見ていた。
「今日はいい天気ねえ、みぎわさん」
「ええ、帰ったらアマリリスの散歩にでも行こうかしら。きっとこの空を見て楽しくなると思うわ。ホントは花輪クンとヒデじいの車に乗ってお出かけしたいけど・・・」
「私も大野くんと一緒に歩きたいわあ・・・」
「何か良いことあるかもしれないわね・・・」
学校から帰るとみぎわは愛犬のブルドッグの元に行く。
「さあ~、アマリリス、今日はいい天気だからお散歩しましょ~」
「ワン!」
アマリリス。それがみぎわの犬の名前であった。みぎわはアマリリスを連れて家の門を出た。
「んん~、散歩にぴったりの日ね、アマリリス、アナタもそう思うでしょ?」
「ワン!」
みぎわとアマリリスは住宅地の中を歩き続けた。その時、反対側から一人の女子と出会った。野口だった。
「あ~ら、みぎわさん・・・」
「あら、野口さんじゃない。貴方もどこかへお出かけなの?」
「うん・・・、兄貴が彼女とウチで遊んでいるんでね・・・、兄貴にジュース買って来いって言われていくところなのさ・・・」
「ふうん、アンタのお兄さんも人使い荒いわね・・・」
「いいんだよ、慣れているからさ・・・、クックック・・・」
そう言って野口は歩き去っていった。
「あ~、ロマンチックな事起きないかしら~」
みぎわは独り言を言っていた。なおそれを野口は聞いていたらしく、「ブーッ!」と気づかれずに笑った。
みぎわは歩いていると、反対側から自分と同じく犬の散歩をしている男子が見えた。
「あら、アナタは西村君?」
「みぎわさん・・・?」
西村たかし。クラスメイトの男子だった。彼は嘗てはいつも遅刻する、給食の牛乳を残すなどの何らかの理由でいじめを受けていたが、まる子がたかしを庇って頭から出血する怪我を負ってからたかしをいじめた者達も流石に反省するようになり、それ以降はいじめられなくなった。また、遅刻も減っていったのだった。
「あら、子犬じゃない」
みぎわはたかしの犬を見て言った。
「うん、僕お母さんからこいつ貰って遅刻をしないように頑張っているんだ」
「へえ、名前なんていうの?」
「タロだよ」
その時、アマリリスがたかしの犬タロに優しげな顔をして「ワン!」と言った。おそらく挨拶のつもりだろう。タロも「ワン!」と返した。
「あらあら、2匹とも仲良しになったみたいね」
「うん、一緒に散歩しようか」
「いいわね」
こうしてみぎわはたかしと一緒に散歩することになった。
「それにしても西村君って犬飼ってたのね」
「うん、お母さんに犬を飼うことになったら遅刻しないようにするって約束したんだ。おかげでタロは朝ご飯を食べたくて僕を起こしに吠えておかげで遅刻しなくなったんだ」
「へえ、世話することで遅刻が無くなるのね。いい犬じゃない」
「あは・・・、そうかな・・・」
二人が話していると、向こうから藤木と永沢が現れた。
「やあ、みぎわに西村君」
「あら、藤木に永沢」
「みぎわ、君が西村君と一緒にいるなんて珍しいな。もしかしてたまたま同じ犬の散歩してたから一緒に行こうと思ったのかい?」
「う・・・、別にいいじゃない」
みぎわは永沢に自分の行動を読まれて恥ずかしくなった。
(永沢君、よくそこまで見抜けるよな・・・)
藤木は永沢が凄く、また恐ろしく感じた。
「はは、その通りだよ、永沢君」
たかしは永沢の推測が正しいことを認めた。
「ワン!」
タロとアマリリスも鳴き声を発する。
「西村君の子犬、可愛いね」
藤木がタロを見て言った。
「ありがとう、藤木君。でもタロも寂しく感じることがあるんだ」
「寂しいって?西村君に懐いているようだけど」
「でもタロは近所のおばさんちの犬の子供で、僕はそのおばさんからタロを貰ったんだ。お母さんに会えなくて時々寂しがることがあるんだ。僕のお母さんも僕が連れて行かれたらどれだけ哀しいか、それと同じだって言ってたから、その気持ちが分かるんだ」
「そうなんだ・・・。確かにお母さんとあまり会えないって寂しいよね」
藤木は同情した。藤木も両親が共働きのため、平日はなかなか会えないため、たかしの犬の気持ちが分かっていた。みぎわも永沢もタロの寂しさを共感した。
「だからたまにタロをおばさんちに行ってタロのお母さんに会わせてあげてるんだ」
「そうだね。それがタロにとって一番いいことだね」
「そうだ。今度、近所のおばさんちに行ってタロとタロのお母さんを会わせてあげようと思うんだけど、皆も行くかい?」
「いいね、行こうよ、永沢君!」
藤木は永沢に同意を求めた。
「何で僕が・・・」
「いいじゃない、アンタヒマでしょ?」
みぎわが真顔で言った。
「仕方ないな・・・。分かったよ」
永沢は嫌々ながらも承知した。
「そうだ、まるちゃんも連れて行こう!」
「さくらもかい?」
藤木がたかしがまる子を連れていくことに驚いた。
「うん、まるちゃんが僕をいじめから助けてくれたからね」
「そういえばそうだったね・・・」
(そういえば僕は自分には関係ないことだとか、巻き込まれて自分もいじめられたらいやだと関わるのを恐れていたよな・・・。さくらがカッコよく思えるよ・・・。そう考えると、俺ってホント卑怯だよな・・・)
藤木はまる子と自分を比較していた。
「藤木君、君もしかして西村君をいじめから救ったさくらが羨ましく思っているんじゃないのかい?」
永沢に心の中を読まれた。
「あ、いや、そんなことないさ!!」
藤木は慌てて誤魔化した。
「まあ、君は卑怯者だから、いじめから助けるなんて勇気はないだろうね」
「う・・・」
藤木は永沢の言っていることがあまりにも正しすぎて反論できなかった。
「まあ、それじゃあ、お母さんと相談して決めるから日が決まったら教えるよ」
たかしが藤木と永沢の会話を打ち切るように言った。
「そうね、楽しみにしているわ」
「うん!」
こうして四人はタロの親犬の飼い主の家に行く事を約束するのだった。
後書き
次回:「親子」
たかしの犬、タロの親犬の家に行く事になった藤木達。タロと親犬との再会の様子を見て藤木が心の中で思った事は・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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