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スイミングスクール

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第四章

 ここでだ、由紀恵は界人の耳元に自分の顔をやってそっとこう囁いた。
「このこと誰にも言わないでね」
「誰にもですか」
「お友達にもご両親にもね」
「誰にもですか」
「スイミングスクールの誰にもね」
 競泳水着姿で囁いてきた、下は水着のままだが上に白いシャツを着ている。
「そうしてね」
「絶対にですか」
「そう、絶対。約束出来るかしら」
「はい」
 界人はどうして誰にも言ったら駄目かはわからなかった。だが。
 由紀恵のその言葉に頷いてだった、誰にも言うことなく。
 日曜の午後一時きっちりに由紀恵の家の前まで行ってそうして家のチャイムを鳴らした、すると。
 白いミニにワンピースに髪の毛をおろした由紀恵が出迎えてくれた、由紀恵は自分から扉を開けるとだった。
 すぐに界人の手首を掴んできてだ、そっと引き寄せて言ってきた。
「来た理由はわかってるわ」
「そうですか」
「先生のこと好きなのよね」
 くすりと笑っての問いだった。
「そうよね」
「それは」
「だからわかってるから」
 界人に多くは言わせなかった。
「それで来たいのわかってたから」
「そうだったんですか」
「もう気付いていたから、ずっと私のこと見てたから」
 実はそうだったのだ、わかっていて知らない振りをしてそのうえで接していたのだ。そしてだった。
 由紀恵は界人を引き寄せて玄関の中に入れて扉を閉めて鍵をかけてから今度はこう彼に言った。
「もう二人きりよ。これから色々お話してから」
「お話してから?」
「まずは返事するわね。いいわよ」
 言いつつだ、界人の身体を自分の身体に両手で抱き寄せた。背は同じ位で視線と視線が丁度重なった。
「付き合いましょう、私達」
「いいんですか」
「そう、私のこと本当に好きよね」
「はい」
 界人は正直に答えた、何時の間にか背中を両手で抱かれ顔はすぐ傍だ。身体は彼女の脚と脚の間にあった。
「そうです」
「じゃあね、付き合いましょう。そして今から」
「色々とお話をしてそうしてね」
 彼の身体を優しく抱いたまま囁く。
「小学生だからまだ早いけれど教えてあげるわ」
「教えてあげる?」
「水泳以外のことも」
 こう言ってだ、由紀恵は界人を家の中に入れた。そうして彼に教えたのだった。
 界人は由紀恵と付き合う様になったがそれは誰にも内緒だった、だが彼に告白を進めた娘は別で。
 スイミングスクールでの練習中に彼にだ、笑って話した。
「今付き合ってるでしょ」
「内緒だよ」
「内緒ね」
「誰にも言わないから」 
 自分で答えた界人だったが気付いていなかった。
「このことは」
「そう来たのね」
「そう来たって」
「私はわかるから」
 こう界人に言うのだった。
「けしかけたし」
「だからなんだ」
「わかるわよ、それであんた最近明るいから」
 表情だけでなく雰囲気全体がだ。
「わかるのよ」
「そうだったんだ」
「それでね」
 界人に対してさらに言ってきた。
「どう、先生と一緒にいて」
「夢みたいだよ」
 界人は隠さずに答えた。 
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