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アナクロニズム

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第四章

「本当に」
「そうだな、何かニュースにもなってな」
「日本全体で思う様になってるわね」
「武人の心も必要だってな」
 工藤もこう返す。
「平和を守る為には」
「何か最初は何その啓示って思ったけれど」
「今は違うか」
「ええ、今の日本にそうしたことを思い出させる啓示だったのかもね」
「そうかもな、じゃあわしはこれからもな」
「軍服着てね」
「散歩に出るな」
 妻に笑顔で言ってこの日もだった。
 工藤はスーパーの仕事に出る前に軍服を着て街を歩いた、この日は話を聞いた何処ぞの市民団体が彼と彼と共に街を歩く軍服の者達に抗議をしてきた。
「軍国主義だ!」
「戦前に戻すな!」
「平和を守れ!」
「戦争反対!」
 口々に喚く、だが。
 工藤も他の者も彼等を一瞥もしなかった、それは軍服の者達を見る者達も同じだった。それでこう思うのだった。
「平和を守る為には戦う場合もあるしな」
「さもないとどうしようもない」
「誇りがなくてどうするんだ」
「毅然とした武人の心もなくて」
「それがどうして戦争にすぐなるんだ」
「違うだろう」
 一瞥しないがその声を聞いて思うのだった。
「大体皆毅然として歩いているだけだろ」
「騒がないでな」
「何で平和って言う方が騒ぐんだ」
「それじゃあ本末転倒だろ」
「平和を望むならこんなところで騒ぐな」
「軍国主義だのってな」
 軍服を見ただけでというのだ。
「軍靴の音でも聞こえるか?」
「北朝鮮に行ったら何時でも聞けるぜ」
「こうした連中こそ北朝鮮好きだしな」
「何が平和なんだよ」
 北朝鮮がどういった国かは誰でも知っている、それで言うのだった。
「平和の為には武も忘れるな」
「毅然としたものもな」
「武人の心も大事だよ」
「平和平和ばかり言って平和になるか」
「戦争反対って北朝鮮に言えよ」
 こう言って彼等を無視していた、そして軍服を着ている工藤達を見ていた。彼等は胸を張って歩いていた。そこには確かに武があった。立派なそれが。


アナクロニズム   完


                  2017・9・22 
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