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お弁当

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第四章

「塩分や糖分は控えめです」
「ではやはりです」
「健康的なお弁当ですか」
「それをいつも作ってくれているのです」
「そうでしたか」
「はい」
 仁科にはっきりとした声で答えた。
「まさに」
「そうでしたか」
「素晴らしい奥さんですね」 
 医師は仁科に笑顔も見せた。
「本当に」
「いや、まさか」
「その様にはですか」
「思いませんでした、家でもお酒は焼酎かワインで」
「健康的ですね」
「つまみも豆腐や枝豆やチーズで」
 そうしたものばかりだと医師に話した。
「本当にです」
「健康的ですね」
「そういえばそうですね」
「奥さんは本当にあなたのことを考えておられます」
「健康のことを」
「そうしてお弁当を作って」
 そしてというのだ。
「お酒やおつまみもです」
「そうしたものをですね」
「用意されています」
「そうでしたか」
「これからも奥さんを大事にして下さい」
 彼の健康を守ってくれている彼女をというのだ。
「是非」
「そうですね、本当にです」
「よく出来た奥さんですね」
「今そのことがよくわかりました」
 これまでは気付かなかったがというのだ。
 そして家に帰ってだった、仁科はすぐに広美に健康診断の結果を話した。健康そのものだとだ。
 そのうえでだ、彼は妻にこうも言った。
「これからもお弁当作ってくれるか」
「ええ、そうしていいのね」
「メニューはいつも任せるな」
 妻の思うままにというのだ。
「そうしてくれるか」
「いいわよ」
 広美は夫に笑顔で応えた。
「それじゃあね」
「これからもな」
「楽しみにしていてね」
「ああ、ずっとな」
 仁科は妻に笑顔で言った、そうして妻の作ってくれた弁当を毎日食べて健康のままでいた。そこに妻の自分への想いを感じ取りながら。


お弁当   完


                 2017・8・14 
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