テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第一話
――あぁ…何だっけ?
――確か僕……車に引かれて……あれ?
――目が……開けられる……?
「――……え……?」
ゆっくりと目を開くと、見知らない天井だった。
何んだろう、何故かこの台詞が頭によぎった。
それにしても……此処は…?
「……何か…未来的…?」
「――ぁ、目が覚めましたか?」
ボーっとした意識の中、不意にそんな声が聞こえ、見てみると……
タオルを手に浮遊する青い謎の生命体がいた。
「……ゴフッ」
「え?えっ!?ちょ、大丈夫なんですか!?何か口から魂的な何かが出てますよ!?」
あ、危ない危ない。不測の事態に思わず魂的な何かが抜けてまた死にかけるとこだった。
少し落ち着いて、もう一度謎の生命体に目を向ける。小さな羽根に特徴的な体。よくよく見るとこの人(?)って……。
「あの……大丈夫ですか?」
そうだ。『レディアントマイソロジー3』の新しいマスコット的存在の……確か、『ロックス』だ。
……軽く自分の頬を引っ張ってみる。
痛い。
「…………マジで?」
「え、あの……どうしたんですか?」
暫くボーっとし過ぎたせいか、ロックスさん(多分?)が此方を心配そうに見ていた。
い、いけないいけない。
「ぁ、えっと……多分もう大丈夫です。……ありがとうございます」
「いえいえ。大丈夫そうならよかったです。大変でしたよ、いきなりお嬢様が『海に人が落ちてるーっ!』なんて言っていたら、本当だったんですから」
「そ、そうだったんですか…」
そうかー。僕、海に落ちてたんだー。……ん……『海』?
「……あのー、すいません……今、なんて……?」
「え…いや、だから…あなた、海に落ちてたんですよ」
……はい?
…海に落ちてたって…どういう事…?
確か僕……車に引かれて…なんで海に……?
って…待って…それじゃ此処って!?
「あのっ、すいません!その…此処はっ!?」
「あ、此処はギルド『アドリビトム』が拠点を置いている船、『バンエルティア号』と言います」
……マジですか。
嘘、だとか思いたいけど…目の前にロックスさんが存在している以上、多分本当なのだろう。
少し周りを見回して居ると、不意にロックスさんは何か思い出したように口を開いた。
「あ、申し遅れました。私はロックスプリングス、ロックスとお呼び下さい」
「あぁ…僕は乾 衛司《イヌイ エイジ》。乾が姓で、衛司が名前です」
ロックスさんの言葉に合わせて自己紹介する。そう言えばまだだったな、うん。
「では衛司様、ですね。私は今から、あなたの目が覚めた事をこのギルドを管理している方を呼びに行って参りますね。あ、後…衛司様が着ていた服ですが…流石に濡れていたので勝手ながら私が用意した服を着させていただいてます」
「あ、いやそんな…すみません。ありがとうございます、ロックスさん」
「いえいえ。では、行って参りますね」
そう言ってロックスさんは部屋を出ていった。
ギルドを管理している人、か。今までのからチャットとかきち……じゃなくてジェイドさんかな。
とりあえずベッドから起き上がり、先程ロックスさんが言っていた今自分が着させてもらっている服を確認してみる。
「……何という服のチョイス…」
自分の着ている服を見ての第一声。まぁ、当たり前だよね。
気を失う前は学ランだったのに、今じゃこれは確か……『兵士のコート』装備だよ?
ロックスさん、何故予備服に『兵士のコート』?
