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スイミングスクール

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第三章

「そうしたらね」
「大丈夫かな」 
 界人はそのアドバイスに不安げな顔で返した。
「そうしても」
「振られるかって思うのね」
「だって僕まだ小学生で」
「先生は大学生だからっていうのね」
「それでね」
「こういう時年齢気にするの?」
「駄目かな」
 彼女のその目、気が強くてしっかりしていそうなその目を見て問うた。
「それは」
「そういうことはもう気にしないことでしょ」
「そうなんだ」
「そうよ、気にしないでね」
 そのうえでというのだ。
「もう一気にアタックよ」
「そうするものなんだ」
「私はそうした考えよ」
「凄いね」
「お母さんが好きな人が出来たら」 
 母に言われた言葉だというのだ。
「その時はね」
「もう迷わないで」
「そう、アタックしろって言ってたから」
「だから君もそうしたし」
「あんたにも言うのよ」
 アドバイスとして、というのだ。
「そうしてるのよ」
「そうなんだ」
「じゃあね」
「うん、好きなら」
「もうアタックしなさい」
「それじゃあ」
 界人はそのアドバイスに頷いた、それで彼女から聞いた由紀恵の住所、駅前のマンションのそこの詳しいものを聞いてだった。事前に由紀恵にスイミングスクールで家まで行きたいと言って確認を取った。住所を聞いたことは一応隠した。
 すると由紀恵は彼にくすりと笑って言った。
「そのお話はちょっと待って」
「ちょっとですか」
「君が選手になれたら」
 その時にというのだ。
「来てね」
「選手にですか」
「うちのスイミングスクールだったら育成コースね」
 選手のそれのというのだ、このスイミングスクールは生徒を十六のレベルに分けていて選手育成コースは上から数えて六級からなのだ。
「そこに入ってからね」
「それからですか」
「そう、私のお家にね」
「今僕八級ですから」
「あと少しね」
「はい、頑張ってそうして」
「六級までね」
 由紀恵は優しい顔で界人に答えた、この言葉を受けてだった。
 界人は水泳にさらに励み一ヶ月で八級から七級になりそしてそこからまた一ヶ月でだった。
 六級になった、その六級になった時に由紀恵のところに来て言った。
「先生、六級になりました」
「ええ、おめでとう」
 由紀恵はその界人に笑顔で応えた。
「やったわね」
「はい、それでなんですが」
「今度の日曜ね」
 由紀恵は界人に笑顔で応えた、この時も笑顔だったが二ヶ月前に彼と話した時とはまた違う笑顔だった。
「うち家族誰もいないから」
「そうなんですか」
「だから来て。先生の住所は知ってるわよね」
「駅前のマンションですよね」
「あら、知ってるのね」
「はい、聞きました」
「そこの何処かは知ってるかしら」
「602号室ですね」
「それも知ってるのね。じゃあ一時にね」
「はい、絶対に行きます」
「用意しておくから」
 由紀恵は優しい笑顔で界人に応えた、界人はこうして由紀恵の家に行くことになった。しかし。 
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