まぁ、露出が多くある服よりは大分いいですけども……。
そんな事を考えながら自分の服を暫く見ていると、扉が開く音と共にロックスさんと二人、女の子が入ってきた。初対面であるが、今まで伊達に『テイルズシリーズ』のゲームは手をつけているのでパッと見ただけで分かった。
「目が覚めたようね。体調は大丈夫かしら?」
片方の水色の髪をした女の子が問い掛けてきたのでそう答える。
確か彼女は………
「私はアンジュ。アンジュ・セレーナよ。一応、このギルドを管理者でもあるわ。よろしく」
そうだ。確か『イノセンス』のアンジュだ。
あれ、でもアンジュが管理者って……あれなのかな。 チャットは空気なのかな。いや、まぁいるんだろうけど。
「?どうかしたかしら」
「あ、いえ。何でもないです。僕は乾 衛司。姓が乾で名前が衛司です」
考えこんでたらアンジュに少し不思議そうに聞かれたので慌てて自己紹介をする。
「そう。じゃあ衛司ね。…驚いたわよ。いきなり海に人が浮いていたんだから……。お礼ならたまたま見つけてくれた彼女にも言っておくことね」
アンジュはそう言うとアンジュの後ろに居るもう一人の桃色の髪の女の子を指差した。
…と、言うと…もしかして彼女が……。
「あ、はじめまして。私はカノンノ。カノンノ・グラスバレーだよ。よろしく」
そう、確か『今作』のカノンノだ。
「あ、うん。僕は乾 衛司。えっと…拾ってくれてありがとう」
「あはは、別にいいよ。でも、いきなり海に人が浮いてたんだからびっくりしたよ」
僕の言葉にカノンノは少し苦笑して答えた。
まぁ、当たり前だよね。いきなり海に人が浮いてるんだし。
「とりあえず、落ち着いたようだし…此処は船でもあるから、行きたい街があれば良かったらそこまで送るのだけど…」
「え……」
アンジュの唐突な言葉に少し戸惑ってしまう。
確かに船だから当たり前なお言葉ですけど……正直全然街について分からないし、それにいざ街に行っても元の世界に帰れる訳でもないし……でも、今それを言っても信じてもらえる事は……無いよね。
「……?どうかしたかしら…?」
「ぁ、いえ…その……気持ちは嬉しいんですけど……僕、自分の名前以外の事は上手く分からなくて…」
不思議そうに此方を見るアンジュにとりあえずそう答える。
一応、間違ってはない。
「……それってもしかして」
「……そうかもしれませんね、お嬢様」
すると、三人が何か深刻そうな表情をし、アンジュの後ろからカノンノとロックスさんの声が聞こえた。
……?どういう事だろ…。
そのままアンジュは此方を見ると、口を開いた。
「――あなた、もしかして記憶喪失なのかしら…?」
……あるぇー…?
アンジュの言葉と同時に後ろのカノンノとロックスさんが深刻そうな表情のまま此方を見ている。
記憶喪失、か…何か歴代ディセンダーと同じ扱い受けてるような……。
……でも、今はそう言うしかないのかな。
「…はい、多分……そうみたいです」
「そう。なら仕方ないわね。記憶の無い状態でどこかの街に出したら、それこそ危険ですもの」
僕が頷いて答えると、アンジュは溜め息を一つ漏らしてそう言う。
そして、少し考える仕草を見せると何か思い付いたように、アンジュは僕を見た。
「……そうね。なら、記憶が戻るまでこのギルドで働かない?働いてさえくれれば、ちゃんと衣食住ついた待遇をするわよ」
「…え……」
アンジュのその言葉に僕は当然だが、彼女の後ろのカノンノとロックスさんも驚いた表情をする。
「そ、そんな……でも…」
「そ、そうだよ!アンジュの言うとおり、一緒に働いてみない!?ギルドは基本、何でも屋だから、もしかしたら依頼場所で何か思い出すかもしれないし!」
「そうですね。お嬢様の言うとおりです。それに、その方が何も知らず街に出るよりは安全だと思いますよ」
畳み掛けるようにカノンノとロックスさんがそう言葉を出してくる。
ここまで言われると逆に断れないよなー…。
「……もしかしたら僕、スッゴく弱くて使えないかもしれないよ…?」
「あら、それを決めるのはアナタじゃなくて、私達よ。ここは実力とかじゃなくて、結果で物を言うんですもの」
再確認のような僕の言葉にクスクスと笑って答えるアンジュ。
適わないなぁ…わかってたけど。
「……お言葉にあまえて記憶が戻るまでの間、よろしくお願いします」
「えぇ、此方こそ、ね」
深々と礼する僕にクスクスと笑って答えるアンジュ。その後ろでどこか嬉しそうに笑うカノンノとロックスさん。
こうして、訳も分からずこの世界にきた僕の……『レディアントマイソロジー』が始まった。
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